Ⅲ
「え?」
「別に構わないでしょ? 悪い人ではないんでしょ?」
「あははは……。そうですね……」
姉の威圧感には勝てないアリス。
苦笑いした彼女は、そのまま姉を連れたまま、少年の元へ案内した。
追加で肉料理を頼んだ少年は、まだ、食事に夢中であった。
そこへ、先程、外に飛び出したアリスとその姉が戻って来て、向かい側に座る。
「おい、その隣にいる女は誰だ? 俺は、お前にそれしか奢らないとしか言っていないはずなんだが?」
「違うわよ。たまたま会った、私のお姉ちゃん」
「イリーナです。妹が、お世話になって申し訳ありません」
「あー、そういうのいいから。で、それで何?」
少年は、食べる勢いを止めない。
「ねぇ、アリス?」
「何、お姉ちゃん?」
アリスはイリーナの方を見る。
すると、イリーナは、微笑んでいるが、顔が笑っていなかった。
「この人、殴ってもいいかしら? 腹立つんだけど」
やばい、そう頭に浮かんだアリスは、少年の元に行き、耳元で話しかける。
「ねぇ、お姉ちゃんがやばいから話聞いてあげて!」
「ああ? なんで? 別にいいだろ? 興味ないんだし……」
「そういう問題じゃないの。お姉ちゃん、自分の話を聞かない人は嫌いなのよ! お願い! これはあなたのためなのよ!」
「はぁ? 俺のため? 何言ってんだか。知らんぞ。姉妹喧嘩がしたかったら、外でやれ、外で」
少年は、アリスの話など相手にもしていない。
話にもならないと思ったアリスは、はぁ、とため息を漏らした。
すると、
「ねぇ、ねぇ、そこの君」
と、アリスの後ろから声を掛けてくる人がいる。
振り返ると、そこにはチャラそうな男が二人いた。
「そんな坊主とデートしなくてさぁ。俺達と遊ばない? 奢ってやるからさぁ」
面倒くさいなぁ、と思うアリス。
「結構です。私、お姉ちゃんと一緒に来ているので!」
アリスは、男の一人が方に載せた手を払いのけると、男達の方を振り返る。
「お姉ちゃん?」
男達はイリーナの方を見た。そして、アリスの方を見る。
「そうです。だから、結構です!」
はっきりと断るアリスは、プクー、と頬を膨らませながら言った。
「ふっ……、ハハハハハハッ! お姉ちゃん⁉」
「どう見ても君の方が若いし、俺達の好みぃ。あんなおばさんとではなくて、俺達と遊ぼうぜ」
「そうそう、そっちの方が絶対、楽しいって」
やーばい。言っちゃったよ、言っちゃったよ。この人達……。
アリスは、恐る恐る後ろを振り返る。
そこには姉の姿ではなく、鬼が潜んでいた。
「ねぇ、あなたたち。今、なんて言ったかしら?」
終わった。この人達、命がない。
そう、脳裏に走った。
「ああ? あんたに用はないんだよ!」
「そうだ。おばさんは黙ってろ!」
ガンを飛ばす男達。
だが、イリーナは不敵な笑みを浮かべて立ち上がり、男達の方へ歩み寄る。
ああ、これはお店に被害が及ぶんじゃないの?
アリスは淡々と慌てだす。
「だーれがっ! おばさんだぁあああああ⁉」
イリーナは、男の顔面を思いっきり殴った。
男はカウンターの方まで吹き飛び、店内が壊れ始める。
「ヒィイイイイイ! もう一人の男が怯え始める」
「あんたら、誰がおばさんだって?」
指をボキ、ボキ、と鳴らし、男の前に立った。
「あ、あの……。お、お助け……」
男は怯えながら助けを求める。
「ふふふふ」
イリーナは、男の顔面を右手だけで握り、そのまま床にたたきつけた。
「おらぁ! テメーの血は何色だぁあああああ!」
店内に響き渡る男の叫び声と殴る音。
客は怯え、アリスは、あ~あ、やっちゃった。と頭を抱えた。
食事に夢中になっていた少年は、チラッとその方へ視線を向ける。
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