第13話

『そうやね。ゼミの人って何人ぐらいいるん?』

不安な気持ちの表れか、探るようなことを聞いてしまった。

そう気づいてもそのメッセージを取り消そうという気も起きなかった。

『うーんと…先輩たちも入れたら10人くらいかな。』

相変わらずいつもより遅めなメッセージの返信に、それでも今日は終わりにしようとは言えない。

『そうなんや。男の人もおるん?』

不安な気持ちと羨む気持ちとが探るようなメッセージを送らせてしまう。

メッセージの返信が来ないまま、年が明けてしまった。

テレビ番組の賑やかな音声。

家族と「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」とお互いに言い合い新年を迎える。

おめでたい空気とは裏腹に詩帆はモヤモヤを募らせていた。

『あけましておめでとう。雫ちゃん、今年もよろしくね。』

年が先に明けてしまい、追撃のメッセージを送ることになってしまった。

そのことにもモヤモヤを募らせる。

しかし、そこに雫から電話が掛かってきた。

『もしもし?』

『もしもし。』

『あけましておめでとう!詩帆ちゃん今年もよろしくね。今年一番最初に詩帆ちゃんに言えて嬉しいわ!』

〈今年一番最初に〉その事が嬉しかった。

今目の前に一緒にいるゼミの人達よりも先に詩帆に新年の挨拶をしてくれたのだ。

モヤモヤしていた気持ちが急に晴れていくようだった。

『うん、あけましておめでとう!一番最初に言ってくれて嬉しい!今年もよろしくね、雫ちゃん。』

『ねえ、詩帆ちゃん。』

ガヤガヤと賑やかな喧騒の中、雫は愛おしそうに詩帆の名を呼んだ。

『なあに?』

『ヤキモチ妬いてくれたん?』

詩帆はその言葉に驚いた。ヤキモチのつもりはなかったが、羨ましく思いモヤモヤしていたことは事実だ。

『ヤキモチなんかやないけど…』

もごもごと口ごもる。

羨ましかったなんて、言えない。

『詩帆ちゃん、大好きやよ。』

雫はどこか嬉しそうに話し続ける。

『確かにゼミのみんなと初詣来たし、男の子も女の子もおるけど、うちにとっては詩帆ちゃんが一番やから。羨ましがる必要なんてないよ。』

嬉しそうに、愛おしそうにそう告げた。

雫は詩帆がヤキモチ妬いてくれたことが嬉しかった。

それはそれだけ詩帆が好きでいてくれている証だと思ったからだ。

ただ、ヤキモチが嬉しいなんて言われても詩帆は嫌だろうからと口に出しては言わなかった。

『うん…私も雫ちゃんが好き…。』

詩帆は恥ずかしそうに言った。

雫の言ってくれたことが嬉しかった。

その嬉しかった気持ちでさっきまでのモヤモヤした気持ちが一気に吹き飛んだ。

「雫ー?」

電話口で話していると、ゼミの仲間に雫は呼ばれた。

『あ、もう行かないと…ごめんね。』

『ううん、大丈夫。ありがとう。またね。』

『うん、またね。』

雫は名残惜しそうにそう言うと電話を切った。

詩帆はモヤモヤしていたのが嘘のように晴れやかな気分でその後の時間を過ごした。

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