第13話 女騎士(自称)は姫君の旅を護衛したい
俺たちが暮らす国が、商業都市ポータル。
この国から山を一つ越えた先にあるのが、リエンタール公国だ。
ロッテはこの国の第二公女。
「リエンタール公国は、あの地域の楔となっているのじゃ! わらわは楔の資格を持つ。じゃから、外国で色々勉強をしていたのじゃ。じゃが、リエンタール公国で反乱が起こった! 国を手にするために姉上が、外国の勢力を引き入れたのじゃ! わらわは国に戻らねばならんのじゃ!」
「それは大変だ! 護衛しなくちゃ!!」
「エリカ、話があまりにも早いぞ……!」
凄い勢いで先走るエリカを止める俺。
俺の行動に指針を与えてくれるエリカだが、所々でストッパーをしておかないと、暴走していくのだ。
「だが、ドルマ。ロッテ公女は護衛がいなくなってしまった。ここは私たちが行くべきだろう」
「おう、それには同意だ。だが、問題は先立つものでな」
ロッテ公女がきょとんとする。
「……は? お、お、お前たち、わらわを護衛するというのか? いきなり出会ったばかりのわらわの話を信用して、それで護衛するじゃと? 嘘だったらどうするのじゃ。このような話、すぐに信じてしまうようでは騙されてしまうことも多いのではないか」
「うーん、なんていうか、本当のにおいがする!」
エリカが断言した。
彼女は何も考えずに猪突猛進するが、その判断が間違いだったことはない。
「そんな……勘で動くようなものではないのか! そんなので、わらわの味方につくのか? わらわとて、会ったばかりの者たちを信用など……」
そこで、俺が竜騎士と戦っていたのを思い出したらしい。
「良いか? わらわを護衛するということは、あの男のようなバケモノを次々に相手することになるということじゃ。命が幾つあっても足りんぞ……! 外国から来た、怪しげな技を使う、人とも魔ともつかぬ連中じゃぞ!」
「皇女殿下、安心してください。私はこれからどんどん強くなるし、ドルマはモンスターの技を覚えてどんどん強くなります! つまり、私たちは強いので!」
「エリカの言葉の意味はよく分からんが、とにかくすごい自信だということだけは伝わったな」
ポカンとしたロッテ公女の顔を見て判断する。
「で、公女。報酬の方を……」
「お、おお、そうじゃ! 馬車の中に金はある! わらわの旅費と、それに貯金じゃ。これをくれてやる!」
「ありがたい! 鍋がダメになってどうしようかと考えてたんだ……」
俺とエリカは軍資金を受け取った。
これで、さっさと装備を固めてしまうことにする。
エリカは革鎧に金属片を編み込んだスケイルアーマー。
俺は要所要所だけを金属で補強したレザーアーマーだ。
「凄い……本物の鎧だ!」
「ああ、鎧を着てしまった。これは凄いことだな!」
エリカとともに大はしゃぎする俺。
この装備なら、ゴブリン砦だってやれそうな気がする。
それはエリカも同じ考えだったようだ。
「公女殿下、ちょっとだけいいですか!」
「なんじゃ?」
「ちょっとゴブリン砦に寄って行こうかなって。そっちの仕事が先約だったので」
「な、なんじゃとーっ!?」
目を見開くロッテ公女なのだった。
気持ちは分かる。
「ロッテ公女、相手はきっと、俺たちがすぐに公国に向かってくると思ってるはずだ。だけど、そこであえて寄り道してから行く……! 相手のタイミングをずらすんだ。これは高度な作戦なんだ」
「そ、そうなのか!?」
ロッテ公女が混乱しているな。
俺が今回、ゴブリン砦襲撃に前向きなのは、勝算があるからだ。
まず、ジャンプ。
これで一気に砦まで行って奇襲できる。
それから、エリカに戦闘経験を積んでもらう。
ゴブリンの耳を集めれば、旅費やら何やら、必要なお金の足しにすることだってできるだろう。
いいことばかりだ。
「時に公女、何かできたりしますかね」
「わらわか? わらわは白魔道士としての才能を持っている。じゃから、怪我や毒などを治すことができるのじゃ。……ふむ、追手の目をくらませる意味ではありじゃな。わらわをしっかり護衛できるか? やれるなら、付き合ってやらんでもないのじゃ。なにせ、このまま一人だと、わらわは絶対に死ぬからの……!」
「よーし、ではみんなが得することがわかったな! それでは行こう、ゴブリン砦へ!」
そう言う事になった。
エリカの言う大義的なものも大事だが、大義をこなすためには実力をつけなきゃだし、それに冒険は楽しくやっていかねばならない。
こうして俺たちは、その足でゴブリン砦へと向かったのである。
公国に行くのとは全く違う道。
「……全然襲撃がなかったのじゃ!!」
「普通に考えて絶対行く必要がないルートだもんなあ。やるべきことがあるのに、無用な危険に突っ込むとかありえない」
「それが私たちならありえるかもなのだ! ドルマの発想力は凄いな!」
「エリカの決断力あってこそだよ。はっはっは」
二人でハイタッチしていたら、それをじーっとロッテが見ている。
「……二人はあれか? 恋人同士なのじゃ?」
「なん……だと……?」
「ち、違うぞ!」
硬直する俺と、むきになって否定するエリカなのだった。
ロッテ公女が、ははーんという顔になって笑った。
まあ、目下絶賛その命を狙われている公女に笑ってもらえたのでよしとしようか。
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