3 可愛い子には……負ける!

  大きな魔導の波動に慌てて帰宅すると、養い子が一人増えていた。魔導書を掲げ胸を張る養い子の少年。

「大丈夫、魔力の受け渡しは完了したから!」

 無言で拳骨をかました。頭は良いはずなのに先走る。馬鹿可愛いが、可哀想だ。涙目の少年の背から少女が顔を出した。

 養い子に召喚された少女が俺を見上げる。上目遣いは卑怯だろ。異世界から喚ばれた彼女の理由は知れている。

「お前は先に俺に相談しろよ」

 魔力過多は命を燃やす。だからこそ対策をしているところだった。だのに人が本の山に埋もれている間に事が動いてしまった。だが溜息ひとつ、俺は少女に笑顔を向ける。

「で、その子の名前はなんて言うんだ」

 不安そうな我が子達の顔がほころんだ。


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