第3話

 並んでる人達が、一斉に乗り込む。

 彼女も電車に向かって歩き出す。

 僕も一緒に歩きだすが、不意に彼女が立ち止まる。


「ごめんなさい。巻き込んでしまって」

「え?」

「向こうであなたと幸せに暮らせると思ったけど、どうやら無理だったみたいね」

「どういう事?」

「あなたは、この電車に乗れないの」

「なんで?」

「だって、キップを持ってないもの」


 次の瞬間、僕は両腕を誰かにつかまれた。

 見ると、いつの間に来たのか二人の駅員が僕を捕まえている。


「困りますね。無賃乗車は」

「え? ちょっと」


 僕の抗議など無視して、二人の駅員は僕を引きずっていく。

 電車を見ると、彼女が中から手を振っていた。


「さようなら」


 扉が閉じ電車は動き出す。

 そのまま僕の意識は暗転する。

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