第16話 痒いところはありませんか?
「トーマお兄様! 凄い泡立ち、香りも凄くいい!」
「痒いところはありませんか〜?」
「アハハ、何それ?」
「俺のいた世界では、理髪店でシャンプーする時に聞かれるんだよ」
白いバスチェアに、白いバスタオルを巻いてシルフィが座り、俺が後ろからシルフィの髪の毛を洗っている。
「それじゃ、お湯を掛けるからな。目を瞑っつておけよ」
「うん」
何度かお湯を掛けて泡を落とす。
「次にコンディショナーだ。髪に馴染ませるだけだから、自分でやってみな」
「う、うん」
シルフィはポンプをプッシュして白いコンディショナーの液体を手のひらにのせた。
「それをヘアオイルと同じ感じで髪に馴染ませて、最後は洗い流す」
「これも良い匂い! うわっ、サラサラになっていく! なにこれ!」
コンディショナーの甘い香り。女の子が付けると何故かグレードアップした香りになるのが不思議だ。
「じゃあ、あとは体を洗うだけだから、俺は出るぞ」
「えっ、あ、え、えと……、せ、背中。私は背中に手が回らないの!」
「い、いや、しかし――って、オイッ!」
俺が言い訳をする間もなく、シルフィは巻いていたバスタオルを緩め、白磁のような白く透明感のある綺麗な背中を俺に見せる。
前とお尻はバスタオルで隠れているからセーフなのか?
「なあシルフィ、無理していないか? 家を出る時に悩んでいたろう?」
「あ……う、うん」
「嫌いな俺とこんな事をしてさ。何か無理に頑張っているんじゃないかと」
「だ、大丈夫だよ! トーヤお兄様こそ無理しているよね」
「俺?」
「今日、ルミアーナ様をかばって矢に当たったよね。ルミアーナ様の力が無かったら死んでたんだよ。何であんな事をしたのよ」
あの時か………。
「体が勝手に動いていた。理由は……嬉しかったから……かな」
「嬉しかった?」
「向こうの世界で、酷い振られ方をしたからね。こっちで可愛い女の子達と一緒にいられて嬉しかったんだ」
「……それだけの理由で?」
「俺にはそれで十分な理由だよ。それぐらいに皆んなといる時間が楽しいんだ」
「……私とも?」
「当然だろ。シルフィは何しろ俺の義妹だからな」
「えへへ。さあ、お兄様! 背中を洗って、洗って」
シルフィに急かされ、俺はポンプから泡を出して、シルフィの背中を絹の様な滑らかな肌に手をあてた。
前の人生も含めて初女性の生肌タッチ。心臓がドドンと雄叫びをあげている。
「アん」
シルフィが妙な声をあげる。
やめれ! 俺のアレが限界突破するだろ!!
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