第23話 街造りは上水道と下水道から
「さてと」
朝食を食べ終えた俺は、家の外に出て辺りを見渡した。
俺が更地にした旧開拓村は、ざっと三百メートル四方が荒れ地で、その先には高さ五メートル程度の土壁で、囲まれている。
「先ずは下水道、次に上水道、それからルミアーナ様に頼まれたサセタ神様の聖堂か。サセタ神様にはメチャメチャお世話になっているから気合い入れて作らないとな!」
昨夜にルミアーナ様達と描いた街造りの青写真を元に、俺の錬聖で街を造る事になっている。
地形把握のスキルで、この土地の東側1キロ程の所に川がある事は把握していた。下水道と上水道はこの川を利用する事になる。
先ずはこの土地を北から南に横断するように、地下に高さ五メートルの下水道トンネルを成形する。錬金術と違い、成形術は等価交換をする訳ではないので、楽な作業だ。
下水道トンネルは緩やかな傾斜を付けながら川の下流に繋げるのだが、土壁の外は魔物だらけの秘境だ。俺一人で外に出たらあっという間に死んでしまう。
クスノハ様の護衛待ちなのだが、女の子達は先ほど俺が出した下着類の試着に夢中になっていて、外に出てくる気配が全く無い。
「上水道を作るか」
上水道は現代の知識を利用して、高さ一五メートルの重力落下式の給水塔を作る事にした。
給水塔への水の供給は、魔石による水供給も考えたが、シルフィ曰く、一都市分の水供給をするには魔石では無理との事だった。
そこで大掛かりだが、揚水には藤原式揚水機を作って見る事にした。藤原式揚水機は千葉県に遊びに行った時に見て記憶に残っている。
知識も無いソーラーパネルを再現した錬聖スキルなら、藤原式揚水機も作れる筈だ。
因みに藤原式揚水機とは、高さ一五メートルの櫓を作り、水車とエレベーターのようなベルト式の水桶を組み合わせ、一五メートル上まで水を組み上げる超大型の揚水水車である。
土地の北側に行き、異空間収納からシルフィが道中に風魔法で薙ぎ倒した木の山を出して、錬聖の素材とする。
「錬聖、給水塔と藤原式揚水機!」
山のようにあった木材が消えて、高さ一五メートルの煉瓦作りの給水塔と、それに繋がる藤原式揚水機が完成した。揚水機と給水塔の間には浄水槽も作り、殺菌・消毒を行う。
「おおっ! 凄え存在感!」
給水塔の高さもそうだが、藤原式揚水機の存在感が半端ない。
給水塔の上部は見晴らし台にしてみた。森の様子も見れるし、ここに人が住み着けば、憩いの場やデートスポットに成るはずだ。
更に土壁の上部を成形して、中側に通路、外側に水路を作る。給水塔のオーバーフローした水が水路に流れるようにし、今後、追加で給水塔が必要になった時は、この水路から水を供給する。
今のままでは、ただのオーバーフローした水になるので、その対策も当然考えてある。
錬聖スキルで土壁の上に上がれる階段を作り、土壁の上まで上がる。
「錬聖、外堀!」
土壁の森側に深さ五メートル、幅一〇メートルの外堀が出来上がった。土壁の上部に作った用水路から、外に向けて等間隔に水が流れ落ちる突き出しを作る。用水路の一定水位を超えると、この突き出しから外堀に水が落ちるようにする。ここに水が貯まれば魔物からも襲われにくくなる筈だ。
上水道は、川の上流から用水路を作って水を引き込む。用水路と揚水機の間に浄水溜まりを作る。浄水溜まりは灌木や落ち葉、小さな虫等を網目を使って除去する役目となる。砂や塵は上の浄水槽で沈殿させるので、ここでは粗いメッシュの網で十分だ。
「よし、給水塔から家までの配管を繋げよう。錬聖、埋設配管!」
給水塔から土壁で覆われたこの土地の中央に建っている我が家に上水道を繋げる。
概ね準備は整ったので、後は川の上流と下流に行って、用水路と下水道を繋げるだけだ。
「なんですか、これは!?」
「ひえ〜、デカい水車だ!」
「何を作ったの、お兄様は!?」
家から出てきたルミアーナ様、クスノハ様、シルフィ。藤原式揚水機の圧倒的な存在感にびっくりしている。
「オ―――いッ!」
俺は土壁の上から大きく手を振ってみせた。
―――――――――
藤原式揚水機
千葉県HPより参照しました。
https://www.pref.chiba.lg.jp/kouchi/shiryoukan/rekishi/mizuguruma.html
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます