Ⅶ
「この尼ァ! 調子に乗りやがって!」
リーダーの男はイリーナに刃物を向けて、振り下ろしてくる。
「お姉ちゃん!」
アリスはイリーナに体当たりして、突き飛ばす。
「アリス!」
刃物は、アリスの左腕に刺さる。
「グッ!」
刺さった傷穴から大量の血が流れだし、アリスからは痛みからくる刺激が涙によって具現化される。
「このガキ! 邪魔しやがって!」
リーダーの男は、アリスの腕から刃物を引っこ抜き、今度は心臓を外さず、アリスの背中を狙いにかかる。
「おーっと、ストップ」
リーダーの男の手を止める。
「テメー!」
「お宅のお仲間さん、全員お眠だぜ」
少年は、ニヤリと笑みを浮かべながら、男を見下す。
「遅いのよ。もっと早く助けてよね、シキ」
地べたでうつ伏せになりながら、アリスが言う。
「うっせー、バーカー。誰が、お前なんかを助けるかよ。俺はただ、ここに金があるから来ただけだぜ」
シキは、アリスの方を見る。
「俺を無視してんじゃねぇ‼」
男はシキから手を振りほどき、シキは、少し交代する。
「おっと……。あぶねぇ、あぶねぇ」
男は刃物を持ったまま、負傷しているアリスを盾にする。
「オラァ! 武器を捨てねぇーと、この女、ぶっ殺すぞぉ!」
男はシキに警告する。
「だから何?」
「へぇ?」
男は、キョトンとする。
「ああ、そういう事。別にいいよ。殺したければ、殺せば? 別にその女を殺したところで、俺には何にもないし、別に興味ねぇーから」
「おい!」
アリスはシキの言動に腹が立つ。
「それよりさぁ。あんたらの金、どこに置いてんの? 教えてくれる?」
シキは、懐に持っていた黒い銃を取り出して、男に向ける。
「この女ごと、俺を撃つ気かぁ⁉」
「だったらどうする?」
「仲間じゃないのか⁉」
「さーあ、どうかな? 知り合いといえば嘘ではないが、助けるほどの関係は持ってないからなぁ」
シキは、銃を向けたまま男の話を聞かない。
「じゃあ、なぜ、テメーは、ここにいるんだ?」
「そうだな。なんとなくだ。ただ、金が欲しいだけ」
「この悪魔めっ!」
男は、刃物をアリスに向けて、振り下ろす。
「悪魔で結構、俺にとっては誉め言葉だ」
シキは、容赦なく引き金を引いた。
すると、男の持っていた刃物が姿形なく消えてしまう。
「なっ‼」
男は驚き、シキはそのまま距離を詰めた。
男からアリスを引きはがし、男の顎に銃を当てる。
「どうやら形勢逆転のようだな」
「くっ……」
男は両手を挙げて、抵抗しないという意思を伝える。
「まぁ、いいけど。とりあえず、軍には連絡しておいたから、その間、眠っていてくれ」
パンッ!
銃声が鳴り響き、男は天井ぶら下がったまま、気絶した。
「ふぅ……。終わったな」
銃を懐に戻し、シキはアリスの方を向く。
「あ、ありがとう……」
アリスは礼を言う。
「ああ? 別に助けたわけじゃねぇーよ。こいつらが持っている金が目当てだったからな」
シキはアリスの縄をほどき、それから、イリーナの縄をほどく。
「そうだ。言っておくのを忘れておいた」
「はい?」
シキは、イリーナの方を向く。
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