第29話






■side:とあるLEGENDに興味がある少女(新城梓・大場未来・杉山栄子の休日)






 ようやく今日という日が来たわ!

 今日はこのおっきな学校でねんがんの『れじぇんど』を教えてもらうんだから!

 おとーさんもおかーさんもしんぱいだって言うけど『ぶいあーる』ってやつだからだいじょーぶだってともだちのユキちゃんも言ってたもん!


 今日ここでは、あつまったみんなに『れじぇんど』を教えてくれるらしい。

 まわりには、同じぐらいの子たちがいっぱい居るけどアタシの敵じゃないわね!

 前の方に出てきたのは3人のおねーさん。

 『ぜんこくたいかい』ってやつでゆーしょーした『さいきょーのじょしがくせい』だって!

 まあアタシを教えるのだから、強い人じゃないとね!


 とりあえず自分がすきなところにならんで!って言われたけど、まよってるうちにいつの間にかならんでいるところにはいってしまった。

 まあここでいいやとおもって、そのまま待つ。

 まだかな、まだかなと待っているとようやくアタシの番がやって来る。

 短い髪で元気の良いおねーさんに呼ばれた。


「じゃあ、これからLEGEND体験をします。実際にVRを使用せず、あくまでそれっぽい体験なので保護者の方も安心して下さい」


 むずかしいことをおとーさんやおかーさんに話をしているけど、私はそれよりも向こうにおいてあるものが気になってしかたがない。


「ははっ、やっぱり気になるよね。じゃあまずはあそこにおいてある武器を選ぼうか」


 そう言っておねーさんに連れられ、おおきなのがならんでるのを見にいく。

 テレビで見たことがあるのと少しちがうけど、よくにたものがいっぱいならんでいた。

 私は『がとりんぐ』というでっかいのを持つ。


「……かっこいい!」


 手に持ってポーズをすると、すごくカッコイイ!それにぜんぜんおもくない!


「ここにある武器類は、全て玩具メーカーと協力して作成された安全かつ軽量な玩具ばかりです」


 おねーさんが何かおかーさん達にせつめいしているけど、アタシはそれどころじゃない。


「おとーさん!しゃしん!しゃしん、とって!」


 アタシのカッコイイ姿をおとーさんにいっぱいとってもらう。

 やっぱりアタシには、こういうおっきなのがにあうわ!


「じゃあ、実際に的に撃ってみようか。あそこに的があるでしょ」


 おねーさんがゆびをさしたほうにおっきなぐるぐるしたのがある。


「ここのボタンを押せばいいよ」


 言われたとおりにボタンを押す。

 すると持っていた『がとりんぐ』からきいろいのがいっぱいでてきてぐるぐるにあたる。


「おお、すごいすごい。ちゃんと的に当たったね」


 おねーさんにほめられる。

 やっぱりアタシは、てんさいね!


「これはスポンジ弾と言いまして、とても大きなスポンジ状のものを弾として発射しています。見て頂くと解りますように1mも飛ばず勢いも無いとても安全な設計になっています」


 またおとーさん達に何かむずしいおはなしをしているけど、アタシにはかんけーないよね。

 それにおっきいのであそぶのがたのしい!

 しばらくすると、いつのまにか私の番がおわっていた。


 でもまだまだじかんがあるので、おとーさんとつぎのにならぶ。

 とちゅーでおかーさんがイチゴジュースをかってきてくれた!

 それをのみおわったぐらいで、ようやくアタシの番が来た。


 そこでは、おっきなかみかざりを付けた小さいおねーさんがいた。


「さあ、ようこそ!アタッカーの世界へ!」


 そういってアタシを手でよんでくれた。

 こんどうつものは、さっきよりも小さいものばっかり。

 なんでだろう?

 おねーさんにきいてみた。


「ん?さっきより小さい?……ってことはストライカーか」


 おねーさんが悩みだした。

 なにかわるいこときいちゃったかな?

 そうおもっているとおねーさんがこっちをむいておはなししてくれた。


「さっきの所は、大きいのが一杯あったでしょ?ああいうのは凄く目立つの。解るでしょう?あんなの持ってる人が出てきたら解りやすいし」


「うん、そうね」


「でもこっちは、ほら持ってみて」


「こっちもかるい!」


「それにほら、1つだけじゃなく2つ持てるでしょう?」


「あ、ホントだ!」


 さっきはおおきいの1つだけだったけど、こんどは手に1つずつ持てるから2つ持てる。


「大きいのを持つ人は、みんなの注目を集める人なの。だからかっこ良く見えるけどすっごく大変。でもこっちはその大変な人を助けて相手を倒す真の主役なの!」


「しんのしゅやく……!」


「仲間が困っている所に現れて、相手を倒して味方を助けてあげるの。ほら、主役でしょう?」


「うん、そうね!」


「ほら、こっちに鏡もあるわ。こういう持ち方をすれば……カッコイイじゃない」


「……おとーさん!しゃしんとって!」


 おとーさんにおねがいしてまたカッコイイしゃしんをとってもらう。

 しんのしゅやく……いいじゃない、アタシにピッタリよ!



 そしてまた私の番がおわった。

『そろそろ帰ろうか』っておとーさんが言うけど、まださいごがのこってるって言っておとーさんをひっぱった。

『もう仕方が無いな』とあたまをなでて、いっしょにならんでくれるからおとーさんだいすき!


