第10話 お父様のお話
お父様の書斎は机と椅子、大きいソファ二脚に一人掛けのソファ二脚。後は本棚とお酒の棚だけ。書斎だからこんなものか。
お父様と対面に座り紅茶を飲んでいると此方を見ずに話し出した。
「昨日、皇太子殿下とウーシエの馬鹿が来て具合が悪くなったと聞いた。その·····体はもう大丈夫なのか?」
えっ?今、犯罪者を馬鹿って言った?しかも私の体調まで聞いてきたよ。手元の紅茶を見ながらだけど。
「ゆっくり休みましたので。」
「そうか。」
はい、沈黙。さっさと話を進めたいけど、これがお父様の通常なら今は合わせよう。
「今からする話はお前にとって酷な話かも知れない。気をしっかり持って聞きなさい。」
前降り長いな。私は頷いて早く話せと眼力を強くした。こっち見てないけど。
「皇太子との婚約は白紙になった。義兄であるイリクは近々養子を解消する。ウーシエの馬鹿は近衛隊宿舎の反省室にて暫く監禁になった。」
また馬鹿って言ったよ。以外に口が悪いな。
「左様でございますか。」
「冷静だな。」
あんたが動揺するなって言ったんでしょうが。
「そう言われましても、義兄には会ったことがありませんし、皇太子殿下は不敬ですが私を刺した方を連れてくるような非常識さを露呈されました。しかも私にとっては初対面です。侯爵子息様は言わずもがな。どうも思えません。」
「そ、そうか」
「はい。でも対応が早いですわね。」
「ああ、昨日の件はセルシュ殿が会話の内容を記載させていて、それを皇宮に早馬で送ってくれた。内容を見てすぐに皇帝陛下と馬鹿親に抗議したんでな。婚約白紙は前から言っていたから今回の件がトドメになった。」
「では、お義兄様は?」
「もう義兄ではない。今日、明日には養子縁組が解消される。アレは平民になる。」
「平民?」
「当たり前だ。主家の嫡流を守らず、女に狂った愚か者など必要ない。拷問の後殺そうとしたが、皇太子殿下がしゃしゃり出てきたのだ!」
やっとこっちを見たけど人殺しそうな目をしてる。
公爵位は私刑が許されてるんだった。義兄を見ないと思ったけど拷問されてたのね。
公爵家怖っ!!
「それと神前裁判だが?」
ん?神前裁判?
「神前裁判がどうかしましたか?」
「いや、お前が·····そうか、何もかも忘れているんだったな。」
お父様を見る目が冷たくなる。
何で忘れんだよ!!
「お前が刺された時に枢機卿が近くにおられて、神前裁判を口頭で申請したと言ってきたのだ。お前の容態がどうなるかわからないので保留にしているそうだ!」
めっちゃ早口で言ったよ。
って、神前裁判を申請したの?!
刺された時に言うって凄い胆力!!
この世界来て1番驚いたわ!
あの日記に自分の命をかけて申請するとか書かれてたけど。
暗闇で会った美少女からはそんな気力無さそうに見えたけどねー。命掛けてでもやり返すって、やっぱお父様の子だわ。
「申請は受理されるのですか?」
「受理されてる。枢機卿が言うには命をかけた訴えに入るそうだ。」
ラッキー!
もう受理されてるなら命をかける必要はないし、神前裁判は本人が言うまで事前に知るのは無理だ。
当日いきなり呼ばれ拒否はできない(できるのは冠婚葬祭だけ)
これは有意義に使おう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます