たこ焼きを物々交換

 金たこでネギたっぷりの“ねぎだこ”を購入。木葉は“チーズ明太子”にした。

 フードコートへ入り、木葉に席取りを任せて俺は水を淹れてきた。先へ向かい、対面するように座る。


「へえ、チーズ明太子美味そうだな」

「そうでしょ~。よかったら一個交換しようかぁ?」

「ほう、木葉の方から物々交換を申し出るとはな。――いいだろう、一個交換だ」


「交渉成立ね!」


 ねぎだことチーズ明太子のたこ焼きを一個交換。

 これで両方の味を楽しめるってわけだ。


 まずは“ねぎだこ”を味わう。


 口へ放り込むと、たこ焼きの表面のサクっとした食感とねぎのシャキっとした食感が融合。美味すぎて涙が出そうになった。


「やっぱり金たこは美味いな」

「うん、こっちのチーズ明太子も絶品よ」

「そうだ、チーズ明太子も食べ見ようっと」


 今度は、木葉から交換してもらったチーズ明太子を頬張る。


 ……うまっ。


 明太子の味がしっかりしているし、なんだこれもうナンチャラの宝石箱やー! と叫びたくなるヤツじゃないか。


 そうしてたこ焼きを味わい――完食。


 だが、木葉はまだ残していた。


「美味しいけど、お腹いっぱいになっちゃった。風吹くん、よかったらさ、あたしのあげるよ」


「え、いいのか」

「うん。はい、あ~ん♪」

「マジかよ。人が見ているぞ」

「関係ないじゃん。――って、やっば!」



 突然慌てる木葉は、姿勢を低くして顔を隠していた。いったい、何事だ?



「ん? どうした?」」

「いやぁ……びっくりしたんだけど、父がいたのよ」

「え? 木葉のお父さん? どこに?」


「もう行っちゃった。……はぁ、危なかった。こんなところを見られたら、殺されてたわ」

「おいおい、殺されるって……そんな物騒な」

「マジよ。父ってば、あたしに男がいたと知ったらブチギレてレイピアを持ち出してくるかもしれない」


「レ、レイピア!? あのフェンシングとかで使う武器か」

「そそ。父はフェンシングの達人なの。世界一かもね」



 なんだか珍しい達人だな。剣道とか柔道、空手とかならよく聞くけど、フェンシングの達人はあんまり――というか、ほとんど聞かない。


 そもそも日本にそれほど浸透していないような。



 とにかく、父親に見つかるのはマズイということでたこ焼きを食べ終えて早々立ち去った。そのまま二階にあるゲームセンターを目指した。



「ここか。クレーンゲームが結構あるな」

「うん、勝負しよっか! どっちが多く取れるか」

「いいだろう。俺のクレーンゲーム技術を見せてやろう」


「え、風吹くんってクレーンゲームに自信あるんだ?」


「動画サイトでよく見ているからな。見様見真似にはなるが!」

「なんだー。けど、知識はあるわけだ」

「ぼっこぼっこにしてやんよ」

「いいねぇ、そうでなくちゃ面白くない。負けた方はご飯を奢るっていうのはどう!?」

「乗った。ギャフンと言わせてやる」

「決まりね。じゃあ、どっちから行く?」


「公平にじゃんけんで決めよう」

「おーけー」



 最初はグー。

 じゃんけん――!!


 ポン……!!



 風吹:パー

 木葉:グー



「お、勝った」

「げえ、負けたぁ……先攻後攻決めていいよ、風吹くん」

「じゃあ、後攻で。まずは、木葉の実力を見てみたい」


「分かった。じゃあ、プレイする筐体きょうたいを探すね。ついてきて」



 まずは何を落とすか吟味していく。そうだな、まずはゲットできそうなものを探す。基本中の基本だ。

 大きいぬいぐるみとかは持ち上がらないし、少しずつズラしていくヤツも難しい。簡単なのと言えば……お菓子か。


 まずは無難にお菓子系でいく木葉。


 さあ、勝負開始だ。


 お手並み拝見……!

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