第54話 ご褒美はー?
名前:シラハ
領域:〈ソードドラゴン+パラライズサーペント〉
《森林鷹狗》 サハギン
フォレストマンティス レッドプラント
ハイオーク エアーハント シャドー
迷宮核(0)
スキル:【体力自動回復(中)】【牙撃】【爪撃】
【竜気】【竜鱗(剣)】【竜咆哮】
【麻痺付与】【毒食】【解毒液】
【熱源感知】【獣の嗅覚】【跳躍】
【夜目】【有翼(鳥)】【疾空】【潜水】
【側線】【鎌切】【擬態】【吸血】
【誘引】【剛体】【誘体】【風壁】
【潜影】【影針】【迷宮領域拡大】
【迷宮創造】【主の部屋】
【疾空】空を駆ける。
【迷宮領域拡大】迷宮核の外側に領域を広げる。
【迷宮創造】領域内に迷宮を創り出す。
【
父さんが、お爺ちゃんやレイリーに私達が家族となった経緯を説明してくれている間に、私はスキルの説明を確認しちゃったりしている。
今すぐスキルの検証をするわけじゃないけれど、やっぱり新しく手に入れた力は気になるからね!
それと、枠がなくて取り込む事はできなかったけど、私がダンジョンの最奥で戦ったボスゴブリン(仮)は、アーマードゴブリンって名前だったみたい。
取り込もうとする時に名前をお知らせしてくれるのは、ありがたいよね。
あとフォレストドッグとフォレストホークが結合したとかで《
変質した事で新しいスキルを手に入れたけど、【疾空】は空を飛ぶのではなくて、空を走る事ができるということになるのかな?
それはそれで気持ち良さそうなんだけど、それって一体どんな魔物?
それに二つの魔石が一つになったのに、空き枠ができたのかも結局は分からなかった。
たまたまアーマードゴブリンを倒して空き枠ができたのか、魔石が結合して枠が一つ空いたのか、これは調べようがなかったからね。
しかも結合したからといって、また他の魔石とリンクができるようになった訳でもない。
本当にこの力はよくわからない。
よくわからないし説明は不親切な事が多いけど、それらを知っていくのは楽しいんだよね。
ほんと私って子供みたい。
「つまり貴様は、シーちゃんをキズモノにしたと言うわけだなぁぁぁ!?」
「あの時は仕方なかったと言っているだろう! 我だって心底後悔しているのだ!」
どうにも、お爺ちゃんは父さんが私を襲った事を許せないらしく騒ぎだした。
なんて賑やかな親子なんだろう。
え、私にも同じ
「そうだ、娘ちゃんが迷宮核を壊してきたんだよね? 疑うわけじゃないけど、迷宮核の破片とかって持って帰ってきてる?」
レイリーの言葉で皆の視線が私に集まる。
そういえば転移陣が出てたから父さんも確認してこなかったんだと思うけど、私ってダンジョンコアを壊したって一言も言ってなかったね。
さて、父さんが私が魔石を取り込める事も話してくれたし、言っちゃっていいよね。
「あのね、私ダンジョンコアを取り込んじゃった」
「えっ……」
驚いたのはレイリーだけ。
いや、父さん達ももう少し驚いてよ。私もビックリしたんだしさ。
「さすが我の娘!」
「さすが儂の孫!」
父さんとお爺ちゃんの、私を褒める言葉が重なる。
「「ああん?!」」
そして、お互いに額をぶつけ合って睨み合う。
ほんと息ピッタリだよね。
「それじゃあ、今も迷宮は生きているのかしら」
やっぱり母さんは冷静だね。たまに悪ノリするけど。
「うーん……。あのダンジョンは私の場所って感じがしなかったから、たぶんだけど平気だと思うよ」
「そう、それなら良いわ」
私の言葉に母さんが安心したように息を吐いた。
もし、あのダンジョンが私の物になってしまっていたら、できるかは分からないけれど、新しく手に入れたスキルで縮小させるしかなかったね。
それも無理なら迷宮核を放棄して消失させるしかなかったと思う。
それらは、もしもまだダンジョンが死んでいなかったら、という仮定の話だから考えても意味はない。
けれど、この迷宮核のスキルでダンジョンの謎に迫れたら楽しいよね。
