第137話 心配事ばかりだと心労が溜まりますよね……
現実逃避の為にスヤァ……と眠って今起きました、おはようございます。
アルクーレの街への被害については領主様から聞いたので、とりあえずはオッケー。
あとは……
「シリューに何かあったの?」
と、父さんと母さんに尋ねてみる。
「そうね……」
少し思案顔になる母さん。
何か言い難い事なのかな?
「おそらくなのだけれど……シーちゃんに起きた不調がシリューにも起こったのだと思うわ」
「不調……って言うと、真化の影響?」
「ええ。ヨークは平気だったのだけれど、シリューには影響があったらしくて……」
「あ……」
言われて、思い当たる節があった。
そもそもシリューは竜の子……私が最初に取り込んだドラゴンパピーとパラライズサーペントの二つの魔石がリンクした事によって生まれた存在だ……たぶん。
あの辺の力についてはよく分からない事が多いけど、まぁ元になったのは父さんと母さんの子供である事には違いない。
魔石を取り込んだ事で真化の影響を受けたのだとすれば、ドラゴンパピーを元にしているシリューも何かしらの影響を受けたとしても不思議ではない……はず。
そしてシリューが父さんと母さんの子供が元になった存在だとは、説明していない。
この子は、二人の子供の力から産まれたんだよ……なんて言えなかったから。
「シーちゃん?」
私がぐちゃぐちゃと悩んでいたら、母さんに顔を覗き込まれていた。
本当の事が伝えにくい……でも、伝えなきゃ……
「あのね、実は……」
「そう……」
「ふむ、シリューがな……」
私の話を聞き終わった母さんと父さんは複雑そうな顔をしている。
まぁ、そうだよね。
なんで言わなかったんだ、って怒られるかな……
「そんな事もあるのだな」
「そうね。本当にシーちゃんの力は不思議ね」
と、二人はあっけらかんとした様子だ。
あれ……そんな感じなの?
私としては、結構言い難い事だったのに……
「ん? シラハ、そんな顔してどうしたんだ?」
「どうって……シリューは父さんと母さんの子供みたいなものなんだよ?! 私がそれを黙ってたのに、二人はなんとも思わないの?!」
「ふむ……」
大きな声を出したりして、私……なんかイヤな子みたいだ。
父さんは私の言葉を聞いて、少し思案顔。
「そう言われると、そうなのかもしれんが……。だが、やはり我が子の匂いがするのはシラハからで、思い返してみてもシリューからは竜の匂いはしても、我が子とは気配が全く違った。つまり我等の子はシラハだけだと言う事だ」
「そうね。シリューがシーちゃんの力の一部であるのなら、私達の家族でもあるけれど、娘はシーちゃんだけよ」
「父さん……母さん……」
二人の言葉を聞いて嬉しく思う。
だけど、やっぱり私はイヤな子だ。
私が二人にシリューについて話さなかったのは、本当の事を話してしまったら、もしかしたらシリューを本当の子供ように可愛がって、私がオマケ扱いされてしまうかもしれない……なんて考えたからだ。
私は二人に良くしてもらっているのに、完全に信じきれなかったんだ。
私ってサイテーだ。と、自己嫌悪……
「ど、どうしたのだシラハ?」
私が俯いてしまっていたから、父さんが心配そうに話しかけてくる。
「ううん。なんでもないよ」
顔を上げて、ニコリと笑っておく。
気を遣わせる訳にはいかないからね。
「シーちゃんは、もう体調は問題ないの?」
「え? あ、うん。よく寝たし、もう平気だよ」
「この街での用事も済んだのなら村へ戻る? 此処よりも家の方が落ち着けるでしょ?」
と、母さんが提案してくれたけど、カトレアさんとあまり話せてないから、もう少し滞在はしていたいんだよね。
あまり長居して、私がアルクーレの街に居る事を知られるのは良くないんだろうけど……
「もう少しだけ、此処に居ても良いかな?」
「ええ。構わないわよ」
母さんの許可も貰ったので、もう少し滞在するとして……
あとはセバスチャンさんにお願いして、カトレアさんをお屋敷に呼んでもらう。
ふむ。こんな事をやってるから領主様の娘だとか、変な噂が立つのか……
堂々と外に出る訳にも行かないから、しょうがないんだけどねっ!
「領主様の屋敷に居る事に慣れてきている自分が悲しいね……」
「なんかスミマセン……」
ちょっと遠い目をしているカトレアさんに謝罪しておく。
「それで、あたしに何の用だい?」
そして、さっそく本題に入るカトレアさん。
もうちょっと、たわいない話とかをしても良いんだけどな……なんて思いつつも、要求通りに話を進めるとする。
「えっとですね。私の中で会ったっていうナヴィの事なんですけど……」
「ああ、あの子かい……」
カトレアさんの表情が少し曇る。
何かあったのかな?
「ナヴィについて話すのは構わないんだけど、アンタとナヴィはどういった関係なんだい?」
「関係……ですか? ぅう〜ん。難しいですね」
何て説明したら良いんだろう……
前世や神様や魂の話やらをしても、ついて来れるのかな……?
