第30話 最有力候補
【お知らせ】
当作品を読んでいただきありがとうございます。
読者の皆様に重要なお知らせがありまして、ご報告させていただきたいと思い、本文の前に書いていることをご了承ください。
近況ノートでも書いたのですが、9月9日付けで、作品の各話コメント欄を非表示にさせていただきました。
昨日まで皆様からの応援コメント、心から感謝しております。
当作品に関しましては、比較的平和なコメントが多いのですが、カクヨムの仕様上、作品ごとにコメント表示、非表示設定が出来ないため、全作品において非表示という対応を取らせていただきました。
いつもコメントいただいていた方には大変心苦しい思いですが、作品、作者に対する罵詈雑言が止まらない事態となりましたため、自分の執筆活動にも影響が出ると判断し、今回の判断を取らせていただきました。
詳しい事情はここでは省かせていただきますが、気になる方は本日更新しました【近況ノート】をご覧いただければと思います。
今後とも当作品を気楽に楽しんで読んでいただけると幸いです。
長文、失礼いたしました。
それでは、本編をお楽しみください。
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【本文】
「うぇぇっ……まだ耳の奥が変な感じがする」
帰り道、耳の奥に水が入ってしまった時のように、ぶんぶん頭を振っていた。
悠羽に思い切り耳奥へ指を突っ込まれたせいで、奥にオイルが残っているような感じがして気持ち悪いのである。
結果として、悠羽は最推しのASMR配信者である『夏川ゆら』ではなく、罵倒系ASMR配信者の『園田わかば』という別の配信者だった。
そして放課後、俺は理科実験室に呼び出された挙句、悠羽にオイルで耳穴を犯されてしまった。
もう、あんなにほじくられちゃったら、お嫁にいけない……!
抵抗虚しく、悠羽に開発されてしまった俺は、主従関係を結ぶことになってしまったわけだが、理科実験室を出て行く帰り際に――
『今日の深夜24時から生配信やる予定だから、絶対に見ること。見なかったらどうなるか分かってるよね?』
と、ASMR配信視聴を強要される始末。
ドSの悠羽恐るべし。
さらに驚いたのは、悠羽が奥沢さんの情報を何も持っていなかったということ。
ただ単に、奥沢さんにリアルで耳かきされていることが気に食わなかっただけで、根も葉もない根拠で『奥沢優里香には裏がある、これ以上関わるな』と言っていたのとは……。
というわけで、『夏川ゆら』探しは振り出しに戻ったわけだけれど、こうなったら、もう一人の怪しい人物から話を聞き出すしかないようだ。
「なにキモイ動きしてんだし。はたから見たら不審者にしか見えないっての」
すると、神様の悪戯なのか、曲がり角に差し掛かったところで、俺が考えていた人物の手厳しい声が聞こえてきた。
そこにいたのは、褐色色の肌に金色の髪を揺らす、幼馴染の黒亜だった。
「おう、誰かと思ったら黒亜か」
「何、そのキモイ動き? 遂に頭までおかしくなっちゃった?」
「いや、耳に水が入ってる感覚がして気持ち悪いんだよ」
そう言いながら、俺は再び頭を横にしてぐわんぐわん頭を振る。
「なら……アーシが耳かきして取ってやんよ」
俺が困っているのを見て、黒亜がそう提案してきてくれる。
心なしか、顔が赤く染まっているように見えるのは気のせいだろうか?
「いや、流石にそれは申し訳ないからいいよ」
「なっ……アーシの耳かきが不満だって言うの⁉」
「そう言うわけじゃないって! ただ、今日はバイトもあるし、その後だと夜遅くなっちまうだろ?」
そう適当に理由をでっちあげるものの、実のところは恥ずかしいだけである。
悠羽が夏川ゆらではないと分かった今、最有力候補である黒亜に耳かきをしてもらうということは、知らず知らずのうちに最推しに耳かきをしてもらっているという状況ということになるわけで……。
そんなの、恥ずかしすぎてリラックスどころか、緊張してしまって落ち着けないに決まってる。
「まっ、明日も朝早いし仕方ないか」
黒亜は残念そうにしつつも諦めてくれた。
俺はほっと胸を撫で下ろす。
ただ、黒亜が夏川ゆらである可能性が高いことに変わりはない。
俺は黒亜の身辺調査を行う必要がある。
憧れであり、雲の上の存在と思っていた夏川ゆらちゃん。
それが実は、今目の前にいる幼馴染なのかもしれないのだから。
ひとまず、黒亜が夏川ゆらであるという証拠的なものを掴むため、彼女の言動を今日一日じっくり観察してみることにした。
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