ギャルと一緒にゲーム
数学の授業が終わった。
これで昼休みだ。
疲れ切った脳を癒すべく、俺は机に伏せて体力を回復していた。
すると、クラスの女子から声を掛けれた。
「微風くん」
「ん……俺?」
顔をあげると、そこには同じクラスの女子――名前を確か『
「うん。廊下に風紀委員長が待っているから行ってね」
「マジかよ」
なんとなく隣の席を見る。
凩は『行く必要ない』みたいなオーラを発していた。ちょっと怖いな。
けど、無視するわけにもいかない。
それに、昨日のことも気になるといえば気になる。
俺は席を立つ――のだが、凩が俺の腕を
「あんな風紀委員長の話なんて聞く必要ないよ」
「いやだけど、重要な用事があるのかも」
「でも……」
引き留めてくれる気持ちは嬉しかった。
だが、風紀委員長・水瀬がなぜあんなことを言ったのかも気になっていたんだ。だから俺は――ん?
「木葉っ!」
「きゃ!
いつのまにか生徒会長の鈴屋さんがいた。凩を背後から抱き締め、身動きできないようホールドしていた。……何事?
「ごめんね、木葉。風紀委員長がね、木葉はきっと彼を引き留めるからって、だからそれを
「ちょー! 親友を裏切るとかー!」
「ごめんごめん。スタパの甘々フラペチーノ無料引換券をくれるっていうからさ~」
「無料引換券で友達を売るなー!!」
どうやら、会長は買収されたようだな。恐ろしいな、風紀委員長・水瀬。
これでは凩は動けない。
とにかく行ってみるか。
歩き出すと、それでも凩は抵抗した。
「ま、まって、風吹くん!」
「大丈夫だって。少し話を聞くだけだ」
「そ……そうだ! なんでも言うこと聞いてあげる! どう!?」
「――な!」
なんでもですとぉ!!
さすがの俺も、
「よしっ、風吹くん。それでいいわ!」
俺が引き返すと、凩は胸を撫でおろしていた。
しかし、鈴屋がすぐに別の餌をぶら下げてきた。
「風吹くん。風紀委員長のところへ行ったら、後でわたしが凄くえっちなことしてあげる」
「ありがとうございます!!」
俺は再び廊下を目指した。
「あああああああああああああ、愛衣の馬鹿あああああああああああ!!」
凩は絶叫し、ジタバタ暴れていたけど鈴屋に取り押さえられて脱出できなかった。俺にはどうすることもできない。
凩の提案もそりゃ魅力的だった。
けれど、会長鈴屋の『凄くえっち』な方にもっと魅力を感じてしまった。あんな誘うような眼差しでエロっぽく言われてはな。
あれで落ちない男はいないのだ。
* * *
廊下に出ると、真面目系の黒髪少女――風紀委員長の水瀬がいた。
話すのはこれで二度目か。
あの時は、なんで話したんだっけ。
最近、いろんな事がありすぎて覚えていない。
「水瀬さん、俺になにか用?」
「はい、ひとつだけ聞きたいんです」
「なんだい?」
「微風くんと凩さんは付き合っているんですか?」
そんな風に聞かれ、俺はドキッとした。まさかそんなストレートに聞いてくるとか……ビックリした。
むろん、俺と凩はそんな関係ではない。今のところは――だが。
「そんな風に見えるか?」
「見えます。仲良すぎですし、その……羨ましいんです」
「え? なんだって?」
最後の方がよく聞こえなかった。
「そんなにギャルがいいんですか!?」
「まあな。優しいし、会話も楽しいからなあ。それに、あの可愛さ。表情がコロコロ変わってさ――」
「も、もういいです! そんなのろけ話なんて聞きたくありません! お時間を取らせて申し訳なかったです。では」
水瀬は、ちょっと泣いていたように見えた。涙目で……走って行ってしまった。
なんだったんだ?
