第49話 シャーロットのお薬はウ○コの香り
「これ……本当に大丈夫?」
アダムがそう言いたくなる気持ちはわかる。紫の葉を煎じて作った解毒薬は、まるで油絵の具の紫色のようにドロッとしていて、僅かに糸までひいていた。しかも、肥溜め臭が半端ない。前にダニエル王に飲ませた頭痛薬よりも数十倍のウ○コ臭が漂っている。
「おまえが煎じる薬は、なんでみんなウ○コの匂いがするんだ」
私が解毒薬を作ったと聞き、ダニエル王とエミリヤも後宮内のアナベルの部屋にやってきていた。
「私のせいじゃないからね。これが元のこの薬の匂いなの。アダムパパリンだって、私の丸薬で頭痛治ったでしょ」
「そのかわりに、一日中口からウ○コの匂いがして、吐き気をもよおしたけどな」
「じゃあ、次は吐き気止めも用意しとくよ」
「もう二度といらん」
ダニエル王はフンとそっぽをむくと、なるべく薬から遠い位置の椅子にドッカリと座った。
「確かに、凄い匂いですね。できれば飲みたくない代物ですこと」
「これは匂いだけで、味は悪くないんですよ」
「なんか、匂いだけでも気付け薬として使えそうだ」
眉を寄せたアダム、嫌そうな顔も色気が漂っていて素敵です!
「アハハハ、こんなの嗅がせられて起こされたら、きっと凄い剣幕で怒られるから。私ならタコ殴りにするね」
だから、アナベルに殴られそうになったらよろしくと、アダムにお願いをする。嗅がせるだけじゃなく、口に入れるんだから、目が覚めたら怒り狂うに違いない。でも、死ぬよりはいいよね?
侍女にアナベルを少し起こしてもらい、ティースプーンに薬をすくってアナベルの口に運ぶ。三匙ほど飲ませたところで、アナベルの眉がピクリと動き、険しく眉根が寄っていく。
四匙目を口に入れようとしたところでアナベルの目がうっすらと開き、弱々しい手でスプーンを退けようと動いた。しかし、それをものともせずに四匙目を口に突っ込んだ。続けざまに五匙目。
アナベルは目をカッと見開き覚醒した。
「いい加減になさいませ!!くっさいじゃありませんか!」
アナベルは自力で上半身を起こすと、私の手からスプーンを弾き飛ばした。
上半身には麻痺は残っていなさそうだ。
「アナベル、おまえは死にかけていた。そのウ○コ臭いのは薬だ」
「ダニエル様……」
アナベルは慌てて頭を下げた。その瞳には憧憬はなく、死の淵から生還した夫婦の再会というよりも、主従の関係にしか思えない。それにしても、ウ○コ臭いだけはよけいだ。
「おまえは致死量ギリギリの麻痺茸の毒を口にし、昏睡状態に陥った。ここにいるシャーロット王太子妃が口にしたのと同じものだ。(こいつはゴキブリ並みの生命力で蘇ったみたいだがな)シャーロットが薬草を煎じてくれて命が助かったんだ」
なんか小声でゴキブリ並みの生命力が……とか聞こえた気がするけど、私も大人ですからね。聞こえなかったふりをしてあげます。後で頭痛薬一年分進呈して差し上げましょう。ふん!
「……薬草」
一瞬納得がいかなそうな顔をしたアナベルだったが、次に言ったダニエル王の言葉に顔色が変わった。
「シャーロットと無理心中を謀ったとテレジアから聞いたが、それは真か」
「ちがッ!私は麻痺茸の毒が入っているとは知りませんでした。テレジア様から睡眠薬だと粉薬をいただきました。シャーロット様を眠らせて、その隙にアダム様の寝所に忍び込めば良いと言われたんです。もしバレた時に疑われるといけないから、私のグラスにも入れておけと言われ、一口くらいなら飲んでも支障はないからと」
なるほど、万が一眠りキノコの胞子でも私には効かないんだけどね。
それにしても、私以外の妃も夫人も娶らないって宣言したのに、まだ夜這いをもくろむとか、自分は例外になれるとでも思ったんだろうか?それとも純粋にアダムが好きで……とか?
