Ⅳ
そして、頭を抱えているアリスに言った。
「お前のねーちゃん。オーガやゴブリンにでも育てられたんですか?」
皿を持って、右手に持っていたフォークで、残りの肉を食べる。
あああ!
またしても、不安ばかりが募る。
「あん? 今なんて言った⁉」
イリーナが今度は少年の方を睨みつけた。
「あれ?」
少年はフォークを床に落とす。
ボコボコにされた男は気を失い、イリーナは、少年の発した言葉を聞き逃さなかった。
「お前、今、なんて言った⁉」
「え?」
少年は、獣のじみたイリーナに対して後退りをする。
「だーれが! オーガやゴブリンだぁあああああ‼」
イリーナは、少年に向かっても殴り掛かった。
「お姉ちゃん! やめてぇえええええ!」
アリスは、イリーナの暴走を止めに入った。
「あ、あの……。先程はすみませんでした……」
顔が傷だらけの少年は、イリーナに対して謝った。
イリーナは、紅茶を飲みながら一息つく。
「ふぅ……。別にいいわよ。でも、次、あんなこと言ったら分かっているわよねぇ? ただじゃ、済まさないわよ」
「は、はい!」
少年は、イリーナに睨みつけられて、背筋が凍った。
「それで、あなたのお名前を聞いていなかったんですが、なんて言うんですか?」
アリスが、少年に訊く。
「あ? そうだったな。まだ、名前を言っていなかったな。俺は、シキ・ラインハルト。この町に住むただの少年だよ」
少年・シキは、そう答えた。
「私はアリス・スカーレットです」
アリスがシキに自己紹介をする。
「シキさんは、なんであんなところに寝ていたんですか?」
「寝ていた? あなた達、どうやって知り合ったの?」
イリーナは不思議そうな顔をして、アリスに訊く。
そして、アリスは一部始終の出来事を話した。
「なるほどねぇ。それでこうして奢ってもらっていたと」
イリーナはそれを聞いて納得した。
「それで、シキ君は、この後、どうするの?」
「どうもしねーよ。ただ、家に帰って寝るだけ」
シキは、鼻をほじりながら答えた。
「アリスと同じ歳だけど、学校とか行っているの? アリスに聞いた話だと、強いらしいわね」
イリーナは、シキに興味津々だ。
「あー、別に強いとか興味ない。俺は、ただ、この街で平和に過ごしたいだけ」
「なるほど。暇ってわけね」
「あんた、聞いてた? 俺は自由に生きたいの!」
シキは、机を叩く。
「聞いていたわよ。どうせ、暇なんでしょ。なら、あなた、学校に通う気はない?」
「はぁ? なんで?」
シキは嫌そうな顔をする。
「あなたみたいな強い子を探していたのよ。どうかしら、アリスを強くしてほしいの」
イリーナは、シキに頼み込む。
「嫌だね。なんで、俺が面倒なことしないといけないんだよ。それにあんたの方が強いと俺は思うけどね」
「無理よ。私、か弱い乙女だもん」
イリーナは笑う。
「けっ、誰がか弱い乙女だよ……」
「何か言ったかしら?」
右手の拳が光って見える。
「いえ、何もっ!」
シキは、背筋をただす。
「でも、お姉ちゃん。私、一人でも大丈夫だよ。学校だって、一人でも行けるし……」
「何を言っているの? まだ、未熟者のあなたが、学校で通用するとでも? このセイブン国の魔法学校はレベルが高いのよ」
「へぇ~、あの学校ねぇ~」
シキは、何か思い出した。
「それで、なんで俺がいまさら学校へ? アリスを強くするのは分かったけど……」
「この子が落ちこぼれだからよ。魔法学園は、庶民からエリートが通う学校よ」
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