第16話
■side:大阪府立日吉女学園 リーダー 堀川 茜
残り時間5分を切った戦場で、突如響き渡る特大の砲撃音。
そして後方で起こる爆発音と表示されるキルログ。
一瞬何が起こったのか解らなかったが
相手側を見れば、いつの間にか最奥に固定砲台のようなものが見えた。
一瞬なんだアレは?と思ったが、スグに何であるかに気づく。
「―――グングニル」
北欧神話の主神にして戦争と死の神オーディン。
その神が持ち、必殺の槍として有名である。
かつてEU諸国が合同で立ち上げた企業であるビビット社が
製作したとされる両肩用・巨大砲撃武器だ。
長射程・高火力であり、その一撃は、まさに必殺と言える。
ただ非常に欠点も多い。
その巨大さ故に、機動力が完全に死ぬ。
一般的なプレイヤーでは、装備して移動することすら出来ないほどの重量で
専用装備でないと、まともに運用出来ない。
しかも反動のために地面にアンカーを撃ち込むなどの予備動作が多く
そのため発射も遅ければ、回避行動すら取れない。
更に砲撃自体も安定感が無く、命中精度に難があり
これを何とかしようと思えば、大幅な時間を使って
ひたすらマップデータ等を読み込んで・・・と
まあ、まともに使用出来るものではなかった。
元々、要塞防御用であったり対大型兵器用などの用途で作られたものなので
これをLEGENDで運用するという発想自体が間違っていると言えなくもないため
ある意味放置され続けたものだ。
その後、ビビット社は何故か日本のアイドル文化に染まったかのように
謎のヒラヒラ衣装のような装甲を量産したり
有名メーカーとコラボを組んでは、見た目重視の装甲ばかり作るようになったが・・・。
改めて奥に現れた『ソレ』を見る。
前面に大盾を2枚構えて完全ガード状態。
砲撃体勢に入っており、見た目は完全に要塞にある固定砲台だ。
「まさか、今までずっとアリスが出てこなかったのって・・・!?」
そこでようやく私は、失態に気づく。
中央に居たのは、やはりアリスでは無かった。
そしてアリスがストライカー装備で、グングニルを使用している。
アレを100%運用したければ、かなりの時間をデータ収集に使わなければ
まともに運用出来るものにはならない。
試合開始からずっと今まで出て来なかったのを考えれば
50分ぐらいは、確実にデータ収集を続けていたことになる。
それは、60分という試合時間を考えれば、試合を放棄しているに等しい行為だ。
しかし、もし50分以上を費やしてこんな馬鹿げた兵器を使ってきたとしたら?
と考えれば、不思議と全てに納得できる。
ワザと中央に自分の偽物を配置して、撃ち合いを仕掛ける。
そうして時間を稼ぎ、最後にグングニルで一気に巻き返す。
「あんなもん、どうしろってのよ・・・」
正直、そんな感想しか出てこない。
完全ガード状態である以上、ライフル狙撃程度の火力で何とかなる訳なければ
ミサイルなどの高火力武器も届かない距離である。
第一、使用されない武器の研究、その対策など誰が考えるというのか?
一周回って、ある意味未知の超兵器と言える状態の武器であり
まさか正規の方法でアレを運用してくる奴が出てくるなど予想外過ぎて
思わず叫びたくなるレベルだ。
そんなことを考えていると、砲身から出ていた煙が無くなり
ゆっくりだが僅かに砲身が動いたのが見える。
思わずレーダーを見てから後ろを振り返る。
するとそこには、呆然と立ち尽くす文の姿。
「今すぐ下がれぇ!! 文ぃぃぃぃぃぃ!!!」
必死に叫んだが、無常にも爆発音と砂煙が舞い上がり
キルログが追加された。
◆キル
× 大阪日吉:宮島 文
〇 滋賀琵琶湖:霧島 アリス
■side:大阪府立日吉女学園 リーダー 堀川 茜
*画像【渓谷:後半】
<i526154|35348>
「考えろ! 考えろ! 考えろ!」
必死になって考える。
状況が悪すぎる。
あんなロマン武器を運用されるなど
しかも試合時間の大半を注ぎ込んで万全な状態で使用してくるなど
本当に予想外過ぎて、どう対処していいのか解らない。
あまりの出来事に仲間もパニックになり
通信がぐちゃぐちゃだ。
こちらの連携が乱れたのを察したのか、相手側が圧力をかけ始める。
こうなった以上、もはや普通の戦いでは蹂躙されるだけだろう。
なら、こちらが出来る行動は限られる。
大きく2度、3度と深呼吸をする。
そして―――
「全員ッ!!
