Ⅱ
シキはすぐに視線を逸らす。
「それであんた、今度は魔法学園に通うとか、何を考えているのかい」
リシアは、額に手を当てながら、困った表情をする。
「別にいいだろ? 暇つぶしだよ、暇つぶし」
シキはアリスの入れてくれた紅茶を飲みながら言った。
「いいんじゃないかしら? どうせ、シキ君は家に居たって退屈だろうし、シキ君の年頃なら普通学園に通っているはずよ。お母さんもそれを許したら?」
エミリアがシキの援護をする。
「そりゃあ、わかるけどねぇ……。エミリア、こいつだよ。こいつが普通、学園になじめると思っているのかい? それこそ癌を体内に注入するようなものだよ」
「誰が癌だよ……」
「そうだけど……」
「ちょっと、エミリアさん? そこ、納得しないでもらえる? 傷つくんだけど……」
シキは、二人の方を見て言った。
「あ、でも、大丈夫ですよ。シキに敵う人なんていないと思うんですが、一応、私も学園に通う予定ですし……」
アリスが言った。
「いや、あんたは一応、貴族だろ? こいつは一般人。馬鹿しかやってこなかった不届き者だよ。あんたの名に傷がついたらどうするんだい」
「それは別に……。私、気にしませんけど……」
「それに、こいつが勉強や学園のルールを守るとも思えない。下手すれば、一日中、眠っているか、ぐーたらしているよ。それでもいいのかい?」
「お母さん、いいすぎ」
エミリアがリシアを止めようとする。
「おい、俺はそこまで信用ないのかよ……」
シキは、リシアに刃向かう。
「あるわけないだろ! 信用してほしければ、しっかりと金払って、生活しろって、言ってるんだよ‼」
「ああん⁉ 別にいいだろ? これが俺の歩く道ってもんだ!」
「それがいかんと言っているだろうが! このはげ!」
「はげてねぇ! テメーに言われたくねぇーよ。妖怪くそババア!」
「だーれーが、妖怪だぁああ!」
「おめーの事だよ!」
また、二人が喧嘩を始めたと思うアリスとエミリアだった。
二人が取っ組み合いをしている中、二人は話をする。
「それで、アリスちゃんは、どうして、シキ君を選んだの?」
「そうですねぇ……。何と言いますか、ああいう性格が私にとって一番いいと思って、だって、あんなに面倒な人他にいないでしょ?」
「ああ、それは分かるわね。私もお母さんが酒場にいなかったら面倒なことがあるし……」
二人は意気投合する。
「学園はいつから通うの?」
「明日からです」
「明日かぁ……。なんだか、急ね」
「まぁ、お姉ちゃんが色々と、手配をしてくれましたから」
「ああ、イリーナさんね。でも、彼女も大変よね。あれで、貴族の当主でしょ。若いのに気苦労が多いわね」
「はい……」
家はめちゃくちゃになり、その後、片づけるのに苦労した。
× × ×
夕方、シキは不服そうに慣れない服を着ていた。
「おい……。マジで、これ着ていかないとダメ?」
シキが着ていたのは、いつもの服ではなく、学園の制服だった。
「でも、とても似合っているわよ」
「そうかぁ? 堅苦しくて、気持ちわりぃーんだが……」
アリスにそう言われると、シキは服やズボンを触りながら、嫌そうな顔をする。
慣れないのも無理はない。
「私だって、学園に行くときは、制服着ているのよ。みんな同じよ」
「面倒くせぇ……。これ、お前のねぇーちゃんの嫌がらせじゃないのか?」
「さぁ? それはどうかしら?」
アリスは、自分が作った料理をテーブルに並べる。
「ほら、料理できたから服、着替えてきたら?」
「お、おう……」
シキは自分の部屋に戻って行った。
「ほんと、ああいうの、嫌いなのね……」
アリスはポツリと、口にした。
現在、アリスはシキの家に居候中である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます