拳銃自殺

 

拳銃自殺

「最期くらい派手に死にたいなぁ」


 彼は、ぼそりとそう呟いた。


「派手ってどんな風に?」と僕が訊ねた。


「んー、例えば、たくさんの人の目の前で、拳銃で頭を撃ち抜いて自殺するとか……。ああ、でも肝心の銃がないな」


「アメリカは?あそこなら普通に銃が売ってるし、アメリカで自殺して来れば」


「え〜、アメリカ⁉︎ 無理無理。俺、英語とか話せないし」


「そっか、そうだよなぁ」


 



 ある日のことである。僕は彼の部屋に入るなり、彼に向かってこう言った。


「おい、聞いてくれ。銃を手に入れたんだ」


「銃を?どうやって?ここは、日本だぞ。密輸したのか、それとも、警察や自衛隊から盗んできたのか?」


 そう言うと、彼は、疑い深い眼差しで僕を見つめた。


「いや、どれも違う。実はこの拳銃自分で作ったんだ」


「自分で?」


「そう、自分で。3Dプリンターで簡単に作れたよ」


「いいなぁ。羨ましい。今度俺にも作り方教えてくれよ」


「いや、これは君へのプレゼントだよ。今日誕生日だっただろ?」


 僕はそう言うと、彼に拳銃を差し出した。


「ありがとう、覚えててくれたのか?」


「ああ、もちろん。良かったな。これで君の念願の夢が叶うんだな」


「そうさ、最期に最高のプレゼントをありがとう」




 その翌日、彼は生放送中の天気予報のリポーターの背後で拳銃自殺をした。ネットでは、拳銃を作った僕に非難が集中したが、僕は全く後悔はしていない。だって、それが彼の望んだ結末だったからだ。しかし、1つ後悔があるとすれば、彼の自殺を目の当たりにしたリポーターが、その後ショックで首を吊って自殺してしまったことだ。きっと、僕の知らないところでは、もっと多くの人が自殺してしまったことだろう。

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拳銃自殺   @hanashiro_himeka

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