第17話 【国王様゛のお話】―3

「国王陛下、1〇コインショップの件でお話があります」


 謁見の間にはサディスティア王国の外務大臣が待っていた。酷く醜いキモデブだが、俺様に美味い物を持ってくる良きヤツだ。


「うむ。そろそろ開業と聞いたが」

「はい。明日より各都市で一斉オープン致します」


「しかし、銅貨十枚の商品を売って儲かるのか? そんな物を誰が買うんだ?」

「庶民でございます陛下。多少の質が悪くても庶民は安い物を欲しがるのです」

「ハッ、庶民とは実に浅ましい者だな。俺からしたらだらない店だな」


 まぁ庶民が何を買おうが俺様には関係ない事だな。


「それで陛下お願いが御座います」


 脇にある白い箱をなでながらニヤけるデブ大臣。ちっ、足元を見やがりやがって。 


「願いとはなんだ」

「簡単な事で御座います。女性労働者のニ四時間勤務を認めて頂きたいのです」

「なんだ、そんな事か。かまわん、かまわん。それよりその箱を早くこちらに渡さぬか」


 脇に置かれた箱に目を向ける。このデブと謁見するのはこれの為だ。くだらない店や女の働き口の事など些事に過ぎない。



「はい、どうぞ此方をお納め下さい」


 デブ大臣が俺の元に来て、箱を手渡した。この重さなら中には白金貨が百枚は入っている。


「いつも悪いな」

「いえいえ、お金をお貸しするぐらい大した事ではありません。ところで最近、見目麗しいルミアーナ王女殿下のお姿が見当たりませんが、如何されたのですか?」


「フン、貴様もルミアーナを狙っていたのか?」

「い、いえ、滅相も御座いません。ただ、王都、いえ、アザトーイ王国全土にてルミアーナ王女殿下の仁政をよく耳に致しましたが、最近はそのような声を聞かなくなったものでしたので、王女殿下がご病気にでも成られたのかと心配になりまして」


「フン、何が仁政だ。孤児院や低所得者、母子家庭なんかに税金を使えだの、医療や下水道なんかにも税金を使えだの、口うるさい小娘は国外追放にしてやったわ!」

「国外追放ですか!? いやはや、それはそれは、随分と思い切った事をされましたな。では、同じくお姿の見えないロックフェラー内務大臣もでしょうか?」


「ロックフェラーは更迭した。今は内務大臣の席は俺が兼任している」


 ロックフェラーの奴も俺様の女になればいいものを、馬鹿な女だ。


「何をニヤニヤしている」

「い、いえ、そうそう、陛下にはわたくし個人からの贈り物が御座います。此方をどうぞ」


 サディスティア王国のキモデブ外務大臣が、鞄から取り出したのは白い粉が入った小瓶だった。


「此方は料理やお酒などに振り掛ける旨味調味料で御座います。貴重な物ゆえ陛下の分しかご用意できませんでした」

「ほう、旨味調味料とは確かに珍しいな」


「はい。その名をアッヘーンと申します」




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【作者より】

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