第8話

ついにクリスマスイブ当日。

詩帆は雫を空港まで迎えに行った。

「雫ちゃん!」

到着口で待っていた詩帆は、出てくる雫を見つけて声を掛けた。

呼び掛けられた雫は声の方へ振り向き、パッと表情が明るくなる。

「詩帆ちゃん!」

二人はお互いに駆け寄ると、嬉しそうに見つめあった。

「会いたかったぁ。」

「うちも、会いたかった。今日のことすごい楽しみにしてたんよ。」

「嬉しい。私も楽しみにしてたんよ。まずはどうする?お昼ご飯食べる?」

「そうやね。家に荷物置いてからランチ食べに行こ!」

二人は空港を後にして雫の実家へと向かった。

車を運転する詩帆の横顔を見ながら、雫は嬉しそうに笑った。

「ふふっ」

「どうしたん?」

「いやぁ、なんかこれだけでもデートみたいやなって思って…詩帆ちゃんが運転する車の助手席に乗れるやなんて、嬉しいなぁ。」

そう雫に言われると、詩帆は改めて隣りに雫がいることを意識した。

「なんか、そう言われるとドキドキしてしまうね。助手席に雫ちゃんがいるなんて不思議な感じやわ。」

二人は一緒にいれるこの時間を噛み締めていた。

雫の家に荷物を置くと、ショッピングモールへと向かった。

「地元にこんなおっきいショッピングモールできたなんて、未だに信じられへんわ。」

「雫ちゃんが東京行った後にできたもんなぁ。でも東京やと珍しくもないやろ?」

「そりゃあ、東京にはいっぱいショッピングモールとかあるけど…この田舎におっきいショッピングモールできたってことが驚きなんやもん!」

「確かに、ここにショッピングモールできるってなった時は大ニュースやったなぁ。今となっては遊ぶ言うたらみんなここしか来うへんけど。」

詩帆は笑って言った。

「ところでランチ何食べたい?ガッツリ?それともさっぱり?」

「うーん…夜はディナーで結構ガッツリいきそうやし、昼はさっぱりかなぁ。」

「それやったらパスタはどう?美味しいパスタ専門店があるんよ。」

何度もショッピングモールに来たことがある詩帆が雫を先導する。

「パスタいいね!行こう。」

二人で連れ立ってパスタ専門店へと向かった。

パスタ専門店に着くと、愛想のいい店員が声を掛けてくれた。

「いらっしゃいませ。2名様ですか?」

「はい。」

詩帆が慣れた様子で返事をする。

「こちらのお席へどうぞ。」

案内されて席に着くと、店員が引き続き説明をしてくれる。

「こちらのメニューとランチセットもございます。ご注文がお決まりになりましたら、こちらのベルでお呼びください。」

店員はぺこりとお辞儀をすると、厨房がある方へと去っていった。

「何にしよっか?」

そう言いながら詩帆はメニューを雫の方へと向けた。

「何か詩帆ちゃんがおすすめのメニューある?」

「どれも美味しいけどなぁ。雫ちゃんはどういうパスタが好きなん?」

「クリームソースも好きやし、トマトソースも好きやなぁ。ジェノベーゼもたまに食べたくなっちゃう!迷うなぁ。」

二人で笑い合い、結局メニューを一通り見てみることにした。

「あ、これ美味しそう。うちこれにしようかな。」

「私はこれにしようかな。決まり?」

「うん、決まり。」

「ランチセットにする?そしたらサラダとドリンクにデザートもついてくるよ。」

「せやったら、そうしようかな。」

そうしてベルを鳴らし、それぞれメニューを注文した。

注文したものが届くのを待つ間も、食事を食べている間も、不思議と会話は途切れなかった。

毎日メッセージのやり取りをしているのに、それでも話し足りなかったと思うくらい二人はたくさん話した。

「はぁ~、おなかいっぱい。そろそろ出る?」

「うん、出よっか。」

ひとしきり話し終え、二人はパスタ専門店を後にした。

それから二人はショッピングモール内の色んなお店に入って回った。

詩帆は何度も来たことがあるはずなのに、雫と回るとなんだか新鮮な感じだなと感じていた。

雫はまだ数度しか来たことがないショッピングモールにテンションが上がっていた。

「あ!これ詩帆ちゃんに似合いそう!」

「え、どれどれ?」

お互いに似合いそうな服を探して買ったり、雑貨屋さんで見たことがない変な置物を見たり、二人はショッピングを楽しんだ。

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