Ⅵ
シキは、聴覚魔法を使い、全ての音を聞き分ける。
「この音は、走っている音、地下からか?」
地下から変な音が聞こえてくる。
本来なら地下は、下水道となっており、水の音しかしない。
だが、そこを走る複数の音が聞こえてくるのだ。
「ここから近いマンホールは!」
シキは、裏路地にあるマンホールへと向かい、ふたを開けると、飛び降りる。
「ったく、こんな面倒ごと、俺に押し付けるなよな」
シキは、捨て台詞を吐くが、それでも地下水路を走り回る。
「おらぁ、テメーら! 女から目を離すなよ」
「「へい!」」
リーダーである男がそう言うと、部下の男どもが返事をする。
縄で縛られたアリスとイリーナは、部屋の片隅に座らされる。
「あなた達、一体、何なの⁉」
イリーナは、男達を睨みつける。
すると、リーダーの男が二人の方に歩み寄った。
「はははっ! お前ら、あの没落貴族のスカーレット姉妹だろ?」
「だから、何だっていうのよ」
「そうだなぁ。例えば、奴隷商会に売るのもいいよなぁ。お前ら、意外とそれなりに売れそうだし。後は、まぁ、色々とだ」
「このクズが……」
「言ってろ、言ってろ。どうせ、力のないお前らなんて、怖くもなんともない」
男はイリーナの顎を触り、睨みつけるイリーナに対して笑う。
「さて、お前ら、準備を始めるぞ!」
男の命令で動き出す部下たち。
バンッ!
と、扉が開く音がした。
「誰だ⁉」
全員がその方を振り向く。
扉の向こうから味方の男が部屋に放り込まれた。
ボコボコにされた顔や引きさかられた服、無様にやられて気絶している。
「どーも、匿名希望でーす」
部屋に入ってきた黒服の少年は言った。
「誰だ、テメー⁉」
リーダーの男が、睨みつける。
周りの部下たちの武器を取り、戦闘態勢に入る。
「だーかーらー、匿名希望だって言っているだろ? クズどもが!」
「誰がクズだ⁉」
「クズだろうが! じゃあ、訊くが、そこのお転婆娘どもをどうするつもりだ?」
「だーれが、お転婆じゃ!」
イリーナが、ツッコミを入れる。
「お前、この娘たちの知り合いか? どうやって、後をつけてきたかしらねぇーが、ここで消えてもらうぜ」
リーダーの男が言う。
「そりゃあ、こっちのセリフなんだよなぁ。店に戻ったと思えば、ああなっているし、面倒ごとには、巻き込まれるし、散々な一日なんだよ」
男は剣を抜き、イライラ感を募らせている。
「それによぉ。こっちもストレス発散したいから、あんたら、俺のストレス発散のためのおもちゃになってくれねぇーか?」
「何を言ってやがる⁉ 死ぬのは、テメーだ! 一斉にしてかかれ‼」
「「「オオオオオオオオオオオオ‼」」」
命令と同時に部下たちが少年に飛びかかる。
「はぁーあ、やってられねぇーな」
深いため息をついた後、少年は、剣を構え、死なない程度に敵を倒しにかかる。
「オラオラッ! 全力で掛かってこいやぁあああああ! 全然たりねぇーぞ‼」
少年は、ぎらついた眼で剣を振り下ろす。
「あめぇーんだよ! 俺が一人だからだって、手を抜くんじゃねぇ‼」
「グハァッ‼」
「ウエッ‼」
倒されていく部下たち。
「オラオラ! 腕の立つ奴はいないのかぁっ!」
少年の勢いは止まらない。
「何なんだ? あの化け物は⁉」
リーダーの男は、驚きが隠せない。
「どうやら、あなたの誤算は、あの子の中に眠る獣を呼び出した事よ」
「黙れっ!」
男はイリーナの頬を平手打ちする。
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