第6話

その夜も、雫と詩帆はメッセージのやり取りをしていた。

『そうなんや~!』

『うん!すっごく雰囲気のいいカフェやってね、いつか詩帆ちゃんが東京に来たら一緒に行きたいなぁ。』

『私も行ってみたいなぁ。東京行ったら連れてってな!』

『もちろん!楽しみやなぁ。』

『また東京に行く楽しみが増えたなぁ!バイト頑張ろ!』

『うちも頑張る!一緒に頑張ろな!』

『うん!雫ちゃんも頑張ってると思うと私も頑張れるわ!』

いつもと変わらない会話。

それが心地いいと詩帆は感じていた。

しかし、雫からの返事に少し間が空いた。

言い淀むような間だ。

何かを言おうか迷っているのだろうか?と詩帆は追撃のメッセージを送る。

『なんか…悩んでる?どうしたん?』

そのメッセージに雫の心があたたかくなった。

そして、詩帆のこういう人の些細な変化に気づくところが改めて好きだと思った。

『詩帆ちゃんのそういうところ、大好きやよ。』

その気持ちをそのままメッセージで送る。

そのメッセージを見て、詩帆は心配していた気持ちが吹き飛ばされてドキドキしていた。

ドキドキしている間に追加のメッセージが送られてくる。

『こないだな、友だちが彼氏の自慢話しててな、それ聞きながらうちも詩帆ちゃんのこと話したくなったんよ。』

『話したん?』

詩帆は、雫が信頼出来ると思うのであれば話していても構わないと思った。それだけ信頼出来るというのは、それはそれで妬けるのだが。

『ううん、話さんかった。詩帆ちゃんのこと話して、なんで女の子なん?とか変だとか悪い風に言われたくなかったんよ。』

詩帆はヤキモチを妬かなくて済んだとこっそりと胸を撫で下ろしてメッセージの返信をした。

『私も実はね、友だちと好きな人おらんの?って最近聞かれて、迷ったけど雫ちゃんのこと言わんかった。私もね、雫ちゃんのこと悪く言われたらって思ったら怖くて言えんかったんよ。』

『そうやんね。詩帆ちゃんのこと大好きで大切やからこそ、反対されるの嫌やし言われへんよね。詩帆ちゃんは…付き合ってること人に話せへんのはやっぱり嫌?』

雫の不安そうな顔が目に浮かぶようだった。その不安を払拭したくて詩帆は大急ぎでメッセージの返信をした。

『雫ちゃんのこと自慢したいなとは思うけど、それを話せへんからって雫ちゃんのこと嫌になったりせえへんよ。私も、雫ちゃんを自慢できることより、雫ちゃんを悪く言われる方が嫌や。』

『話したら反対されるかもしれへんし、それが嫌やなと思ったら隠さないかんけど、そんなん嫌やってならん?』

いつになく雫が弱気だった。

雫にとっては誰に何を言われるよりも、詩帆が傷つくことと詩帆が離れていくことが嫌だった。

詩帆は雫の不安を早く払拭したくて急いでメッセージを返す。

『ならんよ!人になんか言われるかもしれんくても、雫ちゃんと一緒にいたい!雫ちゃんが大好きやから!』

その言葉に雫は救われた。

『ありがとう。私も詩帆ちゃんのことが大好きやよ。』

そのメッセージを見て、雫の不安を払拭できたのだと詩帆は安心した。

二人は気持ちを確かめ合い、お互いの思いの強さをより確かに認識した。

これだけ好きあっている二人ならこれからもきっと大丈夫だと、そうお互いに思っていた。

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