第11話 「歪み」
月がとても綺麗な夜だった。
大きなまんまるなお月様。二人の少女も夜空を見上げている。
「あーちゃん、お月様キレイだねー。」
「ねー綺麗だよねー。知ってる〜? お月様にはねー、うさぎさんが住んでるんだよ。」
「あーちゃん、それはウソだよ。」
えー。そうなの〜? と 二人の少女は少し興奮気味で楽しそうだ。
「さぁ、二人ともそろそろ寝ないと、明日にさわりますよ。」二人の母、
「あ、お母様!」
二人は布団の波をかき分け、窓際から慌てて自分の布団の中に滑り込んだ。
「そろそろ寝てくださいね。明日はおお婆さまの紅夜様に会える日ですよ。」
優しい、穏やかな声。
「ねぇ、お母様。|紅夜≪べによ≫様はまたお話いっぱい聞かせてくださるかしら?」
首をかしげながら、あーちゃんと呼ばれた少女が問いかける。
さらさらした髪が
「そうね。|紅夜≪べによ≫様、きっと話してくれるわ。二人が良い子でいてくれるならね。」
「ねぇ、お母様?」
「なぁに?あっちゃん」
「私たちの弟にはいつ会えるの?」
「‥」
「どうして? 弟がいれば良いなって思ってるの?」
そう、
|紅夜≪べによ≫に、相談しようと思っていた矢先だったのだ。
「ううん、私たちの弟、まーくんがね、早く一緒に遊びたいって言ってるの。」
「あーちゃんすごーい。私にはわからないよー。本当なの?お母様?」
キラキラした目が
何て答えていいか戸惑っていると、入り口の方からねちっこい声が聞こえた。
「
ゾクッとするような、肌にまとわりつくねちっこい声。
二人の少女は
大丈夫よ、
「はい。お兄様。今行きますから先にお部屋に向かっていてください。」
お兄様と呼ばれた人物は、スッと明かりの奥に消えていった。
この人物について少し話しておこう。
背は高く痩せている。特に仕事をしているわけでもなく、何をしているか家族にもわからないことが多いい。あまり人とも関わることもなく、彼女がいたという話しも聞いたことがない。
そんな純一郎が、唯一関心を示すのが
子どものころは、頼りになる兄がいて
「さ、また明日お話しましょう。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい」
幸せな時は長くは続かない。
歪んだ一粒の感情が大きな波紋を生み、誰も止められない道に進む。
-おやすみなさい。
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