「カトレアさんって神様を信じてますか?」
「あたしは無神論者だよ。って、なんだい? もしかしてナヴィってのは神様だ、って言いたいのかい?」
「いえ、ナヴィは普通の女の子なんですけども……」
「普通? アレが……?」
私の言葉にカトレアさんが首を傾げる。
あれー? ナヴィはカトレアさんに何かしたのかな?
「まぁ、端的に言えばナヴィは魂だけの存在で、私の中に居候している、みたいな? 感じです」
「つまり、普通じゃない子って訳だね」
「私は一度しか会った事ないですけど、普通の女の子な感じでしたよ?」
「アンタの前では猫を被ってるんじゃないのかい?」
「…………確かに最近は心にグサリとくる言葉を投げかけられる事もありますけど……」
「それでもアンタには害はない、って言いたいんだね」
「はい」
ナヴィには何度も助けられているしね。
「と…言っても、あたしが話せる事なんてほとんどないよ?」
「どんな様子だったか、だけでも良いので!」
「声しか聞こえないんじゃ、様子が気になるのも仕方がないか……」
「ですです」
「顔は見えなかったけど、アンタの事を話す時だけは楽しそうだったね」
その時のナヴィを思い出したのか、カトレアさんがふっと笑う。
転生時に話しかけただけなのに、ナヴィは私の力になりたいと言ってくれている。
私はそんな大層な事してないのにね……
「そしてアンタの目を覚まさせる方法を教えてくれて、アンタが居た部屋の前まで案内して、それっきりだね」
「ナヴィも【主の部屋】の中に入れれば良かったんですけどね」
「【主の部屋】ってのは、アンタのスキルってヤツかい?」
「そうです。たまたま取り込んでしまったダンジョンコアの能力ですね」
「ダンジョンコアって……」
カトレアさんが呆れている。
そんな顔されても……あの時は私も取り込めちゃうだなんて思ってもなかったし……
「あたしの知っている限りではダンジョンが駄目になったとは聞いてないけれど、アンタ何処のダンジョンを潰したんだい?」
「何処って……竜の里ですけど?」
「竜の里って……もしかしなくても、竜の棲家だったりするんじゃないかい?」
「そうですね」
棲家どころか巣窟だけど……
「はぁぁ……エイミーの娘が完全に人間を辞めているだなんて……」
「や、やめてませんよ?!」
心外なっ! 私はまだギリギリ人間だと思ってますよ!
「アンタ……竜の棲家に行って、平気な人間がいると思うかい?」
「此処にいます……」
「竜が沢山いるって事は、かなり魔素が濃いと思うんだけど、本当に平気だったのかい?」
「あ、私、魔素を無力化できるんです」
「そんな人間いないからね?!」
だから此処にいるんですってー……
「なんにせよ、早死にするような生き方はしないでおくれよ」
「…………努力します」
「なんだい、今の間は……」
早死にしそうな生き方をしてきた気がしないでもないので即答出来なかっただけですぅ……
「そんな事よりも、何処かの国やらが管理しているダンジョンを潰すような真似だけはしないでおきなよ? 場所によっては、ダンジョンのおかげで生活が成り立っている所もあるんだから」
「さすがに私でも、その辺の分別くらいはつきますよ……」
なんかカトレアさんの中で、私は問題児みたいな扱いをされている気がする……
「とかなんとか言いながら、いつかうっかり潰しちゃった……とか言うんだろ? 国に指名手配されたとか洒落にならないからね?」
「さすがにそれは…………って、そういえば私って指名手配されてるのかな?」
王都で暴れて、その日にアルクーレの街に移動して、翌日には街を出てたから、その後については何も知らないんだよね。
だから私がアルクーレの街にいるのを多くの人に知られるのはマズいと思って行動していたんだけど、実は指名手配とかされてなかったりとか?
「って、アンタ! 指名手配って何やらかしたんだい?!」
「な、何も悪い事はしてませんよ?! …………私的には」
基本的には身を守っていたつもりだし?
「今、ボソっと何て言ったんだい?!」
「いたいいたいっ! 頭潰れるからアイアンクローはやめてくださいっ」
カトレアさんのアイアンクローは、とっても痛い。
頭が凹んでそうな気がするし、爪も食い込んでる気もするし握力もヤバい。
ホント泣きそう……
カトレアさんの魔の手から解放されて、渋々ながら王都での出来事を説明すると、カトレアさんが顔を両手で覆うと俯いてしまった。
「なんで、この子はそんな無茶ばっかり……。他の子供よりは賢いかと思っていたけど、実は馬鹿なんじゃないかい……?」
カトレアさんが、とっても酷いです。
「エイミーといい、この子といい、自分の命を顧みないで身を削るような生き方をするのは親子だから? いや……でも、竜の庇護下にあるのなら、もう大丈夫? でもでも、自分から飛び出して死地に向かおうとするから、どうしようもない?」
「カトレアさん……大丈夫ですか?」
俯いたままブツブツと考えている事を口に出しているカトレアさん。
私が原因なんだけど……なんかゴメンなさい。
「シラハ様の手配書でしたらアルクーレの街にも出回っております。王城襲撃、貴族殺害の他に様々な余罪があるとされ1000万コールの懸賞金がかけられておりますよ」
と、尋ねてみたらセバスチャンさんが教えてくれた。
「1000万……」
「カトレアさん!?」
それを聞いてカトレアさんが卒倒してしまった。
今後はもう少し大人しくしておこう…………
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