第十一話「宮廷生活一日目の朝」

「ん……」


 結月は眠たい目をこすりながら、ゆっくりと目を開いた。

 見慣れない天井に横を見てもふすまがあるだけ。

 いつも隣で寝ている育ての親はどこだろうかと探すが見当たらない。

 ここで昨夜の出来事をようやく思い出してきた結月は、頭を整理するように考え始めた。


(起きたら赤い絨毯の広間にいて……たくさんの人たちに囲まれて……たくさん人が出てきて、婚約者…………婚約者っ!)


 がばっと飛び起きると、今が現実なのかそうでないのかをもう一度よく考え、よくある頬をつねるということをおこなってみた。


「いたっ!」


 結月は痛みで現実だと確認したあと、ひとまず外に出られるように着替えをおこなうことにした。


 着替えを終えたあと、すーっとふすまを開けて外の様子をうかがってみた。


「おはようございます。結月様」


「ほわぁっ!」


 結月は自分でも可愛くない声が出たと思った。

 横には正座をして頭を下げている美羽の姿があった。


「微かに物音が聞こえたため、ご起床なさったのかと確認に伺いました」


「お、おはようございます…」


 結月は同じく正座をして頭を下げながら挨拶をした。


「朝食が出来ております。お持ちいたしますので、お部屋の中でお待ちくださいませ。」


「あっ! 運ぶのくらいはお手伝いします!」


 結月の言葉を聞いた美羽は真剣な顔で制止した。


「なりません。朔様には結月様を『許可なくこの部屋から出さぬように』言われておりますので」


「は、はい……」


 申し訳ございませんと一言付け加えると、美羽は足早に結月の前から去っていった。

 結月は言われた通りに部屋に戻ると、正座して朝食を待つことにした。


(許可なく出られないって、私……軟禁されているの……?)


 ふと浮かんだ疑問に思いをはせながら、その時を待った。



 朝食を終えたあと、続いて永遠(とわ)が結月のもとを訪れた。


「おはようございます、結月様。朔様がお呼びですので、ご案内いたします」


(あれ?さっき挨拶したのに……。あ……、もう一人の子だったのか。まだ見分けがつかない……)


 双子の見分けに苦戦しながら、朔のもとへと急いだ──

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