――教室へ戻ると、凩が俺の腕を掴んで連行していく。乱暴だなあ。
「ちょ、凩さん。どこへ連れていく気だ」
「風吹くん、あたしは今すっごく怒ってるよ」
「ああ……悪かった。つい、生徒会長の話に乗ってしまった」
「それもあるし、どうして風紀委員長の話を聞きに行ったの!」
「どうしてって、呼ばれたからさ」
「これだけは言いたくなかったけど、昨日、風吹くんの悪口を言っていたんだよ」
ああ、例のね。
俺はてっきり、直接悪口を言われるのかと覚悟していたが、それは違った。俺と凩の関係性を確認しているようだったけどな。
しかも泣いていたし、意図がまったく分からん。
疑問の嵐の中、俺は屋上へ連れてかれた。
「なんで屋上?」
「ここ、人あんまり来ないからね。ほら、無人」
確かに、誰も居なかった。
そのまま連れていかれ、柵の方へ向かう。腰を下ろすよう指示され、俺はその場に座る。青空が綺麗だなぁとか思っていると、隣に凩が座った。
――え。
マジっすか。
肩と肩がピッタリくっ付いている。
「怒っているんじゃなかったのか」
「うん、怒ってる。……だから、風吹くんに地獄の苦しみを与えてるの」
「苦しみ? むしろ、幸せなんですが」
「苦しみなの!!」
なにをムキになっているんだか。
これではご褒美でしかない。
――ああ、それにしても幸せだ。
誰も居ない屋上で、凩と二人きり。しかも肩をくっつけて……凩の小さな頭が目の前だ。うわ、ドキドキしてきた。
「白状するとさ、風紀委員長に俺と凩さんの関係を聞かれた。付き合ってるのって」
「えっ……そうだったんだ。なんて答えたの?」
「……そんな風に見えるかって。それだけ答えた」
「なんだ、誤魔化したんだ。いっそ、彼女って言えばいいのに」
「か、かの……!」
言って良かったのかよ。
それは驚いたっていうか、あれ……もしかして、凩って俺のこと……?
それにこんな密着して信頼を寄せてくれている。あれ、あれ……よ~く考えたら、これは片思いでもなく、両想いなのでは。
まさか、そんなまさかな。
疑り深い俺は、凩の気持ちを探る為に――なんとなく腕を回してみた。
すると、凩は“ぴくっ”と反応を示す。
不快感を露わにする様子はない。
むしろ、耳まで真っ赤にしていた。
「そ、そうだ! 風吹くん、ゲームやってるよね!?」
「あ、ああ……スマホで遊べるMMORPGなんだよ。
「え、三年も!? すごぉ。あたしにも出来るかな」
「凩さん、ゲームに興味あるんだ?」
「うん。愛衣とよく遊んでいたよ~」
そういうことか。
けど、これはもっと仲良くなるチャンスだな。
「それじゃ、凩さんもやってみる? 俺がレベリング手伝って最強にしてあげるよ」
「マジ~? それならやってみよっと。はい、スマホ」
凩からスマホを手渡される。
なんかデコレーション派手ですごいケースだな。まるで星空のようにキラキラ輝いていた。まさにギャルのスマホって感じ。
俺は、ゲームのインストールを開始した。
「ちょっと時間が掛かりそう」
「そっか。それまでどうしよっか」
「ああ、そうだ。まだ俺のプレゼントを渡していなかったな」
危ない、忘れれるところだった。
キスは出来なかったけど、パンツは貰ったし。
懐から掌サイズの小箱を取り出す。
それを凩に渡した。
「え……え、ええ!? こ、のサイズ感って結婚指輪の箱じゃない!?」
「ちょ、違うって!」
否定すると凩はショックを受けていた。
え、結婚指輪が欲しかったのか……?
それでもアリってことなのか!?
「じゃあ、なんだろ」
「開けてみな」
ごそごそと開封する凩。中からは最新のワイヤレスイヤホン(一万円)が登場。俺はそれを凩にプレゼントしたのだ。
「ま、まって! これってワイヤレスイヤホンじゃん。いいの?」
「バイトの臨時収入があったからな、構わないよ」
「けど、これは悪いよ」
「気にするな。これが俺の気持ちなんだ」
「風吹くん……うん、大事にするね。ありがとっ」
左腕を抱きしめられ、柔らかく弾力のあるものに包まれた。けれど、それよりも
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