本章

第2話 ルフガル王国



ルフガル王国の王立魔術学園のカフェで私は後悔していた。

何故ならここルフガルで物語と現実の違いをまざまざと見せられたからだ。





✿* : ✿* : ✿*



ルフガル王国留学までユピテル様はあれやこれやと私を引き留めようとし、皇帝陛下達は、何故か不安げに見てきた。


そして留学三ヶ月前に私の両親コルクス王国の国王と王妃が留学の件でアバドンに招かれた。





両親は私が何かしたんじゃないかと、陛下達との会談前に『何かしたなら先に言いなさい!』と肩を掴んでガックンガックン揺らされた。


何もしてない(多分)と言っても信じて貰えず、会談では皇帝一家の前で恐縮している。



「今日は態々両陛下に来てもらったのは姫の留学の件なんだがーー」


両親はあからさまにホッとした。


もっと娘を信じてよ!


「我が国はご存知の通り小さい国ですので、王族総出で魔道具の宣伝をしております。娘の留学も取引のない国の情報と宣伝の為に一年間だけお許しを頂いていたと思いますが·····」


お父様、声が小さくなってます。幾ら小国でも一応国王でしょ!



小国だけれど我が国コルクス王国は魔法よりも魔道具作りに特化していて、コルクスの魔道具は評判も良く、周辺諸国相手に器用に立ち回っていた。


その魔道具を他国に宣伝したり売ったりするのが王族の仕事。


人手不足というのもあるし、侵略されないように魔道具の宣伝がてら外交もこなせるので一石二鳥だったりする。


私も幼い頃から成人王族と一緒に魔道具の宣伝に他国を回っていた。


商談の場には同席させて貰えたけど、口出しは許されなかった。ただ見ているだけ。


では何故連れていくか。


それは商談の雰囲気や商品のアピール、王族や貴族、商人、それぞれの身分によっての対応の仕方を、時間をかけて学べるようにしているからだ。


ユピテル様と会ったのも商談でアバドンに訪れた時だったなぁ~。


過去を思い出して乾いた笑いがでそうになったけど、今は大事な会談(ただの話し合いだけど)の最中。

過去に浸ってる場合じゃない!


皇帝陛下がお父様の言葉に知っていると返した。


「ああ、その件は了承して姫に婚約して貰っているがーー」


「僕は了承していません!」


話し合いの途中でキレたユピテル様が陛下の話を遮り、私を抱いてユピテル様の部屋に空間転移したせいで中止になり、私はユピテル様に1週間監禁され破廉恥なアレコレをされたーーー


その後一週間かけて部屋の結界を壊され、皇帝皇后両陛下からユピテル様はこってり絞られたそうです。

(私は気絶中)






✿* : ✿* : ✿*



まあ、そんなユピテル様との攻防を繰り返し何とか留学出来たのに、現実は浮気男と略奪女と浮気男の婚約者の三角関係を見るだけの半年間だった。


しかも浮気男はこの国の第一王子だから身分の関係上どうしたって婚約者が我慢しなきゃいけない。


ドラマチックさなんて欠片もなく、浮気男や略奪女に注意しては浮気男が婚約者を詰るという負のループの繰り返しを見てるだけ。

(他国の王族がしゃしゃり出たら国際問題だもの)


国内の生徒は知らないけど留学生(私含め)はこのやり取りにうんざりしてます。


唯一の救いは魔道具の宣伝が上手くいってる事位かな。


この国は(どの国でも)貴族以外は魔力を持っている平民は少なく基本的に魔道具に頼っている。豊かな領地なら領主が魔道具を買い取って領民に配ったりもしていた。


大領地や大商人との関係も良好でもうそれに救いを求めている日々。


そして今日も前方の浮気男と略奪女の元に婚約者が·····

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