クレーンゲーム対決
木葉の選んだ
なんだ、あの白色でモコモコのキャラ。
「木葉、これ好きなのか?」
「うん、てぃかわくんだよ!? 可愛いじゃん」
そう百円玉を取り出す木葉。
まずはお手並み拝見といこう。
百円を投入した瞬間、木葉の
クレーンゲームの中は、てぃかわくんが寝っ転がっており、それを掴んで落とすだけ――というシンプルなタイプ。
意外と簡単に取れるのかな。
「がんばれ、木葉」
「見てて、一発で取っちゃうから!」
手慣れているようで木葉は【←】のボタンを押し、アームを丁度良い位置に定めた。
次に【↑】を押して、ぬいぐるみ本体の真上へアームを移動させた。上手いな。これは取れたかもしれないな。
自動でアームは降りていく。
三本爪が開き、ぬいぐるみをキャッチ。……掴んだ!
「いいぞ、木葉」
「一発あるかもよ!」
動向を注視していると、アームはぬいぐるみを持ち上げた。嘘だろ、こんなアッサリと!?
どんどん景品取り出し口を目指していくアーム。やがて真上へ移動し、ぬいぐるみを落とした。
なんと“一発ゲット”となった。
「おいおい、マジかよ。木葉、すげぇじゃん」
「えへへ~! ドヤッ!」
両手で持てるほどのサイズ感のてぃかわくん。ふわふわのもこもこだ。
いいなぁ、俺も欲しい。
……いや、羨ましがっている場合ではないな。
まさかの一発。
このままでは俺が負けてしまう。
「よし、次は俺の番だな」
ちなみに制限時間は
俺は無難にお菓子を狙うことにした。
「このカルパスならいけるだろ」
「簡単そうなのを選んだね~」
「負けるわけにはいかないからな。悪いが、なんであろうと取らせてもらう」
「分かった。見守っているよ」
百円を投入し、アームを進めていく。
カルパスはティッシュ箱サイズ。持ち上げて落下させればゲットとなる。かなり運要素の強いゲーム。運が良ければ一発ゲットもありえる初心者向け。
これで……!
アームはカルパスの箱のど真ん中へ降りていく。箱を二個も持ち上げ――落とした。
「きたか!?」
「お? 風吹くんも一発?」
だが、完全落下とならず……景品取り出し口に落ちてはこなかった。……ですよねぇ。
分かっていたが、このカルパスの箱はなかなか穴に落ちない。落下穴に複数設置されている“棒”で妨害されるからだ。絶妙な隙間へカルパスの箱を落とさないと景品取り出し口へ落ちてくれない仕組みだった。
やっぱり運ゲーか。
「くそぉ、だめだった」
「惜しかったね」
「ああ、けど続行する」
「うん。じゃあ、見守っているからね」
最初の五分は交互に戦い、残りの十分で各自で取りに行く――ということになった。
そんな五分もあっと言う間に過ぎた。
俺は結局なにひとつゲットできず。
「やっべぇ……」
「ちょ、風吹くん何もゲットできてないじゃん!?」
「ああ、今日は調子が振るわないな。でもまだ後十分ある」
「そうだね、残りの時間で勝負だよ。ここからは各々で行動だね」
ここからが本当の勝負だ。
木葉と別れ(ちょっと心配)て俺は別のクレーンゲームを探す。他の通路へ行くと、簡単なヤツもあった。
てのひらサイズの小さいアクセサリーが山積みされていた。これは『おやき』のキーホルダー的な。
正直、いらない景品だけど木葉に勝つためだ。大量獲得して勝つ。
さっそく百円を投入。
すると、俺は気づいた。
このクレーンゲーム、三十秒制限でアームを自由に動かせるタイプだと。
これは、つまり“ディスプレイ落とし”が可能ということ。
――もらった!!
俺は、秘儀を使った。
アームを自由自在に操り『おやき』をかき乱す。
円を描くようにアームを動かすと、おやきが雪崩となった。
ドバドバと落ちてくるキーホルダーの軍勢。
「よし、大量獲得ッ」
おそらく十、二十は取れた。
これはゲームセンター側の設定ミスでもあるな。
もちろん、景品取り出し口に落ちた以上はゲットとなる。それがルールなのだ。
――そして、十分後。
時間となり、試合終了。
木葉と合流。さっそくどちらが多く獲得したか確認だ。
「おや、風吹くん全然獲れてない?」
「そう見えるか。そうだろうな……だけど、まだ分からないぞ。木葉の方は大きいものが多そうだが」
「欲しいぬいぐるみばかり選んでいたからね」
なんか気づけば木葉は大量の袋を持っていた。最初にゲットした『てぃかわくん』から更に増えてやがる。
確認すると、サメやクジラとかアニメ系のぬいぐるみが多かった。多すぎだろう。
合計七個獲得となった。
「木葉、クレーンゲームの達人だったんだな」
「えへへ~。あたしも動画とかで学習しているからね」
さて、そうなると俺の番。けれど、木葉は勝利を確信していた。残念だが、その勝利は俺のものだ。
背中に隠していた袋を取り出し、木葉に見せた。
「これが俺の獲得した『おやき』だあああ!!」
「え!? おやきぃ!?」
その数、なんと二十個。
あれから、このキーホルダーしか獲得できなかったけど個数は上回った。小さいけど、それでも勝ちは勝ち。
「ニ十個だ」
「え」
「おやきがニ十個ある」
「うそー!!!」
自信満々だった木葉は、両手両膝を床につけた。よほどショックだったらしい。そりゃそうだな、あの大型ぬいぐるみを七個もゲットしたのだから、勝利も同然だった。だが、俺は小物を狙い、見事に逆転勝利。
「木葉、約束通り飯を奢って貰うぞ」
「うぅ……そんなぁ。勝てると思ったのにな」
「いやだけど、こんなに大きな景品ばかりを取った木葉も十分凄いって。どんなテクニックだよ」
「褒めてくれてありがと。でも、悔しいぃぃ……」
「ほら、おやきあげるからさ、元気だせよ」
「えー、いらなーい」
「ですよねえ。まあ、こんな荷物になっちゃったし、いったん家へ戻るか」
「そうだね、そうしよう」
クレーンゲーム対決は終了。
家へ帰ることになった。
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