「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は、理解ある女騎士(自称)と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~
第22話 新しい武器屋デビュー!と思ったら依頼が来たのだが
第22話 新しい武器屋デビュー!と思ったら依頼が来たのだが
「い、い、行くぞ。武器屋だ!」
「ああ。中堅冒険者が行くという、武器屋……!! エリカ、舐められるなよ。ついこの間まで初心者だった俺たちだが、国を一つ救ったりしてるからな」
「ああ! 私たちはもう中堅だ!」
こうして、俺たちは中堅冒険者御用達の武器屋に入店する。
商業都市ポータルの武器屋は、武器と防具、そして冒険に必要な道具一般を扱っている。
一歩街の外に出るとモンスターが溢れている世の中だから、武器と防具のニーズは薄れないんだよな。
俺も村を旅立ってポータルに来る時、よく生きてたどり着けたもんだ。
店内は、冒険者のパーティが何組もいる。
金物屋と較べて、店内が広い。
そして品揃えが武器防具に特化している。
「すごいな……」
「うーむ、すごい」
二人で並んで、ポカーンと立ち尽くしていると、店員のお姉さんが近寄ってきた。
「ねえ、もしかしてうちのお店は初めて?」
「は、はあ」
「ちゅ、中堅だぞ!」
「そうねえ、やっぱり初めてだと緊張しちゃうわよね。お姉さんがお店のシステムを優しく教えてあげるわね。まず、ここは見せコーナーなの。確かに武器も防具も並んでいるけど、お値段を見てみて? 高級武具店に並んでるようなのが置いてあるでしょ?」
「うおわー! 俺たちの全財産でもガントレット一つ買えない!」
「た、高いー! 防具高いー!」
「だから、これはね、ディスプレイなの。こっちがお手頃コーナー。あなた達みたいな、中堅冒険者になりたての人はここで装備を揃えるといいわよ。試着は自由だからね? だけど汚したら買い取りだから。分からなかったらまた呼んでね。バーイ」
店の片隅にあるコーナーへ案内された俺たち。
なるほどなるほど、ここは中古の装備を簡単に補修したもののコーナーなのだ。
見栄えはそんなに良くないが、その分だけ安く買える。
「これ、私のスケイルアーマーよりも高級なやつだ……! お値段一緒」
「俺も胴鎧が安いのあるぞ。金属のツギハギがされてるけど、頑丈そうだ」
「武器、武器……。剣がない」
「剣は全部刃だから、折れちゃったりしやすいのかもなあ。棍棒とかどうだ?」
「刃物がいいんだ!」
「じゃあ、これは……?」
二人で、武器立てに無造作に突っ込まれている商品群を漁る。
それぞれに、値札がついているから値段も確認だ。
俺が引っこ抜いたのは、でかい出刃包丁みたいな武器だった。
「折れたグレイブの先を持てるように加工したものらしいぞ」
「へえ! これはかっこいいな、剣みたいだ!」
一番似てるのはナタだな。
ナタよりも大きく、ナタよりも重く、ところどころ刃こぼれしているが、斬るというよりは叩き割る用途で使うなら問題ないだろう。
エリカのファイトスタイルは、叩き割るタイプだからな。
俺は武器はいらない。
石を沢山入れておける袋とか、水袋を幾つもストックできるリュックを買おう。
防具は胴鎧。
エリカは、この剣(ナタ)とスケイルアーマーの部品にしたようだ。
部品というのは、肩アーマーとガントレットとすね当て。
「これでマントがつけられるんだ!」
「おお、騎士っぽい!」
二人でわあわあ盛り上がっていると、店員のお姉さんが近寄ってきた。
「あらまあ、お二人共お似合いだわ! こうやって部品ずつ買って組み合わせて楽しむのも、冒険者の醍醐味よね! じゃあ、お値段はこうなるけど……」
お姉さんは腰の後ろからソロバンを取り出し、パチパチと弾いた。
「あ、その金額ならいける。現実路線で行った甲斐があったな」
「公国一つを救ってこれかあ! 装備をきちんと揃えるの、本当に値段が天井知らずだなあ……!」
お姉さんは、公国一つを救ったというエリカのトークに、一瞬怪訝そうな顔をした。
だが、すぐに営業スマイルになる。
「高級店行ったら、剣一本で大きいお屋敷が買えるわよ? 高級店の商品って全部魔法の装備なんだから。さらにフルオーダーメードもしてるから、いつか報酬をたくさんもらえるようになったら、何かあつらえに行ってみるといいわねえ」
「見知らぬ世界だ……」
「わ、私もオーダーメイドの剣欲しい!」
今はレディメイドの剣でも高くて買うのに躊躇するもんな!
だが、俺たちの見た目もかなり見違えてきた。
非常に冒険者っぽい。
「二人とも戦士のパーティなの? 魔法使いは数が少ないもんね。装備をしっかりして、怪我をしないようにしないとだめよ?」
「魔法使いならいるぞ! ドルマが青魔道士なんだ!」
「青……?」
お姉さんは知らなかったようだ。
だが、思わぬところで知っている人がいた。
「青魔道士だって!? それは本当なの!?」
それは、近くを歩いて商品を物色していたらしい女性だった。
白銀の髪に、青みがかった銀の瞳をしていて、肌は真っ白で耳が尖っている。
「エルフだ!」
「エルフだ!」
俺とエリカでどよめく。
エルフは生まれながらにして、優れた精霊魔法の使い手なのだ。
なので、冒険者になる場合は最低でも中堅からスタートする。
俺たち、この間まで初級だった冒険者には縁遠い存在……。
「青魔道士と言えば、モンスターの技を覚えて使う伝説の職業。まさか本当に存在していたとは……。ねえ二人共、今は仕事を受けてないの?」
「ああ、フリーだぞ!」
「ちょうど良かったわ! じゃあ、私の話を聞いてくれない? 実はね、エルフの里一つが眠りの精霊にやられて止まってしまったのだけれど……」
思わぬところから、大きな仕事の話になっていくのだった。
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