第62話 コラボ配信
『こんばんはー! みんなー元気にしてたかなー? 夏川ゆらだよ』
しばらくして、Y○utubeの画面からゆらちゃん(妹)の声が聞こえてきた。
――待ってましたー!(正座待機)
――ワクワク!(正座待機)
――耳舐め……耳舐め……(雑魚寝待機)
今日もコメント欄のリスナー(変態)達も元気いっぱいだ。
『というわけで今日は、ASMRコラボやっていきたいと思いまーす。それじゃあ早速ゲストをお呼びしちゃいますね。緑が丘ミドリちゃーん』
ゆらちゃんが呼び出すと、今度は右耳から艶めかしい吐息が聞こえてくる。
『はぁーい。皆さんこんばんは。今日も新緑の芽にしちゃうぞ♪ 緑が丘ミドリでーす』
まるで奥沢さんから発せられているとは思えない、大人のお姉さんボイスが耳に刺さる。
こりゃ、初見で聞いても気づきませんわ。
――うぉぉぉぉー!!!! 本物だぁぁぁあ!!!
――待ってましたー!!
――耳舐め! 耳舐め!
『ふふっ、みんな期待してくれていたみたいでありがとう。でもごめんなさい、今日はゆらちゃんのチャンネルだから、耳舐めはお・あ・ず・け♪ 健全バージョンでーす』
――そ、そんなぁー!
――シュン……
――ゆらちゃんの耳舐めが初お披露目かと思ったのにぃー!
普段アダルトコンテンツの方で活動している緑が丘ミドリとのコラボということもあって、どうやらリスナー達も、いつもよりも過激なものをご所望だったらしい。
『みんなごめんねー。甘やかしてあげたのは山々なんだけど、Y○utube君も思春期だから、あまり過激なことしちゃうとチャンネルBANされちゃうから』
――なら仕方ない
――知ってた
――Y○utube君さぁ……
『あっ、ちなみに今日は、ミドリちゃんと一緒に出演しているASMRボイスの販売記念でコラボしてるわけだけど、そっちの音声の方だともしかしたら……ね?』
『そうね、今までにない夏川ゆらちゃんを発掘することが出来たと自負してるわ』
――予約します!
――はい、即予約完了しました!
――期待しちゃうぞ? いいんだよね⁉
『あはは……ちょっと恥ずかしかったなぁ』
『またまたー結構乗り気だったじゃない』
『もうーそんなことないよぉー』
じゃれ合いながら、ASMRマイクに向かって小声で百合成分を加えていく二人。
これが、紫音と奥沢さんだと知っている身としたら、信じられない光景に立ち会っていることになる。
『というわけで、今日はせっかく二人でコラボなわけだから……みんなを両耳から癒していきたいと思いまーす』
『沢山癒されて行ってね♪』
――やったぁぁー!!!
――きたぁぁぁー!!!
――昇天する準備は出来てます!
『こーら、慌てないの。一時間ぐらいかけて、じっくりみんなのことを癒していくから、期待しててね♪』
『それじゃあ早速始めましょうか』
『まずは……吐息からイクよ?』
刹那、両耳から感じる、生暖かい女の子の吐息が吹きかけられる。
俺ももちろんビクっと身震いしてしまったわけだが、今までとは違うものを感じていた。
無理もない。
ゆらちゃんが妹で、ミドリちゃんが奥沢さんなのだから……。
まるで、二人に本当に吐息を吹きかけられているような妙な感覚になってしまうのだから。
――ううぅぅぅ……これはヤバイ!
――もっと……もっとシてください!!
――ダメだ、もう我慢できん!
リスナー達も大喜びで何よりだ。
と同時に、俺はまた別の感情を心の中に抱いてしまう。
「いくら何でも、それは欲張りすぎだよな」
そんな独り言を漏らしつつ、隣の部屋でASMRマイクに向かって二人が吐息を吹きかけているであろう光景を想像しながら、つっかえる気持ちを胸に秘めつつ、二人の配信を視聴するのであった。
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