ム……、近寄んなよ。
私はアダムの前に立ってアナベルを威嚇する。まぁ、アダムのが頭一つ分飛び出しているから隠せないんだけど、アダムが減るから見るなよ!という気持ちをこめて睨みつける。
「おまえは……昔の……ライラの出来事を知らんのか」
ライラ……、アダムを襲って筆おろしさせちゃったっという、アダムのトラウマの元凶か?!
本当のトラウマの元凶は前世の私なんだけど、そんなこと知らない私はアダムを気づかうようにアダムに寄り添い手を繋いだ。
「……存じております。あれは未成年であったアダム様を襲ったからの処分であって、成人した今、同意であれば何も問題は……」
「同意って、無理やり媚薬盛って勃たせて突っ込むことが同意なの?」
「ロッティ?」
「男はさ、同意なんかなくても擦れば勃つんだよ?何をもって同意って言ってるわけ?!自分はか弱い女だから?どんな状況であろうとハメれば合意だって言いたいの?それとも、アダムがあんたのこと抱きたいって思っているって言うの?うちらの結婚式の時のアダムの宣誓聞かなかった?今現在、アダムは私以外の女はいらないって言ってるの!アダムの相手は私!一晩だって貸してあげないよ。もったいない!」
私が鼻息荒く言い切ると、アダムは少し諦めた感じに見えなくもないがおおよそ同意したように頷いた。
「エミリヤも自分の言いたいことをしっかり主張する女だが、こいつはまたカタバミの種みたいな女だな。ポンポンポンポン弾け飛ぶ。アナベル、おまえは王太子妃に毒を盛った。それは万死に値する。しかし、テレジアの命令とあれば、減刑の余地はある。テレジアの命令だと認めるか?」
アナベルはジッとアダムを見ていたが、諦めたように項垂れると「はい」と一言発した。
こうして、テレジアとアナベルは後宮から出て、辺境の修道院へいくこととなった。テレジアは後宮を去る際に置き土産を置いていった。ミランダ第三妃の今まで行ってきた拷問の記録書だ。腕を折られたり爪を剥がされた侍女達の診断書も添えられており、それどころか、数人の行方不明になっている侍女達がミランダの逆鱗に触れた為に殺されていることも、その死体の遺棄場所すら記されていた。
実際にその場所から白骨化した遺体も見つかっており、ミランダは犯罪者として裁かれ、テレジアとは違う、より北にある修道院へ送られることになった。ダイアナ夫人はテレジアがいなくなったことにより降嫁を希望し、ひっそりと後宮を後にした。
事実上、後宮解体。
スザンナはダニエル王の元に帰ってきて、エミリヤと仲良く後宮でお茶会を催すことが多くなり、私もちょこちょこ参加させてもらっている。
そしてエミリヤに頭を下げられ、ロザリーはエミリヤの護衛に戻った。なんと、エミリヤとロザリーは恋人関係だったらしい。
同性愛に全く偏見のない私は二人を祝福し、同性結婚を認めるようにとダニエル王に毎晩書をしたためた。頭痛薬入りの匂い袋を合わせて。スザンナにお願いして、毎晩枕の上に置いてもらっていた。
半年続けた結果、ダニエル王は同性結婚を認める宣誓を全国民に通達した。
そしてエミリヤはロザリーと結婚することとなり、ダニエル王の妃はスザンナ一人となり、後宮は更地に還された。その広大な土地に薬草園を作る計画をしているのだが、いまだにダニエル王から許可は下りない。
そして私、十六歳の誕生日を明日むかえますが、いまだにバリバリの処女である!
アダムとはラブラブなんだよ。会えばチュッチュッしてるしね。でもね、アダムったら頑固でさ。私が十八になるまではHはしないって言うの。まだ身体が成熟してないから、子作りは私の身体に負担だって言うのよ。
というわけで!
試作に試作を重ねて作っちゃいました、コン○ーム!ちなみにダニエル王に試作品は試してもらったよ。
十八なんか待ってられないよ。明日、これを使って、いざ!めくるめく官能の世界へ!
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