第3話 国王様はセバスチャン?

【学院一の美少女】


「国王代理、失礼します。ルミアーナでございます」


 わたくしは、五年前から床に伏せている国王に代わり、国王代理を勝手に名乗りあげた第一王子にして腹違いの兄であるセバスチャンに呼ばれ、執務室の扉を叩いた。


 世の中のセバスチャン様には申し訳ございませんが、国王の名前がセバスチャンでは、執事バトラーと勘違いされてしまいますわね、オホホ。


「隣国サディスティアの第二王子との縁談を進めさせて貰うぞ。今日のサセタ神の啓示では、ツンデーレ男爵家の肉達磨であったと報告があった。王家には全く持って相応ふさわしくない相手だ。お告げの婚約は破棄しろ」


 わたくしに何の権限があって命令をするのでしょうか。


「嫌ですわ」


「なにィ!」


「わたくしは肉達磨なリオン様を、この世の誰よりもお慕い申し上げておりますから。オホホ」


「バカを言うな! あんなデブのどこが良いと言うのだ! それにお前にはこの国を守る責任があるのだ! 隣国サディスティア王国が私の国にどれほどの援助をしてくれているのか、理解しているのか!」


 我が王家は小国のくせに見栄っ張りで、虚栄心の塊です。


 義兄が国政を仕切る様になってからは酷いものです。義兄は一流国家を真似て贅に溺れ、自国の税金を無駄な享楽と美食に注ぎ、グレートファング帝国やサディスティア王国から多額の借金をしてまで道楽に明け暮れる無能ぶりです。


 更に無能な高官は無能すぎる義兄をだまし横領祭り。このままでは、我が国はあと数年を待たずして滅亡いたしましょう。


 わたくしにも思うことは多々ございますが、今はその時ではございません。


 わたくしなりに、孤児院への寄付や、雇用紹介所で行われる炊き出しへの寄付、そして酷い労働環境にある女性労働者への支援活動。


 二年前にはわたくしの活動も実を結び、女性労働者の給金等は改善の兆しが見えました。


 しかし義兄の愚策により、女性労働者に労働税が加わり額面の半分近くを税金で搾取されてしまいました。


 そして、その税金で贅に溺れる義兄。終わってますわ。


「援助? 多額の借金の間違いではありませんか? オホホ」


「だ、黙れッ! これは国王命令、いや、勅命であるッ!」


「残念ですが、わたくしはお兄様を国王とも、国王代理とも認めておりませんわ。それに、国王がセバスチャンでは笑われてしまいますわ。オホホ」


「き、き、貴様……い、言ってはならぬ事を……」


 執務席に座るお兄様の顔が紅潮していますわ。あと一押しですわね、オホホ。


「お兄様には玉座よりも、執事服・・・の方がお似合いですわ。オホホホホホホ」


「黙れッ、黙れッ、黙れェェェッ! 一度ならずニ度までも! 俺の勅命にも従わない貴様は、貴様は……」


国外追放・・・・にでも致しますか? オホホ」


「そうだッ! 国外追放だッ! 二度と俺の前に姿をあらわすなッ!!」


 国外追放。そのお言葉を待っておりましたわ、お兄様。


 サセタ神様から授かった伝説級のギフト。そして私の進む道にアザトーイ王家の姓は不要ですわ。


 キモデブ、豚デブ、百貫デブと、良いとこ無しのリオン様との婚約も、わたくしの貞操ロストバージンも、わたくしの覇業の為には、甘んじてお受けいたしますわ。


 オホホホホホホホホホホッ!





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