第73話 街の声 ―2

【引っ越してきた幼女とおばあちゃん】



「今日も元気ねぇ〜セリナちゃん」


「うん! おばあちゃんも元気だね!」


「クスノハ様が連れてきてくれたお蔭だねぇ〜」


「あたしもルミアーナ様が連れてきてくれたから元気になったの!」


「そうだねぇ、そうだねぇ。セリナちゃんは今日も公園に遊びに行くのかい?」


「うん! あたし公園だ〜い好き! ブランコも滑り台も、お砂場も、ぜ〜んぶ好き!」


「気を付けて遊ぶんだよ」


「は〜〜〜い」





【引っ越してきた奥さん】



「奥さん、今日も綺麗ね」


「フフフ、奥さんも綺麗よ」


「王都から逃げられるって聞いて、来てみたけど」


「ホント、最初は狐につままれた様な話で、それでもあの国からは逃げたかったから来てみたけど」


「ここのお住まいの居心地のいいこと」


「蛇口をひねると綺麗なお水が出るし」


「おトイレは凄く清潔だし」


「綺麗なお水のお風呂に毎日入れるし」


「石鹸に、シャンプー、コンディショナーって最高よね」


「トドメはあまの水よね!」


「肌はスベスベで、小ジワも消えて」


「あの化粧水を使ったら、化粧油とかもう使えないわね」


十日とおかで帰れるって言ってたけど……」


「「帰りたくないわね〜」」





【引っ越してきたクラスメイト】



「国王様が、あのリオン・・・・・って本当なのですか?」


「はい。でもあのリオン・・・・・とは別人っていうか、めちゃめちゃカッコ良かったですわ!」


「そうなんですわ! 私、お声をかけられちゃって、どうしましょう」


「あなたには、サセタ神様がお決めになられた婚約者フィアンセがいらっしゃるではあらませんか」


「ん〜、少しもの足りないのですわ。夜の方は特に」


「「まあ!」」


「ああ〜、トーマ様。私めもその末席に連ねさせて下さいまし」


「「トーマ様ぁぁぁぁぁぁ」」





【引っ越してきた冒険者ギルド】



「マスター、アマノガワ国王からの依頼なんですけど、どうしますか」


「やるしかねえだろ。冒険者あいつらも暇を持て余しているしな」


「でもマスター、討伐モンスターがピンキリで、ヤバいのも出るみたいですよ」


「第三外壁内の魔物討伐か。しかし、このアマノガワ王国ってのはどこにあんだよ。そんな国、聞いたことねえぞ」


「ルミアーナ様が嫁いだ国ってことと、クスノハ様が剣聖様で、シルフィ様が大賢者様、そして国王のトーマ様が超イケメンってこと以外はほとんど分かっていません」


「ふん、イケメンの国王なんてろくなもんじゃねえぞ。それに国王はまだ若いんだろ。大丈夫かこの国は」


「マスター!? この国の凄さが本当にわからないんですか!? アホですか! バカですか! 一億回死んでください」


「う、うっせえよ。確かに便利なところはあるけどよぉ、そんだけだろ?」



(この腐れ脳筋。完璧な上下水道を持つ都市が、大陸に幾つあると思っているのよ。それにゴミ袋を各家庭に配り、ゴミ袋の回収の日も各地区毎に決まっている。そして何より――――)



「マスターはさっさとアザトーイ王国に帰って下さい。私はギルド支部としてここに残ります」


「なっ!? お前が帰らなかったら誰が受付をやるんだよ」


「他にも受付嬢はいるじゃないですか」


「いや、お前以外の受付嬢はこの国に永住するとか言って辞表を持ってきやがった」


「えっ!? マジで!? 私出遅れた!?」


(せ、先輩たち最近見かけないと思っていたらぁ!)


「マスター」


「なんだよ」


「私、一身上の都合でギルド辞めます!」 


「な、なに言ってんだお前!?」


「どうしますか? 私辞めますか? それともここで・・・仕事を続けますか?」


「わ、分かったよ。冒険者あいつらの面倒をしっかりみてくれよな」


「はい!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る