司令塔付近まで後退するッ!!
アタッカーとブレイカーは、遅滞行動! 援護しろ!
ストライカーとサポーターは、全力で坂を駆け上がれ!
とにかくアレの向きに気ぃ付けろ!
自分んとこ向いてるおもたら即離脱しろ!
急げッ!!」
「りょ、了解!」
怒鳴りつけるような私の指示にパニックだった仲間が
少しずつ連携を取り戻す。
だが無理な後退、しかも遮蔽物の少ない坂道だ。
1人、また1人と仲間がやられていく。
しかしこれで止まる訳にはいかない。
グングニル独特の砲撃音と共に、仲間がまた1人吹き飛ばされ
キルログが更新される。
近くで着弾したせいで、強烈な爆風と巻き上げられた砂を被る。
絶望的な状況になりつつあっても、私は声を上げ続ける。
「全員、下がれッ!!
一時撤退して立て直すでッ!!」
そう叫びながら、リーダー権限のメニューを開き
メンバー交代の申請を出す。
あとは、監督がやってくれるだろう。
仲間のほとんどが下がった段階で、自分も下がる。
思わず点差を見た。
大阪日吉:900
滋賀琵琶湖:950
大きく点差を稼がれた。
だが、50Pなら最悪リーダー撃破で返せる。
即席で最終防衛ラインを作って相手の出方を窺う。
もちろん、グングニル対策として狙われていそうな場所以外から
確認したり、設置レーダーの情報のみではあるが。
幸運というべきか相手は、前に出てこなかった。
その場で消耗品の補充などを行い、あくまで徹底防御で
勝利しようという防御態勢だ。
まあこのままいけば間違いなくこちらが負けるだろう。
だが、このまま大人しく負けるウチらじゃない。
「全員、補給の手ェ止めずに聞け。
次、ラストアタックを仕掛ける。
装備とか交代指示を全員に出すから
今のうちに入れ替えとけよ」
そう指示を出しながら、自分も装備交代のために一度戦場外に出る。
仮想現実から戻ってくると、思わずため息を吐く。
「・・・ホント、まいったね」
見事に作戦負けをした。
今回、文の意見を採用したが
最初の予定だった作戦を行ったとしても結果は、同じだっただろう。
ふと、VR装置の入口を叩く音がする。
それに気づいて装置から出るとそこには、文の姿。
「どうした?」
「すいません、先輩!
自分が、もっと早くにアレに気づけてれば―――」
「ああもう、言うな。
あんなん誰も解らん。
だから誰のせいでもない。
それよりも、これから一斉突撃仕掛ける」
「―――なら、発電所の防衛任せて貰っていいっすか?」
そう言いながら目を合わせて必死にアピールする彼女を見て
思わずまた、ため息が出る。
「―――普段から、それぐらい必死にプレイしなさいよ」
「じゃあ?」
「ウチらの生命線、お前に任せる」
「ありがとうございます!
絶対、守り抜いて見せるっすっ!」
「ラストチャンスや!
もう勝ったと思い込んでるアイツらに
ウチらの意地を見せつけたるで!」
「―――はいっす!」
文を見送ると再度VR装置から戦場に移動する。
全員が装備を整えたり、交代したり、復帰したりを待ち
ようやく全員が揃った頃には、残り時間3分となっていた。
一部を除いて全員が軽量装備になっている。
「さて、最終ミーティングや。
まあ言わんでも解ると思う。
全員で凸ってアイツらにウチらの意地を見せつけるで!
渓谷でのラストアタック。
決まればウチらの逆転勝利や。
発電所の防衛に文だけ残す。
それ以外は、全員止まるな。
みんな自分の役割ちゃんと覚えてるやろな?」
「はいっ!!」
全員の返事を聞いてから、1度深呼吸をする。
そして―――
「配置に付けッ!!
残り時間2分でスモーク投擲ッ!!
カウント5でスタートッ!!
お前らッ!
日本中にッ!!
