第44話 桜坂ヴィラの妹、デビュー

 それから、数日が経った夜。 

 俺は部屋の明かりを消して、ベッドに横たわり、Bluet〇oth接続イヤホンを両耳に装着する。

 生配信が始まるまで、Y〇utubeのサムネイル画面を見つめながら、緊張した面持ちで待っていた。

 

 しばらくして、カチッとマウスのクリック音が聞こえてくると、画面上に二人のサキュバスが現れる。


 一人はピンク色の髪を伸ばし、黒水着を身に着け、褐色色の肌を大胆に露出させつつ、頬を赤く染めたおっとりサキュバス。

 もう一人は、金髪色の長い髪を靡かせ、小振りな胸元を寄せ上げて谷間を見せつけて、にやにやと舌なめずりをした表情で画面越しのリクナー達を見つめている妖艶なサキュバスだった。


『こんばんは、悪魔のサキュバスお姉さん桜坂ヴィラよ。今宵もあなたのお耳を沢山ペロペロしていくわ。今日は、魔界から私のことを心配して様子を見に来てくれた妹も一緒よ』


  ――待ってました!

  ――まさかの妹登場⁉

  ――さてと、グヘヘッ。妹ちゃんはどういう色に染めてやろうか

  ――姉妹同時に⁉ クックックッ、これは捗るぜ


 リスナー達も突然の妹登場に様々な期待と欲望を膨らませているようだ。

 そしてついに、妹サキュバスがその声をお披露する。


『やっほー、妹の桜坂メアだよー。お姉ちゃんの事が心配で、魔界からやってきちゃいましたー。よろしくね♪』


  ――うぉぉぉぉぉ!!! 妹ちゃんもこれはこれでいい!

  ――声可愛い♡

  ――こんなピュアそうな妹ちゃんも、俺たちに凌駕されていくのか

  ――ぐへへへへっ……今から楽しみですなぁー


 溌溂とした妹サキュバスである黒亜の声を聞き、リスナー達は様々な反響のコメントを打ち込んでいる。


『あっ、そうだ』


 すると、妹サキュバスであるメアが何か思い出したように声を上げる。


『言っとくけど、今までお姉ちゃんの事痛めつけてた奴ら。今日から全員アーシの奴隷にしてやるから、よろー』


  ――ふぁっ⁉

  ――待て待て待て!

  ――そうだぞ。俺たちを何だと思ってんだ?

  ――舐めるなよ? 妹風情で


 コメント欄、相変わらず治安が悪いなぁ……。

 俺がそんなことを思いつつ心配していると、Y〇utubeの画面に映っていた二人の表情が冷たいものへと変わる。

 目のハイライトが消え、こちらを腐ったミカンのごとく睨みつける。


『……はっ? 今、なんて言った? 舐めてるのはそっちでしょ? 何勘違いしてるのかな? アンタらは元からアーシらに指図する筋合いなんてないんだし。ただアーシたちのダブル耳舐めの海に溺れてればいいの』


 黒……じゃなくて、メアちゃんは圧強めな口調で言い放ち、有無を言わせぬ威圧感を放つ。


  ――お、俺たちはお前らなんかに絶対屈したりしないからな?

  ――そうだ、そうだ! そっちこそ、立場わきまえた方がいいんじゃねぇの?

  ――お金というマネー権力は、俺たちが握ってるってことだ。分かったかなお嬢ちゃん?


『あぁ……なんだ。アンタらなーんにもお姉ちゃんから聞いてなかったんだ。別にお金の心配なんていらないよーだ。それに今日の配信は、スパチャ切ってるもんねー』


  ――う、嘘だろ⁉ 正気か⁉

  ――マジだ。普通のコメントしか打ち込めねぇ

  ――2000円。頼みます。これで許してください!


『やだよーだ。ほらほら、お金でしかマウント取る事しか出来ない弱っちい下衆共はどいつかなぁー? お姉ちゃん、今日はいつも辱めを受けてた屈辱を、思う存分コイツらに味わってもらっちゃおうねー』

『こらこらメアちゃん。せっかく見に来てくれるリスナーさんをコイツ呼ばわりしないの。でもそうね、せっかくの機会だもの。今までのかりは返しておかないとね♪』


 画面の向こう側でくすくすと笑い合う二人。

 悪い笑みを浮かべている理恵さんと黒亜の様子が容易く目に浮かんでくる。

 そして、二人は片方ずつの耳元へと近づくと――


『お仕置き耳舐め、ぐっぽり、ねーっとり、いじめてあげる』

『お仕置き耳舐め、ぐっぽり、ねーっとり、いじめてあげるわね』


 ンレロッ……グポッ、グポッ、グポッ。

 レロ、レロ、レロ。

 グチョ……グチョ……グチョ。

 レロレロレロ……ジュルッ、ジュルッ、ジュルッ。


 刹那、両耳からリズミカルに聞こえてくる同時耳舐めが始まった。


  ――うぉっ……これはヤバイ……!

