第12話 ラーニング! 青魔道士vs竜騎士
竜騎士が低く身構える。
こっちと距離はかなりあると思うが、どうするつもりだろう。
飛び道具を持っているようにも見えない。
あいつが手にしているのは槍だけだ。
ということは。
「上から来るぞ、ドルマ! 竜騎士はジャンプして攻撃してくるんだ!」
「目の前にいるのに、上からとは一体。鍋装備~!」
念のため、被っている鍋と腹にくくりつけている鍋を二重にして頭上に構えた。
すると、竜騎士の姿が消えた。
飛んだんだな!
「エリカ、後ろに! 後ろに!」
「ああ!!」
エリカがスライディングして、俺の股の間に滑り込んだ。
判断が速い!
固定観念なしで動く辺りは流石だなー。
次の瞬間、俺の構えた鍋がまとめてぶち抜かれた!
槍が俺の服を削りながら、地面ギリギリまで到達する。
「やべえ! あとちょっとで当たってたじゃないか。それに渦潮カッターを防いだ鍋を、軽々貫通か。竜騎士怖いなー」
『ラーニング!』
「は?」
脳裏に響いた三回目のメッセージ。
だが、確認する余裕がない。
竜騎士は俺の頭上にいる。
かなり重いので、俺はふらついた。
俺の転倒前に、竜騎士は鍋を蹴って飛翔したようだ。
「ええい、追撃だ! 渦潮カッター!」
水袋から、回転する渦をぶっ放す。
いいところまで竜騎士を追いかけて行くが……。
うーん、槍で払われてしまった。
だけど、ジャンプからの追撃は来ないっぽいな。
竜騎士が離れた屋根の上に着地した。
あの跳躍力は異常でしょ。
「ドルマ、竜騎士の相手を頼めるか! 私はあの姫君を助ける!」
「ああ、そうだな。エリカはそういう性格だものな。よし、助けてやってくれ! 竜騎士は俺が相手をする。まあなんとかなるんじゃないか!」
ここで素早く自分の能力を確認だ。
名前:ドルマ・アオーマーホウ
職業:青魔道士
所有能力:
・バッドステータスブレス
・渦潮カッター act2
・ゴブリンパンチ
・ジャンプ NEW!
あっ、ジャンプ!!
これ、竜騎士の能力ではないか。
まさかモンスターじゃない連中の能力も、俺は自分のものにできてしまったりするのか。
竜騎士はフルフェイスな兜で、目線が分からない。
だが、あいつがエリカを注視してるんだろうなーということは分かる。
ほら、ジャンプした。
「竜騎士よ。ジャンプはお前だけの戦場じゃないぞ! おりゃあ、ジャンプ!」
俺も飛び上がった。
「!?」
明らかに、竜騎士が動揺している。
俺はさっき鍛冶屋にもらった槍を構えて……構えて……?
これはどうやって使うのかね?
刺せばいいのかな?
穂先をにゅっと突き出してみた。
これを竜騎士が弾く。
それどころか、こっちに突き出してきた。
「やべえ」
俺は慌てて身をよじり、槍をギリギリ回避した。
「貴様も竜騎士だったのか? バカな。この土地に竜騎士がいるなどいう話は聞いていない。それに槍の使い方……素人か。猿真似は通用せんぞ!」
竜騎士は俺を蹴って、離れた。
「ウグワー! いてー!」
俺も吹っ飛ぶ。
地面に叩きつけられそうなところを、「渦潮カッター!」と地面を弾けさせることで、勢いを殺した。
よしよし、軟着陸したぞ。
竜騎士の注意は、明らかにエリカからこっちになった。
エリカがお姫様を小脇に抱え、近くの建物に駆け込んでいる。
「偽の竜騎士よ、ここで仕留める……!!」
おっと、竜騎士がジャンプした。
俺もジャンプするぞ。
今度の獲物は、使い慣れない槍ではない。
やはり使い慣れていない手斧でもない。
木の棒だ。
どこで殴っても、それなりに打撃を叩き込めるからな!
「そんな貧弱な武器で、この龍槍とやり合おうと……」
「ジャンプは滞空時間が長いからよく喋るなあ。だけど、俺の攻撃は色々あるんだぞ! ジャンプからの~ゴブリンパンチ!!」
俺の振り回した木の棒が、一瞬で分身した。
竜騎士の槍と、分裂した木の棒がぶつかり合う。
「ぬおおおおーっ!? 軌道がそらされる!! なんだ、なんだそれはーっ!!」
ついに、槍は数の暴力によって弾かれた。
ついでに俺の木の棒も、遥かに格上の武器とやりあった代償で粉々に砕け散る。
さらば、木の棒。
「かーらーのー! 渦潮カッター! 木片入り!!」
水袋の残りを渦巻かせてぶっ放す!
それは粉々になった木の棒を巻き込んで、猛烈な勢いで竜騎士へと炸裂した。
「ウグワーッ!!」
ふっ飛ばされる竜騎士。
ざまあみろ、さっきのお返しだ!
「それからな、竜騎士! 俺はお前と同じ竜騎士じゃない! 俺はな、青魔道士だ!」
ああ、竜騎士が近くの屋根を砕きながら落下した。
あれは聞こえてないかな。
そして俺も、そのへんの家の屋根を突き破って落っこちたのである。
竜騎士をざまぁって言ってたら、渦潮カッター使うタイミングを逸してしまったな。
「あ、すみませんすみません。すぐ出ますから」
屋根を破ってしまった家のひとたちに謝りつつ、外に飛び出す俺。
後で修理に来ないといけない。
カネを使わずに修理するにはどうしたものかな……なんて考えながら外に出てきたら、エリカがお姫様を従えて、堂々と立っているではないか。
「凄いぞドルマ! また凄いことになっているじゃないか! ああ、それと姫君は無事だ!」
「お、おお……。わらわを助けたのは褒めてやるのじゃ! なんか、そこの男も空を飛んだ気がしたのじゃが……」
「それについてはおいおい話をしよう。いま大事なのは、うちの騎士様があんたを守る気になったという話だ」
このお姫様から、詳しい状況を聞かなくては。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます