ギャルにお持ち帰りされた俺

 金髪ギャルの凩に手を握られ、そのままお持ち帰りされるとか……物々交換とは、良い意味で恐ろしいものだ。


「凩さんの家ってどの辺なんだ?」

「駅前にあるマンション。ここから徒歩十五分くらいだね」


「結構近いんだな。ん、駅前のマンション?」

「うん。行けば分かるよ」


 ニカッと白い歯を見せて笑う凩は、なんだか楽しそうだった。ノリノリだな。

 一方の俺は凩から手を握られるという緊急事態エマージェンシーに心臓が鳴りっぱなしだった。なんだ、この恋人みたいな雰囲気。


 本来なら俺が引っ張る側だと思うんだが――なんだろう、ギャルに優しくしてもらえるだけでこんなに幸せなら、細かい事はどうでもよくなった。


「そうか。凩さんの家、楽しみだな」

「あ、そうだ。そろそろ名前で呼んでよ。あたしは、風吹くんって呼んでるじゃん?」

「それはそうだけど――なんだか今更呼び方変えるのって恥ずかしいな」


「気にしない気にしない。木葉って呼んでよ」



 手を“にぎにぎ”しながらお願いされる。

 しかも、凩ってしっかり相手おれの目を見るから……余計に気恥ずかしかった。


 名前で呼ぶって、難易度高ベリーハードすぎるだろう。


 けど、凩との距離感を詰める手段でもある。


 名前で呼び合える仲ということになるのだから。



 俺は、モブキャラ脱却の為にも勇気と言葉を強く振り絞る。



「し、仕方ないな。名前で呼ぶよ」

「うんうん」


「……木葉、さん」


「良くできました! でも、呼び捨てでいいよ?」

「け、けどなぁ。さすが抵抗あるな」


「呼び捨ての方が嬉しい。たぶん、もっとトキメクから」

「マジか」

「マジマジ」



 ときめいてくれるのなら――と、俺は呼び捨てを決意した。



「木葉」



 ゆっくりと、大切に彼女の名を口にする。すると、木葉は両手で顔を覆ってしまった。なぜに!?



「……あぁぁぁぁぁぁ!!」


「えー…。そんなに恥ずかしがられるとは。ていうか、俺の方が恥ずかしいってーの」


「ときめいた。すっごくときめいた! 今なら風吹くんの言うことなんでも聞いちゃうかも」


「えっちなことでも?」

「うん、いいよ! あたしの処女あげてもいい!」


「――――ッ!!」



 完全に勢いだったんだろうな。

 木葉はとんでもない事を口にした。



 これ、身が持つかなぁ……俺。



 * * *



 駅前のマンションに到着。

 五階建ての一般的な建物だった。

 とはいえ、新築っぽくて家賃も高そうだ。

 女子高生が一人で暮ららすには贅沢すぎる気がするが――もしかしたら、木葉の実家は金持ちなのかもしれない。



「へぇ、オシャレなマンションだな」

「出来立てほやほやだからね。行きましょ」



 厳重なセキュリティを突破し、中へ入っていく。エレベーターに乗り、五階まで上がった。まさかの最上階か。


 通路を少し歩くと、木葉の部屋はあった。



「へえ、見晴らしがいいな」

「でしょ。夜景がそこそこ見えるし、立地もいいんだよ。周辺にコンビニや飲食店もいっぱいあるからね」


 良いところに住んでいるんだなぁと感心していると、木葉は、スマホのアプリで扉を開けた。

 ハイテクなシステムに驚いていると、手招きされた。



「お邪魔……します」

「風吹くん、これから一緒に住むんだよ。他人行儀すぎ~」


「ああ、そっか。……ただいま」

「それでオーケー。それじゃ、部屋を案内するね」



 ついに俺は木葉の部屋に上がり込んだ。女子の……ギャルの部屋だ。

 すでに良い匂いが漂っていた。

 なにかの芳香剤かな。

 良い香りで頭がぼうっとする。



「予想以上に広いな」

「うん、こっちがリビングね」


 五人は余裕でくつろげそうな空間があった。ソファにガラステーブル……50インチはありそうな液晶テレビ。


「羨ましいな。いつか一人暮らしを始めたら、こんな部屋に住みたいと思っていた」

「そうなんだ。じゃあ、丁度いいねっ」


 そのまま案内をされ、トイレやバスルーム、キッチンを回った。あとは木葉の寝室。そこはもうギャルの部屋って感じだった。


 化粧関係からネイル、アクセサリー類が山のようにあって散乱していた。


 服もいくつあるんだか。

 あちらこちらに転がっていた。



「おいおい、木葉」

「あはは……自室は片づけられなくて」


「にしても、いかにもな部屋だな。木葉らしい」

「下着が落ちてるかも。物色したら怒るからね!」

「そんなヘンタイみたいな行為しないって」


 すでに視界にいくつか入っているけどな。普段、あんなモンつけているのかよ。物々交換で貰ったのも凄かったけど。



「じゃあ、あたしは着替えるから」



 突然、スカートを脱ぎだす木葉。

 その光景に俺は釘付けになってしまった。



「……えっと」

「ん? ……ちょ! いつものノリで脱いじゃった。み、見ないでよぉ」


「わ、悪かった。俺はリビングにいるよ」

「風吹くんのえっちー!」



 自分で脱いでおいて……ありがとうございます。

 木葉のスカート着脱シーンを俺は脳内にインプット。一生忘れないように記憶した。

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