「それでは、シーちゃんや。じぃじに、その取り込んだ力とやらを見せてくれないか?」
「えっと……うん、わかった」
私がチラリと母さんに視線を向けると小さく頷いていた。
冷静な母さんが大丈夫だと思うなら問題ないよね。
お爺ちゃんのじぃじ呼びはスルーだよ。
私はさっそく手に入れたばかりのスキルを使ってみる事にした。
使うのは【疾空】だ。
あとで消す事が出来るとは思うけど、さすがにお爺ちゃんの巣の中をダンジョンにするわけにはいかないからね。
「【疾空】」
私はスキル名を口にするが特に何も起こらない。やっぱりこのスキルは【跳躍】のように私の動きを補助するタイプのスキルみたいだね。
スキル効果は空を駆けるってなってるから、このまま跳べばきっと大丈夫なはずだ。
そして私はその場で跳躍する。
私の足が地面から離れ、重力に従って上昇から降下に力の流れが変わった時、スキルの効果を実感した。
「わわっ………。ひゃ?!」
降りる、となった瞬間に私の足下に見えない足場が発生して、私はバランスを崩す。
そして足場が消えて私は地面に落ちる。
「大丈夫かシラハ?!」
父さんが心配しながら、私に駆け寄って抱き起こしてくれる。
「父さん、ありがとう」
「これくらい大した事じゃない」
若干だけど父さんが照れる。
人化してると父さんって厳つい顔してるけど、照れると可愛いね。イケメンだし。
「むぅ……人化を会得すればシーちゃんと触れ合えるのか……。アリだな」
「ええ……。シーちゃんが娘になってから私も練習しているの、本当にガイアスが
「本気かい……? なら僕も覚えようかなぁ……」
「貴方はダメよ」
「そうだ、貴様が人化を会得してもシーちゃんには近づくな」
「皆して僕の扱いが酷い!」
なんか周りが騒がしいけど、もう一度スキルを試してみよう!
そして私は次に跳ねるように走ってみた。
「おお〜!」
私の足は地面から離れていても、何もない空中を踏みしめて次の足を踏み出せた。
そう、空中を駆けているのだ。
私凄い! というかスキル凄いよ!
私は軽く走ると、その場で止まってみる。すると、ふっと足場がなくなり地面に着地する。
落ちると分かっていれば転ぶ事はないね。
どうも【疾空】は何もない所に一瞬だけ足場を作り出す事が出来るみたいだね。
もし空を長距離移動するなら【有翼(鳥)】で空を飛んで、戦闘などで素早い動きを求められる場合は【疾空】と使い分けるのが良さそうかも。
良いね。使える手段が増えるのは良い事だよ。
使いこなせるかは別問題だけどね。
「本当に不思議な力だね……」
「我の娘だからな!」
「どういう理屈さ……」
レイリーが疲れたような声を出しているね。
父さんもブレないし。
「ふむ。見聞きした事のない力だな……」
「やはりお義父様も知りませんか。シーちゃんの為にも何かわかる事があればと思ったのですが……」
お爺ちゃんの言葉に母さんが残念そうにする。
そういう意図もあって私の力について話したんだね。ありがとう母さん。
「よし、話も終わりだな。ほら長老、帰るんだからさっさと褒美を出せ」
私の新しいスキルのお披露目が終わって、父さんがそんな事を言い出した。
父さん、言い方というものがね……。
「なんだと?! 貴様、儂と孫の初めての触れ合いの機会を邪魔する気か!」
「そんな事知ったことか! お前にシラハは渡さん!」
「おのれ……。それなら貴様には褒美などやらん! それに実際に迷宮核を消したのはシーちゃんなのだから、褒美はシーちゃんに渡すのが筋であろう!」
「ああ、その通りだ! それで構わん!」
「構わないんだ?!」
レイリーが疲れたような……以下略。
って構わないんだ。私も驚きだよ。
「ふーむ、何がいいか…………。先代の竜核とかはどうだ?」
「ダメに決まってるでしょ?!」
「冗談だ。そんなに怒るな……」
「はぁ……。本当に渡しそうで怖いよ」
竜核って竜の魔石でしょ? そんなのはさすがに貰えないよ。というか、竜には弔う習慣はないのかな?