世界中にッ!!
大阪日吉の意地を見せたれッ!!!
絶対止まんなよッ!!!
最後に勝つんは、ウチら大阪日吉やッ!!!」
「おおーーーーッ!!!」
そう皆が叫びながら腕を天に突きあげる。
そしてそれが終わるとスグに全員が配置に付く。
「スモーク準備ッ!」
「スモーク準備ッ!」
先頭の2人が両手にスモークグレネードを持つ。
―――そして残り時間 2分となった瞬間。
「投擲ッ!!」
中央から投げ込まれたスモークグレネードは
一瞬で広範囲に広がるが、効果時間も短いS.L社製のスモークグレネードだ。
投げ込まれた瞬間から、中央を中心に非常に濃い煙に戦場が包まれる。
本来なら、手投げ故にそれほど遠くに投げることは出来ないが
ここは、渓谷の頂上。
高低差もあってかなりの距離を稼ぐことが出来た。
「カウントッ!!
5ッ!
4ッ!
3ッ!
2ッ!
1ッ!
突撃ィィィィィィィッ!!!!」
■side:琵琶湖女子 新城 梓
「やっばッ!!
ラストアタックだッ!!」
中央のスモーク。
投げられた数。
時間と点差。
この場の雰囲気。
かつて自分が在籍していた学校で
ラストアタックと呼ばれた最終突撃。
当時は、まだ構想段階で具体的なプランは無かったが
そういうものがあったことを思い出した。
そして具体的なプランは無かったものの
たった1つだけ早々に決まったことがある。
それは―――
「みんなっ!
相手全員突っ込んでくるよっ!!
注意してっ!!」
全体通信で警戒を促した瞬間、相手側から叫び声と共に
一気に集団が駆け下りてくるような音が響く。
そう、これこそ最初に決まったこと。
全員揃っての一斉突撃だ。
こちらも負けずに全員が一斉攻撃を開始するが
スモークのせいで、いまいち効果が解らない。
―――ブルーチーム、発電所制圧!
制圧アナウンスが会場に鳴り響く。
・・・制圧が早い。
相手が微妙に見えないが、大体の位置を予測して
そのままガトリングによる射撃を続ける。
スモークも、もうスグ消えるだろう。
何より発電所の先は、範囲外だ。
そう思っていると、スモークから相手が一斉に飛び出してくる。
「やっぱ、そうくるかっ!!」
飛び出してきたのは、可能な限り軽量の装甲で機動力を重視し
両手に大盾を持ったストライカーが3人。
一切の攻撃を捨て、ただ壁となって突撃するだけの存在。
既に数多の攻撃を受け、ボロボロな姿になっているが
それでも彼女達は、突撃を辞めない。
自分達の役割が、道を切り開くための囮であり
味方を護る盾であることを、誰よりも理解しているからだ。
「何なんだよ、こいつらっ!?」
通信越しに大場の叫ぶ声が聞こえる。
中央に居た大場・三峰・安田は、思わず後方に下がりながら攻撃をする。
完全に気迫負けしている状態だ。
「させませんわッ!!」
花蓮が、下がった3人の代わりに中央に迫りつつ
敵集団を狙ってミサイルを全弾発射する。
しかしそれに気づいた1人が、ワザと飛んでくるミサイルに向かって飛び込む。
両手に持ったボロボロだった大盾2枚がミサイルの攻撃を受け吹き飛ぶも
相手は、決して止まらない。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
覚悟を決めた叫び声と共にミサイルにワザとぶつかる。
いくらVRでほとんど痛みがないとはいえ
全身にミサイルを受け、装甲が吹き飛びながらも
ミサイル全てを受け切って消え去る少女の姿は
壮絶という言葉では言い表せないほどだ。
味方を巻き込まないために、あえて犠牲となった少女の行動。
そしてそれを誰も気にすることなく突撃を続ける相手チーム。
「な、なんてこと―――」
本来ならあり得ない行動に、その決意の自己犠牲に花蓮が呆然となる。
その瞬間、ミサイルの爆発による煙の中から
こちらも既にボロボロになった軽量盾を持つアタッカーが飛び出し、花蓮に迫る。
急なことに花蓮は、反応出来ない。
そしてそのまま盾ごと花蓮にタックルを入れ、抑え込む。
レジェンドでは、武器と定義されたもの以外では
