第77話 飛空艇を待って出立する
「徒歩で行くでござるか?」
「乗り合い馬車でもいいけど、待ってればメンテナンスが終わった飛空艇が来るだろう」
「なるほど、あれはドワーフのものだから、変化は少ないかも知れないでござるな」
「飛空艇の方が楽だものな!」
ということで、商業都市ポータルの前でゆったりと飛空艇を待つ俺達なのだった。
どうやら、歴史改変みたいなものが起こったポータルは、西方国家に統治される従属都市になっているようだ。
都市に駐在する騎士連中を俺達が蹂躙したので、手出しはしてこない。
遠巻きに眺めて、たまに罵声を送ってくるだけだ。
罵声がする度に、そっちにミサイルをぶっ放して爆発させたら静かになった。
全滅したかもしれない。
「弱い者の遠吠えなど無視すればいい。金にもならん」
「そうかあ。そういう意味ではアベルは寛大だな」
そんな話をしていたら、向こうから飛空艇、フォンテイン・レジェンド号が飛んできた。
一日でメンテナンスを終えたようだ。
さすが、ドワーフの技術力。
「タリホー!」
なんと、飛空艇からアディ女王が顔を出したではないか。
そして、ちっちゃいアディみたいなのが三人顔を出した。
子どもか。
「早く乗り込むのですー! 世界がおかしくなっているですよ! あなた達と接触した者以外は、おかしくなった世界に飲み込まれているのです!」
「ほうほう、そんなことに」
俺はエリカを抱きかかえ「きゃっ、いきなり抱きかかえるんじゃない。びっくりするー」後ろにホムラをくっつけて「お邪魔するでござるよ」「ホムラは邪魔だから降りたらいいぞ!」「そ、そんな殺生なー!」飛空艇へとジャンプ。
一足先にジャンプしていたアベルとともに、飛空艇と合流したのだった。
「詳しく」
「わー、あおまどうし!」
「これあおまどうし?」
「へんなのー」
「うわー」
アディに状況説明を求めていたら、ドワーフの姫とか王子がウワーッと寄ってきて、俺に登ってきたりズボンの裾を引っ張ったりするのである。
質問をするどころではない。
「おいおいちびども、俺は忙しいのだ」
「なんかやってみせて!」
「あおまどうし!」
「ぴょーんて! ぴょーんて!」
「仕方ないなあ」
ちびドワーフ三人を体にくっつけて、高くジャンプしたりワールウインドでふわふわ浮いたりするのだ。
小さい者達はキャッキャと喜んだ。
その間に、この状況に業を煮やしたアベルがちゃんと仕事をしてくれたようだ。
「つまり、ドワーフ王国は平常運転だが、鉱山都市がおかしなことになっていたということか」
「そうなのです! まるで世界中が一つの国に支配されたようだったのですよ!」
「風車の魔王か。ヤツかも知れんな」
「風車の魔王!? やっぱり! どこにいるんだ! 今すぐやっつけに行こう! 出発出発!!」
「お、落ち着くでござるよエリカ殿ー!」
落ち着かないエリカなのだった。
ともかく。
飛空艇は一路、エリカの故郷へ。
農村が近づくに連れて、あちこちに武装した兵士がいるのが分かってくる。
エリカの表情が険しくなって来た。
そしてエリカの家があるはずのところ……には、砦があった。
むむむ、これは一体……?
砦には風車の紋章。
そこに兵士達が詰めており、飛空艇が近づいてきたら、わあわあと反応を始めた。
「あ、あれが魔王様のおっしゃっていたフォンテインの船か!」
「落とせ落とせ! バリスタ構えーっ!!」
地上から、塔から、巨大な機械仕掛けの弓、バリスタが顔を出した。
そしてバンバン撃ってくる。
だが、既に舳先にいる俺が、ワールウインドを構えているのだ。
「イリュージョンアタックのワールウインドだ! ほりゃあ!」
放った風が、バリスタの矢をぶっ飛ばす。
「あいつらー!! 私の実家をどうしたんだ! よし、飛空艇突撃ー!!」
「タリホー!!」
エリカというキャラにすっかり慣れたドワーフ操舵手、迷いなく塔へと突撃を敢行する。
「うわーっ!? 正気ですかー!?」
アディ女王が悲鳴をあげた。
バーサーカーは正気にてならず。
俺を押しのけて、エリカが舳先に立った。
そして振りかぶる、ベヒーモール……いや、バフベヒーモール!
それが、塔をぶん殴った。
粉々になる塔!
まあ、魔竜よりは全然脆いだろうしな。
「足元も畑じゃなく、風車の魔王の兵士達の詰め所になってるでござるなー」
「忍者の人! この炸裂弾を使ってくれー!!」
ドワーフ達が炸裂弾を差し出してくる。
「任せてくれでござるよー! ほいほいほいほいほい!」
地面に降り注ぐ、何十回とかヒットする炸裂弾!
地上は火の海になってしまったな。
こうして風車の魔王軍を蹂躙し、俺達は隣村へと向かうのだった。
探しているのは、俺の他にたったひとりだけタイムリープが使える男。
「カイナギオー! 俺だ! 無事かー!!」
「うおー!!」
地上から声が聞こえてきた。
隣村からわーっと群衆が溢れてきて、燃え上がる風車の魔王軍に向かって快哉を上げていたところである。
その中から、見覚えのある骸骨みたいな風貌の男が手を振った。
『師匠ーっ!! トニーもレーナもご家族もみんなうちで保護していますー!!』
「おーう!」
俺も手を振り返した。
どうにかみんな無事なようである。
こうして飛空艇は隣村に降りて行くのであった。
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