ショッピングモールでの決闘
結局、映画を見て終わった。
悲惨な未来を変えるというSF映画だった。まさかのタイムリープもの。
ウネウネの白いバケモノが現れた時は、なんだこりゃと思ったけど意外と感動的で面白かった。
「面白かったね、映画」
「そうだな、こうしてたまにはゆっくりするのも良いな」
「映画館に行くよりもイチャイチャできていいね」
「そ、そうだな」
さすがにそろそろ時間となった。
部屋を退室し、受付で料金を支払う。
それからお店を出た。
「は~、楽しかった」
木葉は満足気に体を伸ばしていた――のだが。
「ちょっと待てい!!」
聞き覚えのある声が俺と木葉を止めた。……ま、まさかこの声は!!
「パ、パパ!!」
「二時間以上も待っていたぞ!!!」
って、ネカフェの前で待っていたのかよ。やべぇぞ、この凩父。まるで探偵の張り込みだな。
「どうしてココにいるの!!」
「どうして? 木葉、それは決まっておろう。そこの男を潰すためだ」
「ふ、風吹くんを!?」
例の対決か。
やっぱり、凩父とは一度決着をつけないといけないらしい。俺もそのつもりだったし、やるしかない。
「分かりました、お
「誰がお義父さんじゃ!! いいか、小僧……フェンシングでの決闘では貴様を殺してしまう恐れがあるからやめておいてやろう。それに、万が一にも殺してしまえば、娘が悲しむからな」
「ええ、では約束通りクレーンゲームで対決しましょう」
「負けたら娘には二度と近づくな!」
「いいですよ。ここから歩いてニ十分のところにショッピングモールがあります。そこのゲーセンでいいしょう」
「車なら出す、こっちへ来い。木葉もだ」
俺と木葉は強制連行され、凩父の車へ向かった。
駐車場には超高級車のロールスロイス・ファントムがあった。
ま、まさか……あの厳つい車なのか。
確か、5000万円以上とかする車だぞ。
嘘だろ。
「さあ、乗りたまえ風吹くん」
「マジっすか。これに乗っていいんです?」
「あたりまえだ。今のところは娘の
「分かりました。よろしくお願いします」
人生で初めてファントムに乗車。
……なんだこれ、座り心地すげぇ~。
* * *
ショッピングモールに向かう道中で、俺は木葉に聞いた。
「なあ、木葉の家……金持ちすぎじゃね。ただのギャルじゃなかったのか」
「あー、えーっと……だって、ほらあのマンションで分かるでしょ?」
確かに。
あの馬鹿広いマンションに一人暮らしはやりすぎだ。芸能人が住むレベルの規模だぞ。一人で住むは広すぎるし、家賃だけで十万以上だろうな。
それを誰が払っているかと言えば、この凩父だろう。
つまり、凩父は何かしらの経営者ってところか。
「分かった。詳しい事はあとで教えてくれ」
「……うん、ごめんね」
以降、会話はなかった。
車はショッピングモールへ到着し、いよいよ勝負の時だ。
「さて、案内してもらおうか」
「こっちです」
ゲームセンターへ向かう。
十分ほど歩いて――到着。
この前は、木葉と勝負した場所だが……今回はまさか凩父と戦うことになろうとはな。
「ルールを説明します」
「頼む」
「制限時間は十五分としましょう。多く取れた方の勝ち。ジャッジは木葉でいいですか」
「構わん。だが、私はクレーンゲームをはじめてでね」
「では、俺が――」
「いや、娘から聞くから大丈夫だ。五分でいい、練習させてくれ」
「……分かりました」
俺は距離を取り、二人を眺めた。
木葉は凩父に丁寧にクレーンゲームの操作方法を教えていた。
練習にも関わらず、凩父は景品をゲットしていた。
……マジかよ。
もしかして、意外な才能があるのか!?
「なるほど、単純な操作だが奥が深い。アームの位置を見極め、景品を掴んで移動させたりなど……技術も必要なのだな」
「うん、そうだよ、パパ。えっと……出来れば負けて?」
「そうはいかん。あの男を打ち負かし、木葉には実家に帰ってもらう。そして、他の男とお見合いしてもらうぞ」
「は? お見合い?」
「相手は外交官の息子だぞ! しかもイケメンだ」
「はぁ? 勝手に決めないでよ!」
「お前の幸せを願えばこそだ。分かってくれ」
「……そう、分かった。風吹くん、パパなんてボコボコにしちゃって!!」
そう叫ぶ木葉は、俺に勝って欲しいと言った。あたりまえだ。俺は勝つ。絶対に勝つ。相手が木葉の父親であろうともな!
それに、お見合いだって?
ふざけるな!
俺と木葉の関係をそこまでして潰したいのか。しかも、木葉はお見合いなんて望んでいないじゃないか!!
許さん。
絶対に許さん。
勝ってギャフンと言わせてやる。
「お義父さん、よろしくお願いします」
「……握手だと? いいだろう、どんな勝負でも、まずは挨拶が基本だ」
凩父は、がっちり握手をしてきた。
ギリギリと軋むような音がする。
……ぐぁ、手がもげるぅぅ。
こ、この人本気で握りやがって。なんて握力だ。
こうなりゃ全力だ。
「後悔させてやります」
「言ったな。貴様には絶望を与えてやろう」
――勝負が始まった!!
俺は……負けるわけにはいかない。
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