攻撃してもダメージは、入らない。
なのでタックルや殴る、蹴るといった行為も
相手に衝撃を与え、体勢を崩すことは可能だが
ダメージにはならない。
なのでこのタックルも、あくまで牽制でしかない。
だがタックルをしたアタッカーは、それで終わらせるつもりなどなかった。
左手の盾で押さえつけながら、右手で腰にあった着発グレネードを手に持つと
素早く口でピンを銜えて引き抜き、それを一瞬たりとも躊躇うことなく花蓮に叩きつけた。
◆キル
× 滋賀琵琶湖:藤沢 花蓮 【L】
〇 大阪日吉:田中 明見
自滅 大阪日吉:田中 明見
キルログが更新される。
レジェンドでは、こういった自爆覚悟の場合
どちらも結果的に撃破扱いなので互いに1人撃破分のポイントが減る。
なので通常なら互いに10P減るため点数差は、変化しない。
だが、片方がリーダーだと別だ。
リーダーは、50Pあるので、40P分の差が出てしまう。
また格差のある相手や最後の抵抗などで相手を巻き込んだ自爆というのもあり
こういったことを選択する選手は、稀に居るしルール上も問題ない。
「―――」
壮絶な捨て身の特攻で、初心者組を中心に混乱が起こり
その状態のまま下がりながら交戦していた三峰と安田は
ロクな抵抗も出来ず集団突撃に轢き殺され、大場も必死に抵抗したが
多勢に無勢で、瞬殺されてしまう。
その騒動の中、何とか中央寄りで無事だった杉山も
いきなり列を離れて迫ってきた敵アタッカーに
花蓮と同じような形で自爆され、戦線から離脱する。
そして一番の問題は、リーダーである花蓮が撃破されてしまったこと。
ペナルティである通信障害も発生し、通信が出来ないのだ。
そのためまともな連携が出来ず中央が突破されようとしていた。
全力で止めようとする琵琶湖女子だが、大阪日吉の激しい抵抗。
特に自己犠牲を前提とした戦いに、気迫で負けてしまい
大阪日吉の突撃を止められずにいた。
「何とかしないと・・・!」
必死に考える。
自分と隣でテンパってる宮本は、ストライカー。
坂道の追撃には不向きだ。
ならやることは、決まっている。
「宮本ちゃんっ!
私らで、発電所を取るよっ!!」
「へっ!?
は、はいっ!!」
発電所さえ押さえてしまえば、ゲートが閉じて
司令塔も防護壁で封鎖されるため、司令塔への攻撃は出来ない。
鈍足である以上、ここで無理して追撃に入るよりも
前進して発電所を抑えた方が良いはず。
急いで中央の橋にある発電所へ向かうと―――
「やっほ~、梓。
久しぶりっすね~」
「チッ、文じゃない。
ちょっとそこどいてくれない?」
発電所の前で、重装甲で身を固めたストライカーが居た。
かつての戦友、宮島 文である。
「久しぶりなのに、酷いっすね~」
「悪いけど、時間稼ぎには付き合わないわよっ!」
「―――なら」
装備をストライカー装備へと変更していた彼女は
左手に大盾を構え、右腕と一体化しているガトリングの銃口を
こちらに向けた文が音を立てながら、戦闘態勢に入る。
「大阪日吉の副リーダー、宮島 文っすっ!
ここは、死んでも通さないっすよっ!!」
その気迫だけは、大したものだ。
だがそれで私を止められると思わないで欲しい。
「突っ込むぞ、宮本ォォォォォォ!!!」
■side:大阪府立日吉女学園 リーダー 堀川 茜
全方位から攻撃されているのでは?と思えるほどの銃弾の嵐の中を
ひたすら叫び声を上げながら駆け抜ける。
1人、また1人と仲間が撃破されるが
立ち止まることなど許されない。
皆が勝利を信じて犠牲になってくれているのだ。
何より、そうしろと、死ねと命じた自分が
勢いを殺すなどあってはならない。
互いに撃破し、撃破されの泥仕合になりつつも
ようやく相手の防衛網が切れ、司令塔が見えてくる。
*画像【渓谷:決着】
<i526155|35348>
坂を登り切り、ゲートに迫る。
司令塔付近に誰も居ない。
「勝った―――」
勝利を確信した瞬間だった。
自分の前を走っていたアタッカーが
頭部装甲をまき散らしながら吹き飛ぶように倒れて消える。
―――ヘッドショットキル!