  ――ま、負けるものかぁぁぁぁ!!!

  ――俺たちの夢を返せぇぇぇぇぇ!!


 すると、リスナーのコメントを見て、二人同時に耳舐めを止める。


『ふぅーん。そんな反抗的な態度取るんだ。ねぇねぇお姉ちゃん、こんな言う事聞かない奴らに、耳舐めなんてする必要ないよね?』

『そうねぇ。あんなこと言われたら、こっちもせっかくしてあげているのに、やる気なくしちゃうわよね』


  ――えっ⁉

  ――ここまでしておいてそれはないだろ!

  ――そうだ、そうだ!


『なら、アーシらに言わなきゃいけない事。あるよね?』


  ――うっ……

  ――えぇっと……

  ――そ、それは……


『ほら、言ってごらん。【もっと、僕たちのよわよわお耳をいっぱい舐め舐めしてくださーい】って』


  ――い、言えるもんか!

  ――言わない。絶対に言わないぞ!

  ――フリじゃないからな!


『ふーん。そっか。残念だなぁー。せっかく素直に言ってくれたら、今日は特別に、コシコシカウントダウンもしてあげようと思ってたのになぁー。ね、お姉ちゃん』

『そうねー。折角沢山ご奉仕してあげようと思っていたのに、残念だわぁー』


  ――な、何だって⁉

  ――バカ野郎、騙されるな!

  ――正気を保てお前ら!


『そんじゃお姉ちゃん。私たちもう飽きちゃったし、魔界に帰ろっか』

『そうしましょうか。折角色々用意してきたのが見せれないのは残念だけれど、仕方ないわよね』


  ――えっ⁉ ガチで言ってる⁉

  ――ちょっと、待って、待って、待って  

  ――ごめんなさい。俺たちが悪かった! 一旦話を聞いてくれ!


『……何? 今更何のつもり? だってアンタ達が決めた事じゃない』


  ――あぁ、もう分かった!

  ――言います。正直に言いますから!

  ――お願いだから配信を止めるのだけは勘弁して下さい


『アーシたちに配信止めて欲しくないんだ? へぇー、ふぅーん』


 意味ありげな声を上げるメア。

 向こう側で、手のひらの上でリスナーを操り、にやにやと悪い笑みを浮かべている黒亜の姿が簡単に想像できる。

 今頃、すっごい悪い顔しながら楽しくセリフ語ってるんだろうな……。


『そんじゃ、アンタらの誠意ってものを見せてもらおうか?』


  ――ごめんなさい

  ――今まで出しゃばっていた俺たちが悪かったです。

  ――お願いですから、耳舐めを……してください!

  ――いっぱいコシコシしてほしいです!


『違うでしょ? さっき言ったよねアーシら。なんて言えばいいかって?』


  ――僕のよわよわお耳をいっぱい舐め舐めしてくださーい!

  ――ぼっ、僕のよわよわお耳をいっぱい舐め舐めしてくださーい!

  ――ヴィラちゃんメアちゃんお願いします! 僕のよわよわお耳をいっぱい舐め舐めしてくださーい!

  ――僕のよわよわお耳をいっぱい舐め舐めしてくださーい(白目)


『ふふっ……みんなわかってんジャーン』

『もう、素直じゃないんだから!』


 機嫌を直したメアとヴィラは、再びそれぞれ耳元へと近づいて――


『それじゃ』

『今日は私達二人の耳舐めで』

『いーっぱいみんなを虐めてあ・げ・る♪』



  ――お、お願いします!

  ――ありがとうございます

  ――正直、ゾクゾクします!


『それじゃあ……イクよ?』

『せーのっ』

『せーのっ』


 レロレロレロレロッ……。

 レロッ、レロッ、レロッ……。

 グチョ、グチョ、グチョ……。

 グポッ、グポッ、グポッ……。

 ネチャ、ネチャ、ネチャ……。

 ネチョ、ネチョ、ネチョ……。


  ――あっ、そこっヤバッ

  ――うぅっ……もうダメだ我慢できねぇ!!!!

  ――あぁぁぁぁぁ!!! 気持ちいですぅぅぅぅ!!!

  ――ぎもぢぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!



 こうして、突如魔界からやってきた妹、桜坂メアのドSっぷりが発揮され、今まで下衆の極みと化していたリスナー達は、二人のダブル耳舐めによって心が浄化されていき、天に召されていくのであった。

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