第8話 「予言」
「光と闇が交わる時、光は闇に飲み込まれる…。」
二人の少女は、白髪の老婆の側に大人しく座って、老婆の皺々の手を珍しいものを見るかのように見つめていた。
いつもの曽祖母とは違い、何か重々しい空気をまとっている。
「
「具合でも悪いの?」
沈黙が続く
皺くちゃの顔からは、表情が読み取れない。急に二人の少女は不安を覚えた。大人たちを呼んで来るべきか…。
「お…鬼が来る。」
皺々の、骨と皮しかないような
少女たちは、ただ、この状態を見守ることしか出来ずにいた。
あまりにも力強く自分の腕を握りしめたことで、爪が皮膚に食い込み、血が滲み出ていたのだ。
「あーちゃん、お母様を呼んできて。」我にかえり、一人の少女が叫んだ。
「
腕を離そうとするが、子どもの力ではどうにもならないほど強い。血が白い着物に赤い印をつけ、滲み出していた。
あーちゃん。と呼ばれた少女は、呆然と曽祖母の成り行きを見つめている。
「あーちゃん。」
少女は叫んだ。
曽祖母の体が揺れ始めた。ぶつぶつと何か言っている。
大好きな曽祖母なのに、ここにいるのは全くの別人に思えた。
血の臭いが濃くなる。
「鬼が来る。皆殺される…。」
「逃げなさい…。あ、あぁ…。鬼が、鬼が…。」
もう、止められない。と思ったその瞬間。
異変に気づいた大人たちが部屋に入ってきた。
二人の少女は、部屋の外へ連れて行かれ、大人たちは、バタバタと部屋を出たり入ったりしている。
子どもながらに、何かが起きたことを悟った。
二人の少女は
泣いて、泣いて、疲れてそのまま眠りにつくまで泣いた。
それからしばらくして、
葬儀は村をあげて盛大に行われた。広い屋敷の中を大人たちが準備に追われている。
曽祖母、
「これで
「次のお使い人は、孫の|柚莉愛≪ゆりあ≫様かね〜。」
「だな〜。娘の|小夜≪さよ≫さんは、鬼に愛されとるから、お使い人にはなれんでしょう。」
「しっ。声がデカイ。|小夜≪さよ≫さんに聞かれたら、大変なことになるで。」
大人たちが話しているのが聞こえる。お酒の力で声が大きくなっているようだ。
「ねぇ、お使い人って何?」
二人の少女は、そばにいる父親に聞いてみた。子どもは知らなくていい。もう少し大人になったら、イヤでもわかるさ。手に持ったビールをぐいっと飲み干し、父はそう応えた。少し寂しそうに…。
− 鬼が…来る。皆を殺しに…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます