第2話
「え!?」
彼女は、ひどく驚いたようだ。
「覚えてないんですか?」
「ええ、その酔っていたもので」
「ここは……」
彼女は、不意に口澱む。
「あの、どうしました?」
「あなたは、あたしと一緒にここへ来たんですよ。何も覚えてないんですか?」
え? という事は酔ってる間に僕はこのお嬢さんと仲良くなってしまい、これから良いところへ行こうとしていたのか?
なんてこった。普段は自分から女の子に声をかけることもできない僕がそんな事を?
たかがアルコールごときの勢いで。
「あのすみません。僕、酔ってる間に何か失礼な事しませんでしたか?」
「え? いえ、そんな事ありませんわ」
彼女はにっこりとほほ笑む。
「ここへ来る途中で、あなたはあたしの悩み事を一杯聞いてくれたわ」
「そうでしたか?」
なんだ、それだけか。
「でも忘れてしまったのね」
「ああごめん。今、思い出す。すぐ思い出す。ただちに思い出すから……」
「ううん、いいの。たぶんもう思い出せないと思うわ」
「え?」
ホームに電車が入ってきたのはその時だった。
「あなたに悩みを打ち明けたら、なんかすっきりしちゃった」
「それはよかった」
「あたし馬鹿みたいね。あんな下らない男のために悩んだりして」
どうやら失恋の悩みだったようだな。
「挙句にあんな事しちゃうなんて」
あんな事? 何をやったんだろう?
電車が止まり扉が開く。
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