別れ

 中村かおりは電話で息子の訃報を聞くと、一刻も早く伝えるために、夫がいる車へ駆けつけた。

 後部座席の扉を引っ張るも、びくともしない。夫だけは、夫だけは助けなければ。そんな思いで何度も、何度も扉を引っ張った。助手席にいる女性は困ったように笑う。……これではダメだ。どうにかして伝えなければ。


 後ろ!


 香はこちらを見ている夫に、夫から見て後ろにある車の正面を見るよう訴えた。

 夫が目を見開いたその時、車が大きく傾き崖から落ちていった。……ああ、家族を全て失ってしまった。これから、どうやって生きていけばいいの……

 香は地面に膝をつくと、涙を流して傍に立つ女性を見上げた。何かを持ってる、その女性を……














































 カラン

 ピヨピヨ、ピヨピヨ……






























            桜の幽霊 —完—

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少しこわいはなし こと。 @sirokikoto

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