ライン交換

 次の日。

 朝登校して一番後ろにある席に座る俺。隅だから、のびのび出来て最高だ。


 早く登校しすぎたせいか、隣の席の凩しかいなかった。

 コイツも早いな。


 さっき顔を合わせ、一言挨拶を交わして沈黙が続いていた。


 恐らく、昨日の物々交換のせいでギクシャクしている。という俺も、ちょっとだけ顔が合わせ辛かった。


 凩のパンツをゲットしてから、カバンの中に厳重に保管した。家に帰ってから家族に見られないよう隠さなきゃいけなかったし、大変だったぜ。


 とりあえず今、凩のパンツは俺のアダルトグッズと共に暗証番号必須の金庫の中に眠っている。


 うんうんと納得していると、凩が口を開いた。



「ねえ、風吹くん。あたしのパンツ、変なことに使ってないでしょうね!?」

「変なこと? 例えば?」


「……っ! そ、それを女の子から言わせる気なの!」



 顔を真っ赤にして慌てる凩。

 こいつは、いちいち反応が可愛いな。

 実にからかい甲斐がいがある。



「おかげでスッキリしたし、清々しい気分だよ」

「なっ!! やっぱり使ってるじゃん!?」


「なんのことだ? 俺はこのスマホのゲームのことを言っているんだ」



 ちょうどプレイしていたアプリゲームを凩に見せつける。強敵のボスモンスターを倒したところだった。



「そ、そっちの話か! うぅ、まぎらわしいなぁ」

「ふぅん? 凩さんは、俺が何でスッキリしていたと思っていたんだ?」


「な、なんでもないわよ!! さいてーさいてー!!」



 あぁ、最高の罵倒ばとうだ。

 凩は、そもそもアニメ声。

 素晴らしいほどの天然ASMRっぷりに、我々の業界ではご褒美でしかなかったのである。ついでに言うと、俺は“ドM”なのだ。


 女の子から何を言われても、大抵は“快感”へ変換できた。しかも、超絶美人のギャル、凩からののしってもらえるとか、逆にお金払わなくていいのか!? ってレベルだ。実に申し訳ないっ。


 もし、VTuberだったのなら、スパチャの嵐だ。間違いない。



 ――そうして、時間が過ぎていくとクラスメイトがどんどんやってきた。ホームルームが始まり、念仏のような授業が始まっていく。あー、退屈。



 三時限目の英語の授業で異変は起きた。



 凩が涙目で俺に訴えかけていたのだ。

 今度はいったい何なんだか。


 俺は気になって小声で話しかけた。



「どうした、凩さん」

「……英語の教科書を忘れちゃった」


「まーたドジっ子か」

「ち、違うもん。たまたまだから!」



 その直後、先生が凩を当てた。この問題に答えよと言われるが、凩は教科書を持っていない。


 どうしようと、ますます涙目になる凩。やれやれ。



「あとで物々交換な」

「え、マジ! ありがとう、風吹くん!」



 とりあえず、教科書を渡した。




 それから授業は流れて――昼休み。




「さて、凩さん。物々交換してもらおうか!」


 分かっていた、みたいな視線を俺に向ける凩。なんかちょっと嫌そうだけど、それでも約束は約束。どうやら、凩は約束だけは必ず守るタイプらしい。



「な、なにと交換するの? 言っておくけど、もうパンツはなしよ!」

「いやそれは、凩さんの提案だったじゃないか。俺のせいではない」

「そうだっけ……覚えてない」


 嫌な記憶は消去して忘れるらしい。都合がいいな!

 まあいいけど。


 それより、物々交換だ。


 とはいえ……なにと交換する?



「まあ、英語の教科書を貸したっていうか、助けたみたいなものだけどな」


「うん、本当に助かった。教科書忘れたとか、クラスメイトから笑われるところだったもん。だからね、風吹くんには本当に助けられたんだ」


「いいってことさ。物々交換だしな」

「本当に、その辺りキッチリしているわね。分かった、じゃあ、あたしと『ライン交換』しようか」



 まさかの提案に俺は心臓が破壊されそうになった。


 ……え、ええッ!?


 凩とライン交換?


 マジかよ。明日は地球が消滅しているぞ。



 人生=彼女なしの俺に、奇跡が起きた。まさか凩という、クラスの男子が付き合えないかと憧れているギャルとライン交換する日がこようとは。



「いいのか? 凩って彼氏とか」

「あはは、そんなのいるわけないじゃん。風吹くんがはじめて」

「ウソ? ……でもいいか、交換条件としては最高すぎるよ」


「うん、じゃあライン交換ね」



 近づいてスマホを出し合う。

 ……あ、凩のネイル、桜色で可愛いな。って、見惚れている場合ではない。それよりも、目の前に特盛の谷間が……どうしてブラウスをそんな大胆にはだけさせているんだかっ。


 俺はブルブル震える手でスマホを操作していく。



「……っ!」

「ちょ、風吹くんの手、震えすぎ~。ほら、落ち着いて」



 ぎゅぅっと俺の手を握ってくる凩。俺は、心臓がバックンバックン激しく鳴った。顔が熱くなって、大噴火寸前となっていた。


 やばいやばいやばい。


 凩の手、小さくて細くて……柔らかい。


 だめだ、これ以上は俺がもれなく死ぬ。このままでは『死因:ギャルから手を握られて死亡』とかなってしまう。


 それはちょっとダサい。

 ので、俺は気持ちを落ち着かせていく。


 深呼吸だ。

 深く息を吸って、吐いて……吸って、吐いた。



「はぁ~………よし、ゲロ吐きそうだけど大丈夫だ」

「ちょ、ダメじゃん。って、まあいいや。ていうか、風吹くんって……女の子と手を繋ぐの初めて?」


「う、うっさいわ! 俺なんて主人公になれない永遠モブ野郎だからな。可愛い女の子と一緒に過ごすなんて機会はなかったよ」


「そうなんだ。――はい、ライン交換完了ね」


 いつの間にか、俺は凩とライン交換を終えていた。……あれ、いつの間に。


 そうか、凩が進めてくれていたんだな。てか、俺の『友達リスト』に凩の名前がある。……信じられん。俺の『父』、『母』、『義姉』、『じいちゃん』しかなかった一覧に、『凩 木葉』の名が追加されていたのだ。



 お……


 おっしゃああああああああああ~~~!!(心の中でガッツポーズしまくる俺)



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

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