第72話 騎士団長ガッツのお話し
【騎士団ガッツ】
「団長、準備が整いました」
「ヨシ、あの馬鹿国王を串刺しにして、この国を平和な国に変えるのだ」
新国王になってからこの国はおかしくなった。いや、前国王が病に倒れ、アホのセバスチャン王子が国政についてからだな。そして国王になってからは拍車がかかり、遂には王都市民が悲鳴を上げ始めた。
「国王のいる場所は分かっているな」
「「「はい」」」
俺の掛け声に国防騎士団百名が集まっている。
国王に付く親衛隊、薔薇の騎士隊は頭の中が薔薇色のアホ集団だが、隊長のアホダインは、俺と同じ剣豪ギフトを持つ国内でも屈指の剣士だ。アイツの相手は俺がやらねばな。
ヤツとは国内の大会で何度も対戦し、勝ちも有るが負けもある。ヤツのエストックが繰り出すローズラッシュ。アレを出されたら、一瞬で蜂の巣になる。
「俺たちで国を変えるのだ! 行くぞ!」
「「「はい!」」」
◆
王宮に入り、国王の寝室を目指す。あの馬鹿国王は昼まで寝室から出てこない事は下調べで分かっている。
無駄に飾られた豪華な廊下を走る。朝の王宮に人は少ないが、それでもすれ違うメイドはおり、静かだった王宮の廊下に、俺たちが走る足音と甲冑が擦れる金属音、それにメイドの悲鳴が混ざる。
「この先だ!」
あと角を二つ曲がれば国王の寝室につく。しかし俺たちの走る前に仁王立ちの少女が立っていた。
なぜ王宮に子供がいるのだ?
身丈は百五十センチもなく、長いツインテールに、幼さが残るが端正な顔立ち。その見た目から十歳ぐらいにしか見えない少女だか、、両方の腰にぶら下げている剣が、この
「あんたらさ、クーデターなんか止めて家に帰りな」
ほう。俺たちがクーデターを起こしている事を知り、俺たちの前に立つのか。
「娘、我々は本気だ。怪我をしたくなければ、そこをどけ!」
剣を抜き、大きく振るう。剣風が飛び、娘のツインテールが風に靡く。俺の剣気に当たれば、大の大人も腰を抜かす。しかし、この娘は不敵に笑った。
「ここから先に進みたいなら、オレを倒して進むんだな」
ふむ、中々に面白い娘だ。
「貴様ら、何をしている!」
甲高い声が廊下に響く。チッ、面倒なヤツが現れやがった。一見なよなよとした優男。アホダインだ。
「なに捕まってんのさ、レオノーラさん」
レオノーラ? アホダインの方を見れば、彼の後ろにいる五人の騎士。うち二人に腕を抑えられている美女がいた。麗しのレオノーラ殿だ!
「ア、アホダインッ! レオノーラ殿を解放しろ!」
「ふん。ボク様のプロポーズを振った、愚かな女を見つけたのでね。この後にじっくりとお灸を据えてやるのだよ」
「き、貴様がレオノーラ殿にプロポーズだとぉッ!」
俺が剣の切っ先をヤツに向けた瞬間だった。
目の前の娘のツインテールが揺れ動くと、アホダインと五人の騎士が、気を失い廊下に倒れていた。
「レオノーラさん、隠れててって言ったのに」
「すまない。隠れる前に見つかってしまったのだ」
「のだ、じゃないよ」
この娘とレオノーラ殿は知り合いのようだ。しかし、この娘は何者だ? この俺が残像しか見る事しか出来なかった。
「ヨシ、仕切り直しだ。この先に行きたくば、オレを倒してからにして貰おう!」
「レオノーラ殿、なぜ王宮に?」
「おい、コラ、おっさん! 無視するな!」
「久しぶりだな、ガッツ騎士団長」
「レオノーラ殿、消息を断ったと聞いていた。今まで何処で何をしていたのだ?」
「だから、オレを無視するな!」
「ふふ、ここでの立ち話しも色々と面倒だ。ガッツ騎士団長、私が新たに仕えた国に行って話をしようじゃないか」
「レ、レオノーラさん、この場はオレが……」
「新たに仕えた国とは?」
「シルフィ!」
レオノーラ殿がそう言うと、何も無い空間から少女が現れた。
「早かったですね」
「騎士団をアマノガワ王国にご案内してくれ」
「分かりました」
「待て待てシルフィっち! お前ら、アマノガワ王国に行こうって言うなら、このオレを倒して――――」
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