第十話「宮廷へようこそ」
結月は驚き、言葉も出なかった。
涼風家の屋敷も広いとは感じていたが、宮廷というだけあり、一条家の屋敷は豪華であった。
屋敷にいる人数も違う。そして、今ようやく夜になっていることに気がついた。
「結月様、どうなさいましたか?」
美羽が尋ねる。
「いや……なんというか……こんなところで住めるのかなって…」
「結月様にはこちらの屋敷は狭かったでしょうか……」
首をかしげながら純粋な目で結月を見つめる永遠(とわ)。
結月は慌てて手を顔の前で左右に振りながら、必死に否定をした。
「違います、違いますっ! 逆です! 広すぎて大丈夫かなと……」
「そうでしたか。安心しました。朔様には結月様のご要望はできるだけ叶えるようにと仰せつかっておりますので、何かあればなんなりとお申し付けくださいませ。」
少々ほっとしたような表情を見せた永遠(とわ)だが、すぐに真面目な顔に戻り、軽くお辞儀をしながら結月に伝えた。
広い庭の真ん中にかかっている赤い橋を渡ると、先ほどの豪華さとはまた違った落ち着いた色合いの場所に着いた。
木目の綺麗な床の廊下をしばらく歩くと、右手に小さめの庭が見えてきた。
庭には砂利が敷かれており、奥のほうには池のようなものが見える。
綺麗な庭だと結月が思っていると、永遠が口を開いた。
「お待たせいたしました。こちらが結月様のお部屋でございます」
そういって、通された部屋は落ち着いた和室の部屋だった。
結月はなつかしさを感じた。
(あ……この雰囲気……涼風家の屋敷に似てる……)
「生活に必要なものはそろっているかと思いますが、もしご入用のものがあればおっしゃってください。」
「はい。ありがとうございます」
結月がお辞儀をすると、ふすまを静かに美羽が閉めていった。
しばらくの間、結月は天井を見上げ考え込んでいた。
(本当によく似ている……。涼風の屋敷に……。お父様……お母様…………)」
部屋の明かりがぼうっと照らし、結月は眠気に襲われる。
丁寧に敷かれた布団の横には、これまた丁寧に畳まれた着物がおかれていた。
お言葉に甘えて、結月はその着物に袖を通して布団に入った。
一気に眠気に襲われ、そのまま意識を手放した―
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一方、朔と守り人たちは会議をおこなっていた。
「東の森にも妖魔の反応を感じた」
「綾城のすぐ近くっ!」
朔の言葉に蓮人が椅子から立ち上がり、反応する。
凛が冷静に言葉をつなげる。
「災厄までどのくらいの予想なのですか?」
「……1年もないだろう」
「「「「──っ!?」」」」
その場にいた全員が息をのんだ。
世界の崩壊が忍び寄っていることは、結月はまだ知らなかった──
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