第11話

駅前のフラワーガーデンに着くと、さすがのクリスマスイブ。カップルだらけだった。

キラキラと輝くイルミネーションと花をカップルがそれぞれ見て回っている。

「わぁ、綺麗やねぇ。」

「ほんと、綺麗。」

言葉少なにイルミネーションの間を一緒に歩く。

イルミネーションに見とれる詩帆の一方で、雫は一人ソワソワしていた。

手を繋ぐなら今!今だ!

そう思いつつも勇気が出ずにただ隣を歩くだけしか出来ない。

フラワーガーデンには大きなツリーもあり、二人はその目の前まで来た。

「おっきいね〜!きれ〜い!」

詩帆が感嘆の声を上げる。

今だ!

雫は勇気を振り絞り、詩帆の手を握った。

その瞬間、詩帆はドキリとして雫の顔が見れなくなった。

無言のまま、ゆっくりと手を絡める。

「…はぐれたら、あかんから。」

我ながらなんて言い訳だと思いながら雫はそれだけを言った。

「…うん。」

詩帆はただ返事だけをした。

その後もイルミネーションを見て回ったが二人の意識は手を繋いでいることばかりでいっぱいになり、イルミネーションどころではなかった。

イルミネーションをぼんやりと見ながら、ただドキドキとしていた。

「…雫ちゃん。」

先に沈黙を破ったのは詩帆だった。

「楽しいね。」

雫ににこりと微笑みかける。

「うん、楽しいね。」

雫も微笑み返して言った。

イルミネーションの輝きも二人の間には割って入れない程お互いに見つめあった。

その瞬間だけ時が止まったようなそんな錯覚に陥る。

二人だけの世界でただ心臓の高鳴りだけが時を刻んでいた。

気づけば時間は22時を回っていた。

フラワーガーデンにある時計がふと視界に入った雫は、そろそろ帰らなければならないことに寂しさを覚えた。

その様子に詩帆も気づき、チラリと時計を見る。

「もう帰らないかん時間やね…」

詩帆がポツリとつぶやく。

そろそろ帰らないと家族が心配してしまう。

「帰りたくないね…」

雫は寂しそうに呟いた。

楽しい時間はあっという間だ。

次こうして二人で遊べるのはいつだろうと考える。

数ヶ月先かもしれない。

そう思うと、雫はいたたまれない気持ちになった。

「大丈夫やよ。明日もお見送り行けるから会えるよ。」

詩帆は寂しそうにする雫を励ますようにそう言った。

「うん…そうやね…。」

なおも寂しそうな雫の様子を見て、詩帆は繋いだ手をそのままぎゅーっと握った。

「またデートしよ!」

励まし続ける詩帆に、雫はこのままではいけないと思った。

「うん…。詩帆ちゃん、ぎゅーってしていい?」

「え!?う、うん…。」

予想外の発言に詩帆は恥ずかしくなりながら答えた。

周りにはまだ人がたくさんいる。

みんなそれぞれに夢中で詩帆たちなど眼中に無いとしても、詩帆は恥ずかしくなってしまった。

詩帆のそんな様子も愛おしく思いながら、雫は詩帆をぎゅーっと抱きしめた。

詩帆は恥ずかしさで永遠のように長く感じながら、雫はめいっぱいの気持ちを込めて抱きしめた時間が一瞬のように感じながら抱きしめあった。

そして、名残惜しくも離れる。

「帰ろっか。」

雫は満足気に微笑んで言った。

「うん…。」

二人は再び手を繋いで、帰路に着いた。

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