第21話『明日の準備をしましょうね』
でも、万人単位で集まって生活しているなら、それなりにお互い約束事を守って、もめ事が起きない様に生活を送ってるものかも知れないわね。
荒野には荒野の、人族の村には村なりのあり方って物がありました。
きっかけは姉妹の一尾が引き起こしたいざこざだったけど、あれからぐっと近付く事が出来て、私たちの採取&狩猟生活と、村人たちの農耕生活は種族の垣根を越えて、一定の理解と協調を示して来たと思うの。
その子は、ぷっくりと鼻を膨らませ、とても自慢気に胸を張ったわ。
「むふ~。ま、村の人たちはちょ~っと趣味じゃ無かったから、あたしは見るだけだけど~」
「やだ。それ覗き?」
「覗きで御座るな。まぁ、見てしまう気持ち、判らないでは無いで御座るが」
もう一尾の子も、苦笑しながらも、うんうんと頷いて見せる。
まぁ、そうよね。
そうやって子供が産まれる事で、私たちは絶え間なく獲物を狩る事が出来るのだから。
荒野でも、見かけたらそおっとしておいてあげるの。逆に、他の肉食獣に襲われないかどうか、見守っていたりもするわ。
正にそれは豊穣の証。大地母神様の加護でもあるのだから。
思わず感慨深く、ため息を漏らしました。
「はあ~……やっぱり、春は芽吹きの季節よね。まぁ、人族はそんなの関係なしに、のべつまくなしだけど」
「そこが不思議なのよね~。季節夜昼関係無しに、物陰を見ると腰を振ってるオスが居るの~」
「どんだけ、覗いて来たで御座るか!?」
「そっち~!?」
姉妹の覗き趣味に、姉妹が突っ込み驚かれてる。何とも微笑ましい光景です。
まぁ、彼女がこの街に来たがった理由はそういう事かしらと妙に納得がいきました。
実際、観察は私たち狩猟生活を送る者にとって死活問題だから、その積み重ねは大事よね?
人族はもう基本襲わないんだけど。
冒険者みたいに、襲って来る手合いに関しては別口で。
「まぁ、この話はお仕舞い! さあ、明日は朝一番で門に並ぶわよ!」
それから、明日着て行くロングのワンピースと、顔を隠す為の麦わら帽子を配り、みんなで袖を通してみて、わいのわいの似合う似合わないと見せ合いっ子。
一応色別。
「あたし、黄色~♪」
「拙者は青が……」
「赤が残るか……」
必然的に、私は赤のワンピース。
赤は情熱の色だから、悪くは無いけど、ちょっと派手かも。
最初、全部白にしようかと思ったのだけれど、白は汚れが目立つからね。
麦わら帽子を被れば、ほ~ら顔の印象は残らない。
鮮やかな色彩に目を奪われるんじゃないかって計算です。
まあ、最初は用心用心。
「拙者だけ、胸元が……」
「あん。多少緩い方が~、風通し良いわよ~」
「あははははは……」
全部同じサイズにした弊害も。私は胸元がぱっつんぱっつんなんだけど、いわゆる大中小って感じで、分かり易い。
「じゃあ、大きい順で、私が年上でって感じで良い? 全員同じ年齢じゃ、人族に怪しまれるから」
「あたしは別に良いわよ~」
「むむむ……」
私たちって、同時期に産みつけられた卵から孵ってるから、全員同い年なのよ。
でも、人族で姉妹が同い年って、せいぜい二人。三人はちょっとレアケースだから。
という訳で、私が長女。後は黄色が次女、青が三女と決定!
私は結婚していて、旦那の開業を手伝う為に姉妹を連れて街に来たって設定にしました。
旦那の名前は、シューレスさん。靴無しって意味ね。
さて、これで準備は完了かしら? 何か忘れている様な、気がしないでもないのだけれど……
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