「さあ次の方、いらっしゃい」


 さいごは、おっきなみつあみのメガネをかけたおねーさん。

 とってもまじめそうなかんじがする。


「ここでは、サポーターが装備するものを用意してあるから好きなものを選んでね」


 そういわれてみてみるけど、またさっきよりも小さいものがおおい。

 しかもこんどは、よくわからないものもいっぱいある。


「ああ、それは支援用の装備ね。説明するわ」


 おねーさんが、よくわからないものをさわるとそれがとつぜんおっきくなった。


「これは支援ポットと言って仲間を助けるための装備よ」


「なかまをたすけるの?」


「そうよ。サポーターというのは、とても地味だと言われてるけど居ないと困るものなのよ」


「どうして?」


「LEGENDってゲームはね、色んなものを使うけどほとんど全部に回数制限があるのよ」


「かいすうせいげん?」


「アナタが今持っているもの。それは使うとスグに使えなくなるの。でもサポーターが居ればまたスグに使えるようになるの」


「そうなの?」


「それにね、例えばアナタが相手にやられて怪我をしちゃったって時も、サポーターが居ればスグに怪我を直してくれるのよ」


「へぇ~すごいね!」


「そうなの。だから目立つことはないけど仲間のみんなに感謝されたり頼られたりする凄く重要な役割なのよ」


「そうだったんだ!」


「ちいさいものが多いのも、みんなのために頑張って走ったりするから邪魔にならないように小さいのよ。だからみんなサポーターに凄く感謝するの」


「サポーターってえらいんだね!」


「そうよ、とっても偉くて仲間想いの優しい役割なのよ」


 おねーさんは、とってもおはなしがじょうずでいっぱいおはなしをした。

 きがつけばもうお空は、まっかになっていた。


「今日は、愉しかったかい?」


「うん!アタシおおきくなったら『れじぇんどぷれいやー』になる!」


 そういうとおとーさんは、少しだけ寂しそうに笑っていた。


 その数日後、アタシは悩んでいた。

 おっきなのを手に持ってみんなのせんとうにたつ『すとらいかー』

 アタシが、すとらいかーになればアタシが前に出るだけできっと敵がにげるとっても強いすとらいかーになるわ!


 つぎにそのすとらいかーをたすけながら敵をたおす『あたっかー』

 いろいろなのをいっぱい持って敵をバシバシたおして『しんのしゅやく』になるの!

 きっとテレビにいっぱい出たり、みんなにすごいって言われてみんながアタシにちゅうもくするの!


 さいごは、みんなをささえる『さぽーたー』

 じみでめだたないってのは気になるけど、いっしょにたたかうみんなにかんしゃされたりたよられたりするの!

 みんなアタシが居ないとな~んにもできないのよね!ってかんじになるのかしら?

 ま、みんなにたよられるのもわるくはないわ!


 そしていちばんの悩みは、この3つのうちどれか1つしか出来ないこと!

 どれをえらんでもアタシならまちがいなくかつやく出来るからもんだいないのだけど、どれをえらぶかがだいじ!


「アタシってつみなおんなね。なんでもできちゃうんだもの」


 れじぇんどが出来るようになるまでに、どれにするかきめておかなくちゃ!

 ああ、ともだちのユキちゃんにそうだんするのもいいわね!






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「あ~、終わった~」

「つかれた~」

「結構な人数だったわね~」


 琵琶湖女子学園で開かれた『こどもれじぇんどたいけんかい』に駆り出された3人は、それが終わると寮の最上階ラウンジでソファーに寝転んでいた。


「まあ、ボランティアではなく一応バイトだったのが救いかなぁ」


「妥当なお給金でしたね」


「アタシは、お金よりこうして子供たちにLEGEND教えるのも愉しいから嫌いじゃないよ」


 今回、学校側からLEGEND部に打診がありこの3人が駆り出されることになった。

 全国大会優勝校ということもあり、近畿だけでなく全国からも少年少女達が集まってきたため予想外にイベントは盛り上がったのだ。


「みんなキラキラした瞳をしてたねぇ」


「そりゃみんなの憧れ、LEGENDですから」


「まだ本格的なVRにすら触れていないですからね。興味があるのは当然でしょう」


「そういや1人面白い子が居たよ。なんかお父さんにやたら写真撮って貰ってる子。普通は保護者が子供が嫌になるぐらい写真を撮るのにその子だけ逆だった」


「もしかして白いワンピースの子?」


「ん?そっちにも行ったの?」


「うん、来た来た。『アタシLEGENDで活躍するの!』ってずっと言ってたよ」


「……いいわね、そういう子」


「その子なら私の所にも来たわ。『おとーさん!しゃしんとって!』って言う子でしょ?」


「そう、それそれ!」


「あの子が一番キラキラした瞳をしてたわね。よっぽどLEGENDが好きなんでしょう」


「……そしてLEGENDをプレイして洗礼を浴びるのよね」


「ちょっと、嫌なこと言わないでくれる?」


「いや、だってそこまでがある意味テンプレじゃん!」


「それでもよ!あんなLEGENDに夢見てキラキラしてた子が現実に打ちのめされて泣きながらLEGEND辞める姿を想像してみなさいよ!」


「いや!そこまで言ってないよ!?」


「……地味に嫌な想像しちゃったじゃない」


 それから3人は、しばらく黙ってしまった。

 だが3人の心の中は、同じであった。


『願わくば、あの少女がずっとLEGENDを心から愉しんでくれますように』





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