風紀委員長とデート

 水瀬ということは、あの風紀委員長の水瀬の兄か弟ということだよな。それとも偶然か。いや、そんなわけがない。


「お前、水瀬 善とか言ったな」

「……なんだい、君。悪いけど、用があるのは凩さんなんだよ。部外者はさっさと消え去ってくれ」


「部外者じゃない。俺と木葉は見ての通り、付き合っているんだ」

「ふぅん? そうは見えないがな」


「マンションから一緒に出て来たろ」


「つ、付き合っていようが、付き合っていまいが……お、お、俺にとってどうでもいい問題だ。結婚さえしてなければ奪う手段はいくらでもある――ということだ。だが、結婚していても関係ないけどな」


 余裕の笑みを浮かべる善だが、言葉が震えていた。明らかに動揺しているじゃないか! 言動もむちゃくちゃだし、そんなワケないだろうと俺はツッコミたい。


「ていうか、あなたこそ邪魔しないでよ。あたしと風吹くん、ラブラブなんだから」

「ラ、ラブラブぅ!?」

「そうよ。こんな距離感でいつも登校しているんだから」


 と、木葉は腕を組んできた。

 なんて大胆っ。


 そんな光景に善は驚愕していた。


「ば、馬鹿な!! そんなハレンチな!!」


 いやいや、この程度でハレンチって……。

 意外とたいしたことなさそうだな。

 俺は木葉を引っ張って善の横を素通りしていく。


 だが、それでも善は諦めなかった。



「待て!! 一応、貴様の存在を認めてやる。だが、凩さんは諦めない!」

「しつこいな」

「こうなったら決闘だ」


「へ」


「この俺と決闘しろ、微風 風吹!!」


 は……はぁ!?

 てか、何でコイツ、俺の名前をフルネームで知っているんだ。どこから情報が漏れた!?



「決闘って……それじゃ、決闘罪になっちまうだろうが」

「ぐぬぬ……」

「なんか知らんけど放っておいてくれ」



 俺は今度こそ木葉を連れて学校を目指した。



 * * *



 学校に到着して、席に着くと木葉が話しかけてきた。


「さっきの何だったんだろうね」

「いや、そりゃ木葉のお義父さんが言っていた件だろ。お見合いの」

「あー、それかぁ。興味なさすぎて忘れてた」


 忘れてたのかよ。

 それから授業が始まり――淡々と昼まで進んでいった。


 久しぶりの授業は疲れるな。

 昼休憩になってトイレへ向かう途中、水瀬とばったり会った。



「どうも、風吹くん」

「ああ、水瀬……って、そうだ。今朝、お前の兄か弟らしき男と会ったんだけど、親類か?」


「あ~、善ね。弟なんです」


 やっぱりか。

 少し雰囲気が似ているとは思ったけどね。


「そうか。なんか現れたけど……何だったんだ」

「さあ、私はなにも聞いていないから。でも、迷惑なら止めますよ」

「悪いけど、そうしてくれるとありがたいよ」


「でも条件があります」


「……言ってみろ」

「今から私とデートしてください。約束ですよね」


「んなっ、今から!?」


「そうすれば、もう弟は近づけさせません」


 今からって、学校をサボるってことか。しかし、木葉を心配させてしまうしなぁ。けど、あの善を排除できるのなら……ありか。


「分かった。その条件を飲む」

「やった! 風吹くん、やっぱり優しいですよね」


「約束は破らない男なんでね」


 ということで、俺はそのまま水瀬と学校をサボってデートすることにした。木葉には、ラインメッセージを飛ばしておいた。



 風吹:すまん、木葉……急な用で早退する

 木葉:はぁ!? なんでいきなり!?

 風吹:どうしても外せない用事だ

 木葉:なんの?

 風吹:すまん、機密事項なんだ

 木葉:なにそれ。むぅ……

 風吹:この埋め合わせは必ずする

 木葉:分かった。絶対だからね



 ……よし、なんとか木葉の許可は得た。

 さてさて、これからどうしたものか。

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