◆ヘッドショットキル
× 大阪日吉:越石 美樹
〇 滋賀琵琶湖:霧島 アリス
表示されたログが視界の端に映る。
そして―――
「霧島 アリスッ!!」
相手側スタート地点付近で狙撃体勢に入っているブレイカーが見えた。
恐らく早々に開始位置に戻り、ブレイカーに装備変更したのだろう。
結局、突っ込めたのは私と先ほど倒れた2人のみ。
残ったのは、私だけ。
相手は、さっき射撃してリロードの最中。
「負けるかぁぁぁぁぁ!!!」
真下からしか攻撃出来ない司令塔に走り込む。
そして滑るように移動しながら、もはやボロボロの大盾で
ヘッドショットだけを警戒して構えた。
いくらボロとは言え、盾が邪魔でヘッドショットは出来ない。
何より、リーダーの司令塔攻撃はダメージが2倍。
ほんの少し叩き込むだけで大きな点数になる。
スライディング気味に司令塔の真下に移動しながら
サブマシンガンを真上に向けて引き金を引く!
―――ブルーチーム、司令塔への攻撃を開始しました!
攻撃が通り出したアナウンスが響く。
―――その直後
発砲音と共に、右手に衝撃が走る。
そのあまりの衝撃の強さにサブマシンガンが吹き飛ばされた。
「なっ!?」
そう、狙撃によって銃を狙われたのだ。
思わず霧島 アリスを見るとライフルを捨てながら
こちらに向かって走り込んできていた。
スグに腰にある予備のハンドガンを握る。
それを真上に向けようとした瞬間。
盾越しに何かが爆発して、装甲がシステムダウンを起こす。
―――スタングレネードだ。
短ければ1秒、長ければ10秒近く
相手の動きを止めるそれが、盾越しに投げ込まれたのだ。
スグに装甲が再起動し始める。
「早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ!
早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ! 早くッ!」
それが無意味な行動だと理解していても必死に叫ぶ。
再起動中で身動き出来ない状態の最中に
発砲音と共に盾に衝撃が入る。
霧島 アリスがリボルバータイプの武器を撃ちながら向かってくる。
最初は、走りながらで狙っている余裕が無いのかと思ったが
6発目で、動かない手から盾を弾かれ盾が吹き飛ぶ。
恐らくこれを狙っていたのだろう。
だが、6発装填のリボルバーで6発撃ち切った。
リロードなどしている余裕などないだろう。
他に銃を持っている様子など無い。
「動けぇぇぇぇッ!!!」
装甲の再起動が終了し、機体が動く。
そのまま途中になっていた銃を上に向けながら引き金を引く。
だが、それと同時に走り込んできた霧島 アリスによるダッシュタックル。
本来ならいくら軽量装甲にしているとはいえ、ストライカーがブレイカーのタックルで
よろめくことなど無いのだが、今までのやり取りで体勢が崩れていた所を
勢いのあるダッシュタックルで追撃され、吹き飛ぶように倒れ込んだ。
発射された弾は、司令塔のふちに当たりダメージ判定とはならなかった。
タックルで倒されたが、ダメージではない。
スグに起き上がろうとしたが―――
「―――ッ!?」
私が見たのは
既に馬乗り状態になっていた霧島 アリス。
彼女が、無表情で振り上げたナイフを
私に向けて振り下ろす瞬間だった。
◆キル
× 大阪日吉:堀川 茜 【L】
〇 滋賀琵琶湖:霧島 アリス
―――試合終了
その直後、試合終了のアナウンスが会場に鳴り響く。
そして表示される試合結果・・・のはずが、少し様子がおかしかった。
後半一気に点数が変動したせいもあり
表示が遅れていた互いの点数表記。
遅れたと言っても、ほんの数秒の話だったのだが
誰もがその結果が表示されるのを待っていた。
まるで会場から人が消えたのではないかと錯覚するほど
周囲から音という音が消え、無音の空間が広がる。
そして誰もが待ち望んでいた結果が表示された瞬間
結果を頭で受け入れる僅かな時間の後、観客は総立ちとなり大歓声が会場に響き渡った。
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