5日目-2話

「どうしたの? そんな難しい顔して。たこ焼き食べる?」


「いつの間にチョコバナナ食い終わってたんだよ!」


 思案に耽っている間にサキはたこ焼きに手をつけていた。一口目で口内を火傷したのか、残りのたこ焼き全てが綺麗に真っ二つにされている。


「それにしてもこのたこ焼き美味しいね。想弥も食べなよ」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


「――!?」


「ん? 何か問題が――あ、あー……なんつーか、その、すまん……」


 躊躇なくサキの使っていた割り箸でたこ焼きを食してしまった想弥。言わば間接キスをやらかしてしまったのだ。


「別に、そんなに気にしてないし」


「いやでも顔とか赤くなって……痛った!」


 また殴られた。サキは無心でたこ焼きを食べ尽くし、次の屋台へと向かう。


「んあ、そろそろ花火が始まるみたいだけどどうする? りんご飴買ってから見るか? それとも見終わってからにするか?」


「買ってから行く」


 微妙にそっけない態度になっているが、きっとすぐいつもの調子に戻るだろう。そう信じて想弥はサキについて行く。


「で? どっから見るんだ?」


「ちょっと良いとこ。きっと私しか知らないから、誰もいないと思うよ。道も複雑だから、迷わないようにね」


 そう言って、一つも灯りのない道を突き進んでいく。本当にこの道で合っているのか不安にもなったが、サキの言う事だからという理由でついて来てしまった辺りつくづく自分の警戒心の薄さを実感する。


「にしても、このりんご飴硬いね。全然歯が立たない」


「食べながら移動してたのかよ⁉」


「別にいいじゃん! これマトモに食べれる気配がないんだもん! それより、そろそろ着くよ」


「情緒不安定かお前は……」


 いつもの態度に戻ったサキに安堵しつつ、花火が打ち上がるのを待つ。


「あ! 始まった!」


「おー、確かにここからの景色綺麗だな。星空と相まって余計に」


「でしょ! お気に入りスポットなんだ〜!」


 談笑しながら花火を眺める二人。


 誰かと見る花火なんて久しぶりだったから、なのだろうか。想弥はふと思ったことを直球で伝えてしまった。


「――なぁ、来年もまたここで見れるかな」


 目を見開いた。サキからしたらそれ程驚愕すべきことだったのだ。


 だってそれは、つまり――


(ううん、今の想弥に言うことじゃない。それに、言ったら雰囲気ぶち壊しちゃうからね)


「……そうだね。来年もまた、一緒に見れたらいいね」


 最後の一発が盛大に打ち上がると同時に、りんご飴が砕かれる音が響いた。

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