第27話 スキル検証
私は今、街の外に来ています。
今日は人目のない所で、スキルの検証をしようと思ってます。
え、昨夜ですか? 昨夜はエレナさんとパジャマパーティーしてたらファーリア様が乱入して来ましたとも。
ファーリア様がなかなか寝かせてくれなかったので、若干の寝不足ですよ。
朝も私とエレナさんを引き留めて、お茶に誘ってきましたし、ちょっと? 疲れましたね……。
そのあとはエレナさんの家に寄ってから、冒険者ギルドまで一緒に行きました。
エレナさんを連れてきた事をアゼリアさんに感謝されたけど、私としては恩返しのつもりなので大した事をやったつもりはありません。
と、報告はここまで! とにかく私は街の外までやってきたよっ
まずはスキルの確認。
名前:シラハ
領域:〈ソードドラゴン+パラライズサーペント〉
〈フォレストドッグ+フォレストホーク〉
サハギン フォレストマンティス
レッドプラント(0)
スキル:【体力自動回復(中)】【牙撃】【爪撃】
【竜気】【竜鱗(剣)】【竜咆哮】
【麻痺付与】【毒食】【解毒液】
【熱源感知】【獣の嗅覚】【夜目】
【潜水】【鎌切】【吸血】
今日は以前に魔石の進化だかで増えた【竜鱗(剣)】【竜咆哮】と、手に入れてから試せないでいた【吸血】を検証しようと思う。
とにかく人目につくのは不味いので、私は森の中へと入っていく。
今の私はEランクなので問題なく森に入れる。
ちゃんと【熱源感知】【獣の嗅覚】で周囲の警戒は忘れない。
私は森に入って少し歩いたくらいの場所で立ち止まる。
そして背負い袋の中を見て替えの衣服を確認する。
これで【竜鱗(剣)】を使って服が爆散しても問題ないね。
ローブは脱いで背負い袋と一緒にまとめて置く。
私の使うスキルは人間用ではなく、魔物が使う前提のスキルだとは思うけど、【牙撃】【爪撃】のようにまともな牙も切り裂ける爪もない私が問題なく扱えているのだから、扱い次第では【竜鱗(剣)】だって服を破かずに使えると思っている。願望だけどね。
以前に使った時は、ただスキルを使用しただけだった。
なら、きちんと使う部位を指定したりすれば、服の上に【竜鱗(剣)】を出現させる事もできるのでは? と考えた訳です。はい。
とりあえず失敗したら手甲と脛当てが壊れるので、今日は着けていない。
ローブを着ていたから装備も見えなくて、門で注意される事もなかったよ。
では、早速。
試しに右腕に服が破けないよう服の上に鱗が生えるイメージをする。
「【竜鱗(剣)】」
私がスキルを使うと右腕に力が流れていく。そして剣先のような鋭利な鱗が服の上に現れた。
「おお……一発で成功したよ!」
私は思わず歓喜の声を上げてしまう。ちょっと恥ずかしい。
「でも、この鱗……剣のような刃物みたいな竜鱗なのってソードドラゴンって名前だからなのかな………」
そんな物騒なドラゴンがいたとしたら怖すぎる。一応そちらの情報も探しておこう。
その後、他の箇所にも使えるか試してみたところ、問題なく使えそうだった。
ローブを着込んでいれば、その下に【竜鱗(剣)】を生やして防具の代わりとして使えるかもしれない。
そんな検証をしていると、【獣の嗅覚】が魔物の匂いを嗅ぎ分ける。
「この獣臭さはフォレストドッグかな」
私が呟くと茂みをガサガサと掻き分けながら、音が近づいてくる。
そして茂みから影が飛び出す。フォレストドッグだ。
私はフォレストドッグの飛びかかりを避けながら【竜気】を使って殴りつける。
「キャイン!」
フォレストドッグが吹き飛び木へとぶつかる。
私は木にぶつかり、よろけているフォレストドッグに触れると【麻痺付与】を使用する。
ビクンと痙攣して動けなくなったフォレストドッグに、そのまま【吸血】を使ってみる。しかし、何も起こらない。
「うーん。やっぱりこのままじゃ駄目かぁ……。たしかスキルの説明は、っと」
【吸血】血が流れている箇所から血を吸う。
【吸血】の説明では、血が流れている箇所となっている。
なら裂傷をつけるしかないのかな。
私は短剣を抜いてフォレストドッグの毛皮を裂くと、そこから血が流れ出す。
その傷に私は触れながら【吸血】を使うと、先程とは違い何かが流れ込んでくる感覚があったが、それが血液だとすぐに理解した。
一体、どうやって流れ込んでいるんだろうね。
血が流れ込んでくるほど、フォレストドッグは弱々しく唸り、そして動かなくなった。
「私、凄く酷い事をしてるよね……」
自分がやっている事に嫌悪感を覚えたが今更だ。
生きていく為にも、身を守る為に自分のスキル力を把握しておく必要がある。
私はフォレストドッグを一撫でした後に、討伐証明部位と魔石を回収して、血の臭いのする場所から移動した。
血の匂いが届かない場所まで移動した私は、次のスキル検証を行う事にする。
【竜咆哮】咆哮する。
これは大きい声を出すだけなのか、竜とついているくらいなのだから威嚇でもできるのかが分からなかった。
「よし。周囲に人影なし! やってみますかっ【竜咆哮】」
スキルを使うと、いつもは体を駆け巡る力が私から抜けて、前方へと集まっていく。
そして集束した力が弾けた。
「え――」
声が出なかった。
出ていたのかもしれないけど、私の声はかき消えていた。
弾けた力は爆音と共に前方にあった木々を薙ぎ倒した。
木は根本から倒れ、あるいは半ばで折れている。
力、【竜咆哮】が突き抜けたと思われる中心部分は、地面を抉り何も残ってはいなかった。
全てを破壊するかのような一撃だった。
「いやいやいや、さすがにおかしいでしょ! 咆哮ってこんな物騒なものじゃないでしょ! それとも竜の世界ではこれが標準装備なの?!」
私は驚愕しながらも、慌てて荷物を纏めて移動する。
こんな現場を見られたらヤバいです。
とにかく、ここから離れてから森を出よう。そうしよう。
私は、ある程度移動してから森を出た。
【竜咆哮】は封印だね。あんなのホイホイ撃ってたら化け物だよ。
とりあえずはスキルの検証が出来たので、良しにしておいてあげるよっ!
私が冒険者ギルドに戻ってくると、ギルド内は騒然としていた。
ギルド職員が冒険者と何か話しながら、紙に書き込んでいる様子が見られた。
レギオラさんも冒険者と話をしている。
私がどうしたのか、と周囲の様子を伺っているとレギオラさんが私に気が付いて近寄ってくる。
「どうかしたんですか? なんか騒がしいですけど」
「おう、嬢ちゃん無事だったか。街の外に行ったと聞いていたから心配したぞ」
「この通り無事ですけど、別に私を心配して慌ただしくしてるわけじゃないですよね?」
「まあな」
それなら、そもそも私が街の外に出るのを許可しないはずだ。単純に考えれば冒険者を動員しなければいけない問題が出たんだろう。
「街の北側の草原や森に行っていた冒険者達からの報告でな、何処からか轟音が響き渡ったそうだ。それで皆すぐに戻って来て、その報告が殺到しているって訳だ」
「へー、それは大変ですね。たしかに私も森の中にいた時に大きい音を聞きましたね」
ヤバいです。
それ私のスキルです。皆さんごめんなさい。
まさかアレが、こんな騒ぎになるなんて……。あわわ……
「それなのに今まで森にいたのか? 異変を感じたらすぐに帰還しろよ」
「気を付けます」
いろんな意味で気を付けます……。だから許してください
「これから、どうするんですか?」
「報告を纏め終わったらDランク以上の冒険者を集めて、調査を行うつもりだ。嬢ちゃんも参加したいのか?」
「いいえ、まったく」
ちょっと罪悪感あるけれど、関わりたくないです。
どこでボロを出すかわかったもんじゃない。
「そうかい。まぁ、当分は街の北側には通行規制がかかると思うから、そのつもりでな。……ハァ、今日は徹夜かなぁ」
ホントすみません。悪気はなかったんです。
心の中でレギオラさんやギルド職員に謝りながら、ギルド内に併設された食事処に移動する。
「オヤジさん、サンドイッチください。あ、卵サンドで」
「あいよ」
もっきゅもっきゅ。慌ただしい皆さんを眺めながらのお食事です。
オヤジさんの卵サンドは美味しいです。
「あ、オヤジさん」
「あんだい?」
オヤジさんはちょっと、ぶっきらぼうだけど良い人だよ。
そんなオヤジさんの前に、お金の入った袋を差し出す。
それを見てオヤジさんが眉をひそめる。
「さっき、レギオラさんが冒険者を連れて調査に出る、みたいな事を言ってたので、調査を終えた冒険者や職員の方に食事を用意してあげて欲しいんです」
「そういう事かい。でも嬢ちゃんが払う必要ないだろ。報酬だって出るだろうに」
いや、まあ、その通りなんだけどね。
この騒ぎは完全に私が原因だから、労うくらいはさせて欲しい。
口には出せないけど……
「これからだと帰ってくるのは夜中になるでしょうし、遅くまでご苦労様です。みたいな?」
オヤジさんはしばらくお金の入った袋を睨んでいたが、溜息を吐くと頷いてくれた。
「分かった。キチンと計算して余ったら嬢ちゃんに返す。足らなかったらレギオラに払わせる」
「ありがとうございます」
オヤジさんに頭を下げる。
そしてレギオラさんごめんなさい。
今度からは優しくしてあげよう。
卵サンドを平らげた私は、未だに騒がしいギルドを後にした。
逃げるんじゃないよ! 戦略的撤退ってやつだよ!
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