第22話 「咲夜胡・続」
二人の少女には語られなかった続きが…。
神からの贈り物、人の未来が見える力を持った少女、
透き通った肌、長く美しい黒髪。彼女を神の使いと崇め、”神の子”として神がこの世に遣わせた存在であると、村人たちが守りし存在。
でも…、一人の青年との出会いが、
しかし、神からの贈り物を持つ
家のためにと、もう一人の
でも、今はその決意も揺らいでいる。
不思議なことに、真悟といるときは、もう一人の
「真悟様、お願いがございます。」
縁側に座り、真悟が仕事をする姿を見つめながら、
二人はただ、同じ時間を同じ空間ですごせるだけで幸せだった。なので
「
ゆっくりと
「はしたない。とお思いだと思います。でも、お願いです。」
今にも消えてしまいそうな
神の子として生きてきた
「お願いです。」
決して望んでは行けないこと。
でも‥。
二人を止められるものは何もなかった。神ですら。
庭の桜と、動物たちだけが知っている秘密。
このまま、二人どこかに消えてしまえたらどんなに幸せだろうか。
初めての痛みも、真悟の暖かさで
別れの時が二人に、永遠に来ないように祈りながら‥。
しかし、時は残酷に過ぎて行く。
もうじき、会ったこともない男の妻となる。
男の噂は村中に届き、嫌でも
「
「見た目じゃねーべ、男は。」
「いや~、見た目もあれだけども~、どうしようもなく女ぐせの悪ぅ~い男らしいぞ。先妻さんが何人もおるらしくての~。飽きるとす~ぐ離縁するんだと。」
「おいくつくらいなかたなん?」
「いや~聞いたとこによると、
「本なら跡継ぎはどうするんや。」
「知らんて。でも~おんな好きの方ならな~」
噂は尾ひれがついて、飛び交う。
結納の日が近づくにつれ、
そんな
婿として桜小路家にやって来た
そのうえ嫉妬深く、
そして‥
最悪な事態が起きる。
だがこの事態は
怒り狂った
居間に飾っておいた日本刀を抜き取り、暴れだしたのだ。
「
それは地を這うような轟音のように屋敷に響き渡った。
「
家の者が慌てて、
「お前か~?」
「な、何の‥。」
その言葉を聞くや否や、
「ご、ごんじ‥」
シューシューと激しく血が飛び散る。一瞬にして
ごぼごぼ。目の前に倒れた男の方から変なおとが聞こえる。何かを訴えかけているかのようだ。
「
何事かと駆けつけた者を、男女問わず斬り倒していく。その度に
辺りは血の匂いで充満している。
「
切れ味の悪くなった刀を右手に持ち、左手に切り落とした使用人の首をつかみ、
「
ぽたぽたと、血が滴る。
「ゆるせぇん! 俺様をこけにしやがって~!
「ぐぉぉぉ~~っ」
この世のもと思えない地響きが山の方から村へ響き渡った。
夜が来る。
村人たちは恐怖の中、松明と武器を持ち
夜明け近く、村人の恐怖も疲労も最高点まで到達した頃、桜小路家の母屋‥、
「な、なんだ?」
「火事?」
「桜小路家の方角じゃねーべか?」
村人たちは騒然としている。誰かが叫んだ!
「あいつ、戻ってきたんじゃないかー?」
「おかんが、村にいるでーーー。戻らんと!」
村についた時、時すでに遅く桜小路家の母屋は、火に包まれ、手の施しようがなかった。
「中に、息子がおるかもしれん。助けてくれっーー」
皆、なにもできず呆然と見守るしかなかった。地面にへたりこむ者、泣き叫ぶ者、慰め会い抱き抱える者、様々に‥。
ザクッ、ザクッ
桜小路家の火の海から何かがこちらに向かって来る。
ザクッ、ザクッ。
刀を杖代わりにし、火を浴びて顔の肉、肩の肉が溶け落ちた男が‥。
服は焦げ落ち、煤だらけの身体。
肉の焦げた異様な匂いと血の匂いをまといながら、死の縁から這い出たような出で立ちで、燃え盛る桜小路の家から出てきたのだ。
恐怖のあまり誰一人動くことができない。
「ぐぉぉぉ。」
鬼だ。誰もがそう思った。
勇敢な村人が、斧を振り上げたその瞬間奇跡が起きた。
火の中から、女性が現れた。不思議なことに無傷で。彼女の回りは光に包まれ、火が弾き返されているように見えた。
「さ、
その声に反応したように、化け物と化した
ギシギシギシギシ。相当な痛みを伴っているはずだ。
「これ以上、誰も傷つけることは許しません。」
「駄目だ!
真悟の声が聞こえた気がした。真悟の顔を見たい。無事をこの手で祝いたい。でも、鬼と化した
- 生きていてくれた。ありがとう。本当に‥ありがとう。
真悟への感謝の言葉を胸に、
と、同時に鈍いおとが聞こえた。
誰もが息を飲んだ。
「ぐぉぉぉーーーーーーー」
二人は炎に包まれた。火はますます大きくなり、やがて大きな火だるまになる。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーー」
※ ※ ※
全てが終わった。
焼け焦げた屋敷から、8体の遺体が見つかった。身元はわからない。当時桜小路家にいた使用人だろう。
不思議なことに、
後日
『この後、この村に大きな災いが起こり、多くの人が酷い死を向かえます。
これは全て私が招いたこと。あの人を鬼に変えるのは私。
ごめんなさい。
とめさん、良吉さん、雅夜おば様、そして真悟様。この子をよろしくお願いいたします。
とめさん、今年の冬は身体に気をつけて。』
※ ※ ※
そして
そして‥、いつしかこの村は"
時が経ち‥ここにまた、神と鬼に愛された人物が誕生する。
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