第9話 何がしたかったの?
辺りはシーンとなった。
皇太子も吃驚、護衛さんも吃驚、ついでに私と先生も吃驚。
こいつマジで何しに来たの?本気でマセル公爵にケンカ売りに来たの?
ここで動いたのは皇太子よりも先生だった。
「よくわかりました。この事はマセル公爵に私からお伝え致します。マセル公爵令嬢は体調が悪化されている様です。
皇太子殿下、御前を下がる無礼をお許しください。」
怒涛の如く言って私を横抱きにし、皇太子が何か言う前に部屋を出た。
あの~、私一言も喋ってないんですけど。
部屋に戻ると侍女(メイドさん)に着替えさせられ、ベッドに直行。先生は出ていって暫くしてから医者と一緒に入ってきた。
医者は私を診て
「極度の疲労でしょう。この薬を飲んで2、3日安静にして下さい。」
あれ?先生が医者に何か言ったのかな?
「気づいてないようだけど顔色が真っ青だよ。」
「·····昔からご自分の体調に鈍感な方でしたから。」
何気に失礼だな。
可哀想な子を見る目しないでよ。2人とも!
でも緊張はかなりしてたけど·····。
まだ痛む左肩を抑えて息をつく。皇太子って文武両道なんだよね。文どこ行った?
犯罪者もアウェーで何言ってんの?
考えてたら気持ち悪くなってきた。
先生が私の両眼を手の平で覆いいつもより優しい声で言った。
「何も考えずに少し寝なさい。顔色が悪くなっていってる。」
「はい·····」
「起きた時には良い報告が聞けるよ。」
そう言った先生の声を沈んでいく意識の中で聞いた。
私が起きたのは次の日の朝だった。気分はスッキリしている。
昨日の夕方前からノンストップで寝てた。
ホントに疲れてたんだ~。この体、ちょっと鈍いのかな?
執事長が部屋に来てお父様が私と朝食を食べたいって。どういう風の吹き回しだろ?了承の返事をして侍女と入れ違いに出ていった。
重症の時、一番親身になって世話してくれた侍女を専属にしてもらった。
濃紺の髪に黒目のアヤナ21才。もう結婚してて一児の母。今日も丁寧に髪を梳かしてくれる。
「お父様。お待たせしてすいません。」
1人でまったりご飯を食べたかったけど、家主に言われちゃ断れない。
「昨日は大変だったと聞いた。」
「左様でございますね。ですが、先生がおられましたので大丈夫ですわ。」
「·····そうか」
それからは無言で食べた。やっぱり1人で食べたかった。美味しさも半減だよ。
食事が終わり立とうとしたらお父様から声がかかった。
「大事な話がある。書斎に来なさい。」
硬い表情で言われ昨日の話かなと暢気に考えてたら、その暢気さもぶっ飛ぶ内容だった。
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