「亡くなってしまった竜を想って竜核を残しておくんですか?」
「ん? ああ、そうだね。成竜の竜核なら家族が引き取る場合もあるけど、真竜に至った者の竜核は一箇所に集められて、そこに祀られるんだ。偉大なる者としてね」
「じゃあ、竜核って大切なモノなんですよね。それを渡すのは不味いんじゃないんですか?」
「だから驚いた……」
「ですよね……」
そりゃ驚くよね。私だって、そんな重たいモノを渡されても困るし。
他の真竜の力とか興味はあるけれど! 凄く興味あるけれども!
「もし儂が死んだら、儂の竜核なら貰ってくれても良いぞ?」
「縁起でもない事言わないで!?」
レイリーはなかなかツッコミ頑張るね。
私なんて既にツッコむ気力もないよ。
「しかし他にシーちゃんに渡して喜ばれる物なんてあるかどうか……」
「それでも孫にお爺ちゃんの竜核託すとか重すぎるでしょ……」
父さんなら嬉々としてお爺ちゃんから竜核抜き取りそうだけどね。そんな血生臭いプレゼントなんて受け取りたくないけどね!
「それなら今度会う時までにシーちゃんの為に、魔石を用意しておいてあげれば良いのではないですか?」
「それだ!」
悩むお爺ちゃんを見かねて、母さんが代案を出してくれる。漸く話が纏まったね……。
「なら褒美である魔石を手に入れるまでは、シラハとの触れ合いはお預けだな。帰るか」
「ちょおぉぉい! 待たんか馬鹿息子! なんでそうやって儂を孫から引き離そうとする!?」
「我とレティーツィア以外の視界に入れさせたくないからだが?」
「いやー。娘ちゃんのお父さんは、本当に親バカを拗らせちゃってるねー」
「ウチの父がスミマセン……」
「面白いからいいんだけどねぇ」
「それじゃあシーちゃん。私達はご飯でも獲りに行きましょうか」
「うん」
「長老とガイアスは落ち着くまで僕が見てるから安心して行ってらっしゃい」
私達は騒ぐ父さんとお爺ちゃんを放置し、レイリーに見送られて出かける。
私は狩場も分からないから、母さんの背中に乗ってるだけなんだけどね!
そして私は母さんの背中に乗りながら尋ねてみる。
「父さんのお母さんや、母さんの両親とは会わないの?」
今後も竜の里との付き合いがあるのなら、家族構成も知っておいた方がいいと思ったんだけど、こういうのを聞く時って少しドキドキするよね。
聞きにくい事の場合もあるから。
「皆亡くなっているわよ」
アウトでした。スミマセンでした。
「あ、えと、ゴメンなさい……」
「気にしなくていいのよ。もう200年くらい前の話だもの」
え、200年? なっが! 凄い昔だ! お爺ちゃんが私を赤ちゃんみたいな扱いしてたし、父さんも50年くらい前に街を壊してたから竜は長命だとは思ってたけど、実際に聞くと違うね。
「ねぇ母さん。竜族の寿命って何年くらいなの?」
「そうねぇ……成竜なら1000年から2000年くらいかしらね。真竜になると、その倍くらい?」
「すっごい長生きなんだね……」
「ええ……。だから、いつか私達がシーちゃんを見送る事になるのね……」
母さんが寂しそうな声を出す。
そんな言い方されると私まで悲しくなっちゃうよ。
「大丈夫だよ母さん。私、頑張って長生きするから」
人間が健康に気を使っても、せいぜい数年くらいしか変わらないとは思うけどね。
私には、それくらいの事しか言えないから。
寂しそうに見えた母さんの背中を、私は優しく撫でる事しかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます